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特集記事|とどまらない総合診療 vol.3

地域医療から病院経営まで、自由度の高いプログラムと選べるキャリアパス。指導医が語る「HMW総診のここがすごい」後編

とどまらない総合診療2025.06.11

平成医療福祉グループ(以下、HMW)は、2026年4月から総合診療専門研修プログラム「HMW総診」の1期生を迎える準備を進めています(※)。今回は、HMW総診の中核を担う指導医に座談会形式でインタビュー。他にはないHMW総診のプログラム内容とその強み、連携医療機関の紹介、キャリアのつくり方などを伺いました。


※ 同グループの堺平成病院(大阪府堺市)、世田谷記念病院(東京都世田谷区)、多摩川病院(東京都調布市)にて研修受け入れを実施 


後編では、連携医療機関と具体的なプログラム内容の紹介、研修後に用意されている幅広いキャリアパスについても具体的にお話いただいています。指導医がHMWを選んだ理由や総合診療という領域に対する期待について語った前編と合わせてお読みください。

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<プロフィール>
佐方信夫(さかた・のぶお)
総合内科専門医、プライマリ・ケア認定医・指導医。2004年、神戸大学医学部卒業。手稲渓仁会病を経て、2006年に厚生労働省入省。医系技官として診療報酬改定などに携わる。2010年から四年間、松波総合病院 総合内科に勤務したのち、ハーバード公衆衛生大学院への留学、医療経済研究機構で研究に従事しつつ、2019年から平成医療福祉グループの経営企画医師として、世田谷記念病院の在宅医療部部長に就任。筑波大学の客員准教授を兼任する。

安田 考志(やすだ・たかし)
透析内科、腎臓内科、足病診療科、総合診療科専門医。2000年、高知大学医学部医学科卒業。2003年松下記念病院腎不全科に勤務したのち、京都府立医科大学大学院泌尿器外科学専攻修了。2017年松下記念病院腎不全科部長、2018年同病院足病診療科部長を兼任。2022年神戸百年記念病院救急総合診療科部長。松下記念病院、神戸百年記念病院にて、総合診療専門研修プログラムの立ち上げに携わる。2025年1月、経営企画医師として平成医療福祉グループに入職。堺平成病院副院長に就任。

八戸 敏史(やえ・としふみ)
呼吸器科指導医、内科指導医、病院総合診療認定医。2002年、横浜市立大学医学部卒業。東京医療センターにて初期研修後、東京病院にて呼吸器診療に従事。順天堂大学・慶應義塾大学でがんの基礎研究に取り組み、医学博士を取得。ハーバード大学への留学を経て、順天堂大学医学部准教授として診療・教育・研究に携わる。「人を診る医療」の実践を基軸に、全人的な視点での臨床と後進育成に注力。2024年より平成医療福祉グループに経営企画医師として参画し、多摩川病院副院長に就任。順天堂大学非常勤講師。

真の総合診療を学べるプログラム内容

たくさんの総合診療専門研修プログラムがあるなかで、HMW総診を検討している方たちにぜひ知ってほしいプログラム内容について教えてください。

佐方:本当の地域医療を肌で学べることですね。HMWは地域医療を担うグループですから、すでに地域の行政や社会福祉協議会、医師会など、社会資源とのネットワークがあります。地域のネットワークとフラットに連携するには、大学病院や高度な中核病院は圧倒的なので立ち位置が違いすぎます。また、急性期を担う病院は、患者さんの状態が安定すると、我々のような回復期・慢性期病院に転院してもらいます。地域医療はそこでずっと長く続いていくと思うんです。

自宅で生活できるのか、通院はできるのか。訪問医療や介護サービスを検討するかどうか。そこまで考えられるのが真の意味での総合診療です。そういうことを、若いうちに効率よくいろんな経験をして身につけられるのは、HMW総診の非常に良いところだと思います。もうひとつ、最近強く思うのは、総合診療と公衆衛生は学術分野として重なるところが大きいということです。

佐方信夫先生

佐方先生は、公衆衛生修士(Master of Public Health、以下MPH)をとっておられますね。

佐方:総合診療医には、健康増進や予防医療など公衆衛生的なマインドをもつ人が多い。そして、公衆衛生学を実践に活かすには大学病院よりも市中病院、それも地域でいろいろイベントをやるような病院が向いてると思います。公衆衛生学を学び、かつ現場で役立てたいと考えているなら、ぜひHMW総診を選んでいただきたいですね。

安田:地域に目を向けると、健康診断や人間ドックを受けていない人もたくさんいますし、そこには難病や希少疾患も隠れています。また、貧困地域とそうではない地域では疾患の種類や割合も違ったりします。そういうことを知ると、もっと行政と連携しないといけないし、予防医療も考えないといけません。佐方先生が言われるように、公衆衛生学的なことまで含めて、地域に出ていって地域の社会資源を担う人たちと一緒に世の中を変えていくのが総合診療医だろうなと思います。それを提供できる医師を育て、一緒に地域に貢献する。そこにHMW総診の目指す姿があると思います。

八戸:同時に、HMW総診では医療者としての医療技術の土台づくりにも力を入れています。地域には、医療的な処方は1割でよく、「つながり」や「活動」を軸とする、いわゆる社会的処方が9割必要な人もいますが、その逆の人もいますよね。プログラムを通じて、その両方を処方できる能力や機会を提供できるのも、HMW総診の強みのひとつです。高齢者が慣れ親しんだ地域で暮らし続けるのに必要なのは、医療的処方と社会的処方のバランスです。そして社会的処方は、おそらく先進医療よりはお金がかからない。医療費を抑えて健康寿命を伸ばしたいと考えている国も、きっと我々のプログラムに注目すると思いますね。

佐方:僕は、健全な病院経営と医療費を理解しながら、社会的処方につなげられる医師を育てたいです。お金儲けのための病院経営ではなく、「病院の持続可能性を保ちながら、新しいことに取り組めますか」という視点での病院経営です。我々グループの会長や代表は、お金が儲かる、といった話には全然興味を示しません。より良い医療を患者さんに提供するために、健全な方法で収益を高めるというスタンスを貫いてきました。HMWに来てもらえば、「これが病院経営だ」という根本的な姿勢を学んでもらえると思います。

医療費については、患者さんの視点に立ってしっかり学んでほしい。「この治療をすると患者さんはいくら負担するのか」「年金収入はどのくらいあり、うち何%を医療費に当てているのか」「治療は生活の負担にならないか」など。そういうところに目を向けられる医師を、HMW総診で育てたいですね。

技術と経験が身につく研修先の医療機関

HMW総診では、さまざまな連携医療機関での研修もあります。「どこと連携しているのか」は、プログラムの性格を表すメッセージにもなっているのでしょうか。

ローテーションモデル関東(世田谷記念病院・多摩川病院)
ローテーションモデル:関東エリア(世田谷記念病院・多摩川病院)
ローテーションモデル:関西エリア(堺平成病院)
ローテーションモデル:関西エリア(堺平成病院)

安田:そうですね。研修医たちは、まず連携医療機関の名前を見ると思います。関西の医学生・研修医であれば、済生会野江病院や千船病院の名前を知らない人はいません。「ここと組んでいるプログラムなら安心だ」と思うでしょうね。

大阪では、救急科は済生会野江病院、小児科は千船病院が研修先になっています。それぞれどんな病院なのでしょうか。

安田考志先生

安田:済生会野江病院は、400床クラスの病棟があり、災害拠点病院にも指定されていて、救急車を年間6000台くらい受け入れています。救急集中治療科の部長・鈴木聡史先生は、救急専門医であり集中治療、外傷、IVRの専門医であり、総合内科の指導医でもあるというスーパードクターなんです。僕と鈴木先生は、松下記念病院時代から総合診療の救急面での指導医や、JMECC研修などで親交がありました。そういう縁もあり、救急科の研修受け入れをお願いしたら「ぜひぜひ」と快諾していただきました。

小児科については、千船病院にお願いしました。母体となる愛仁会グループは、昔から総合内科で総合診療的な取り組みをしていますし、現在の吉井勝彦院長は、小児科・新生児科の部長先生でもあります。ちなみに、吉井院長と僕は大学の野球部の先輩・後輩(1期生と17期生)で、「安田、飲みに行くぞ!」「はい!」みたいな間柄(笑)。HMW総診の立ち上げと、内科、小児科、ダブルボード研修のことでご相談に伺った際に、HMW総診のコンセプトを理解したうえで、「うちで受け入れるのがベストやろ!」と胸を叩いてくれました。

外来、訪問診療、地域包括ケアを研修する「総合診療専門研修I」の研修先として、大阪・東京ともに聖隷淡路病院とも連携していますね。

安田:聖隷淡路病院は、急性期医療かつ僻地医療をしている地域密着型病院としてよく知られています。病院長の原田(英樹)先生は、総合診療科部長のときからずっと研修医の受け入れをしておられました。原田先生はもともと外科ですので、聖隷淡路病院に行くと外科的手技も一通り覚えて帰ってくるのですごいなと思っていましたので、HMW総診でも連携させていただきました。

東京の連携医療機関にも、錚々たる病院が名前を連ねています。ひとつの研修科目に対して複数の連携医療機関がありますが、希望に合わせて選択可能なのでしょうか?

八戸:その通りです。東京は、東京医療センターと国立成育医療研究センター、東京都立広尾病院で内科、小児科、救急科の研修をします。「総合診療専門研修I」を行う志摩市民病院も、研修医・学生に人気がありますね。東京と近畿を行ったり来たりできるのも魅力かと。

佐方:東京医療センターと国立成育医療研究センターは、いずれも歴史のある国立病院ですね。東京医療センターは国立病院機構の総本山で、高度総合医療施設に位置付けられてもいます。都立広尾病院の救急救命センターも「広尾ER」と呼ばれるほど有名で、三次救急の患者さんを多く受け入れることで知られています。救急病院のなかには、比較的軽い症状の患者さんだけを受け入れるところもありますが、それでは十分な修行になりません。生命に関わるような重症患者さんに向き合う経験をしてほしいですね。

八戸:東京医療センターにも三次救急があります。僕は東京医療センターで研修医をしていたので、転落事故や交通事故に遭った患者さんをたくさん診ました。ハードな救命救急の現場は体力のある若手時代にこそ経験してもらいたいですし、僕自身もその後に活きる経験になったなと思っています。

安田:三次救急レベルのことを知っておかないと、慢性期の患者さんを診られないので絶対に経験しておくべきですね。超急性期から急性期まで知っておくことがとても大切です。

研修後に用意されている挑戦のフィールド

HMW総診のコンセプトは「とどまらない総合診療」。研修プログラムでも、専攻医の希望に合わせてグループ内外のフィールドを経験できることを謳っています。具体的にはどの段階で、どんな内容があり得るのかを伺いたいです。

安田:我々グループの病院で研修する「総合診療専門研修II」になりますね。今、公表しているのはあくまで専門医機構に申請したときの枠組みですので、それ以外の部分はかなり自由度高くカスタマイズしてもらえます。世田谷記念病院、多摩川病院、堺平成病院では、それぞれに所属するレジデントと指導医全員でカンファレンスしたり、そのなかで佐方先生から公衆衛生学に関するレクチャーもあるでしょう。希望すれば、代表・副代表による経営会議にも参加してもらえます。

八戸敏史先生(右)

八戸:たとえば、さらに高齢者医療で認知症ケアに重点を置きたい人は、グループ内の大内病院で精神科医療をがっつりやってもらうこともできますし、がん・非がんの緩和を学びたいのなら、みなみ野病院の緩和ケア病棟で学会指導医のもと研鑽を積むこともできる。地域に出たいのであれば、おうち診療所 神山で地域医療コミュニティ創生の現場を経験したり、多摩川エリアの保健所や社会福祉協議会での研修をしたり。志摩市民病院での研修を長くしたいなら、そうしてもらってもいいわけです。

安田:おそらく、研修期間だけでは足りないという人がいっぱい出てくると思うんですね。そうなったら、4年目、5年目もグループに残ってやってもらっていい。探してもらったらわかりますが、こんなに自由度の高いプログラムはほかにはありませんね。

佐方:我々は、総合診療医になった人にその先のキャリアを提供できる。たとえば、堺平成病院で総合研修専門プログラムを終えた人が、「関東に移って大内病院に行ってみたい」「おうち診療所 神山で2年間やってみたい」など、グループのなかにいろんな選択肢があります。世田谷記念病院のように地域を巻き込む取り組みを進めている病院もあります。総合診療医の可能性をいろんなかたちで試せるんです。

さらに、HMWは昔から厚労省との関わりが多く、元医系技官もたくさんいるので、うちから2年間の人事交流に行く機会なども検討できます。また、公衆衛生大学院への進学支援奨学金も用意しています。HMWというグループに守られながら、教育を受けつつ総合研修医としての幅を広げて、キャリアを積んでもらえます。自分で話しながら確信を深めているのですが、もうHMW総診一択ですよ!(笑)。

八戸:知名度の高い病院でプログラムを終えても、そのまま就職できるとは限りません。基本的に有名病院にも医局との関係性がありますし、生え抜きで就職できるかどうかは運次第です。大学であれば大学医局に入りなさい、ということになります。HMW総診では、グループに残って幅広い分野で活躍していただくことを歓迎しますので、その点も特徴としてぜひ知っていただきたいポイントです。

安田:総合診療医を目指す人は、なんでもやりたい人が多いんです。でも、飛び込む勇気がない人もすごく多い。おそらくそれは後ろに続くキャリアが見えないから「研修後の自分はどうなるの?」と不安になるからだと思います。その後のキャリアもしっかりついてくるとわかれば、安心してHMW総診を選んでもらえるのではないかと思っています。

ありがとうございました。総合診療医を目指す人たちに、この記事をしっかり届けたいと思います。

オンライン説明会の開催および合同説明会「レジナビ」出展のお知らせ

6月14日(土)にオンライン説明会を開催

募集受付の開始に先立ちまして、オンラインによる説明会を開催します。
実際のプログラム内容やグループやキャリアのこと、指導医についてなどお話しいたします。ぜひお気軽にご参加ください。

【HMW総診 オンライン説明会】
日程:2025年6月14日(土)
時間:18:00〜19:00
内容:プログラム説明、グループ紹介、指導医紹介、質疑応答など(予定)
配信形式:Zoom
参加:無料
応募締め切り:6月13日(金)17時
対象:医学生/初期研修医/専攻医・後期研修医/リカレント希望の医師

※後日アーカイブ配信を予定
 
オンライン説明会申し込み
 
不明点やご相談などのお問い合わせについては、お問い合わせページよりご連絡ください。
※「採用について」を選択してください

レジナビフェア2025 東京・大阪に出展

いろいろな病院の情報が一度にチェックできる、日本最大規模の研修病院合同説明会「レジナビフェア」に出展いたします。
プログラムの詳細や、グループの取り組みについて、代表・副代表をはじめ、指導医がお話ししますので、ぜひご参加ください。
※参加には、レジナビへの登録と参加申し込みが必要です。

【民間医局レジナビフェア2025 東京】
日程:2025年6月29日(日)11:00~17:00
会場:東京ビッグサイト南1~4ホール
出展病院:世田谷記念病院
詳細:民間医局レジナビフェア2025 東京
 
【民間医局レジナビフェア2025 大阪】
日程:2025年7月6日(日)11:00~17:00
会場:インテックス大阪 1・2号館
出展病院:堺平成病院
詳細:民間医局レジナビフェア2025 大阪

プロフィール

フリーライター

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杉本恭子

すぎもと・きょうこ

京都在住のフリーライター。さまざまな媒体でインタビュー記事を執筆する。著書に『京大的文化事典 自由とカオスの生態系』(フィルムアート社)。

フォトグラファー

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生津勝隆

なまづ・まさたか

東京都出身。2015年より徳島県神山町在住。ミズーリ州立大学コロンビア校にてジャーナリズムを修める。以後住んだ先々で、その場所の文化と伝統に興味を持ちながら制作を行っている。