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特集記事|服装自由化 vol.1

制服を脱いだら、一人ひとりが大事にしていることが見えてきた

服装自由化2024.08.29

2024年4月、平成医療福祉グループ介護事業部は、関東・関西・徳島・山口で展開する、80以上の施設において職員の制服を撤廃。3ヶ月の移行期間を経て、完全私服化を行いました。服装自由化プロジェクトの詳細については「関連記事」にゆずるとして、本記事では私服で働く職員のみなさんのようすを写真でご覧いただきたいと思います。


取材に訪れた施設では、自分の生き方と働き方を掛け合わせながら、それぞれのファッションを楽しむスタッフが利用者さんとともに過ごす姿がありました。

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好きな服を着ると仕事へのテンションが上がる

おしゃれなターバンでワンレングスのストレートヘアをまとめているのは、ヴィラ播磨の介護士 國本嘉曜子さん。制服があったときは、黒いヘアピンで前髪を留めていましたが、どうしても髪が目にかかってしまうことがあって不便だったそう。また、制服に合わせなければという遠慮があり、ウェストポーチも支給されたものを使っていました。

國本さんは手作りが大好き。私服になってからは、ターバンもウェストポーチも手づくりしたものを使っています。職員のみなさんにも、各自が好きなキャラクターものでウェストポーチをつくってプレゼントすることもあるそうです。

日々のコーディネートに合わせられるように、たくさんの種類のターバンを用意している國本さん。スマホで写真を見せてもらいました。インド刺繍をあしらったターバンはとてもおしゃれ!お仕事スタイルを華やかにするすてきなアイテムです。

同じくヴィラ播磨で働く、介護課長の虫島和美さん。ふんわりした丸襟のブラウスがよくお似合い、なのですが……?

なんと、よく見るとスヌーピー柄!実は、虫島さんは自他ともに認める“スヌーピー愛”の人。このブラウスは、最近発売された「リバティ&スヌーピー」のコラボ生地を、洋裁上手な友人に仕立ててもらったオリジナルだそうです。「服装自由化が決まったときは、戸惑いもあったけれど、気づけば私服を着て仕事に行く日を指折り数えて楽しみにしていました。今は毎日洋服を選ぶのが楽しみ。大好きなスヌーピーを身につけていると安心しながら仕事ができて幸せです」と笑顔を見せてくれました。

虫島さんの主なお仕事は訪問介護。お仕事用のバッグもスヌーピーなら、折り畳み傘もスヌーピー!訪問する利用者さんから「たくさん洋服持ってるね」「その服は初めて見たわ」と言われることも。洋服をきっかけに会話が弾むこともあるので、よりいっそう明るい洋服を身につけるようになりました。

小さい頃から犬が好きだった虫島さんは、ヴィラ播磨の愛犬「梅子」のお世話も担当しています。梅子は、ご縁あって高齢のご夫妻から譲り受けた犬。虫島さんになでられてとろけそうな顔をしていますね。

その人らしい服装でいる方が距離が近くなる

ヴィラ播磨の廊下の向こうから、日焼けした金髪の男性が歩いてきました。彼は、介護士の堀田悠斗さん。とても姿勢がよく、身のこなしもきびきびしています。

実は、堀田さんは兵庫県播磨地域をホームとするサッカークラブ「Cento Cuore HARIMA」の選手。ヴィラ播磨ではスポーツ枠正社員として毎日8時30分から11時までは練習、12時から介護士として働いています。大学卒業後、2023年4月からCent Cuore HARIMAに所属し、2024年2月からグループに入職しました。

「青森出身なので、関西の気候は暑い!」と言う堀田さん。服装自由化により、半袖半ズボンで仕事できるようになり「めちゃうれしい!」と喜んでいました。汗の量も動きやすさも全然違っていて、仕事のクオリティ向上にもつながっていると言います。

髪の色も、服装自由化と同時に金髪にしました。「サッカー選手という自分を出せている」という堀田さんを、利用者さんたちも「サッカーのお兄ちゃん」と呼ぶようになりました。Cent Curio HARIMAでのポジションはFW、Jリーグを目指してがんばっているそうです。

利用者さんの日々の景色を明るくする

徳島の田園風景にバティック! こちらは、ヴィラ羽ノ浦で働いている介護士の仲神ヌヌンさん。母国・インドネシアのバティックを着て働いています。バティックは、ジャワ島で生まれたろうけつ染めの技法による布地。インドネシアではフォーマルからカジュアルまで、さまざまなシーンで着られています。

ヌヌンさんは南国の太陽のようにほがらかな人。ドリンクサービスをするときも、笑顔と陽気な声かけで利用者さんを和ませています。

ヌヌンさんに負けないくらい明るい、介護士の近藤美穂子さん。千葉・船橋市の「梨の妖精」という設定のマスコットキャラクター「ふなっしー」が大好きで、この日は全身をふなっしーファッションで決めてきてくれました。

制服だった頃は名札用ストラップだけでしたが、今はヘアピン、ネッククーラー、Tシャツ、靴下、スニーカーまでふなっしーに。やっぱり好きなキャラクターを身につけると、仕事へのモチベーションが高まるようです。

ポップなデザインが周りをパッと明るくしていました。ちなみに通勤は車で、出勤時はふなっしーファッション、退勤時にはふなっしーではない洋服に着替えています。きっと、職場がオンステージ!なのですね。ふなっしーは入居者さんたちにも好評です。

ケアする側とされる側の境界が溶けていく

制服がなくなると、職員と利用者さんがひとつの風景のなかで溶け合っていくようでもありました。こちらは平成デイサービスセンター鳴門で、午後に行われているお料理レク「クッキングぅ~」のようす。みんなでお好み焼きをつくっていました。

利用者さんと一緒に買い出しに出かけ、材料を切ったり生地をつくったり。最後は、それぞれのお椀で混ぜ合わせていきます。職員さんと利用者さんが混ざり合って、和気あいあいとしているようすはまるでご近所や親戚の集まりみたいです。

「職員さんが私服になって、印象は変わりましたか?」と聞くと、「みんなええ子じゃ。何を着とってもええんじょ」「もうみんな、顔を覚えとるけんな!」と利用者さんたち。きっと、制服を着ているときからすでに、「ケアする側とされる側」を隔てない関係性があったのだなと思いました。

平成デイサービスセンター鳴門では、日々のようすをインスタグラムで発信中。この日も、インスタ担当の職員さんが、いいアングルで撮影されていました。ぜひこちらもご覧ください!

取材を終えて、「自分が着たい服を着る」ことが、仕事へのモチベーションや関わる相手との関係性に大きく影響しているのを感じました。まだ、服装自由化ははじまったばかり、これからゆっくりと起きる変化もあるのかもしれません。また3年後くらいに、お話を聞いてみたいと思いました。

服装自由化プロジェクトについては、さらに2本の記事で特集しています。よかったら、こちらも併せてご一読ください。

プロフィール

フリーライター

フリーライター

杉本恭子

すぎもと・きょうこ

京都在住のフリーライター。さまざまな媒体でインタビュー記事を執筆する。著書に『京大的文化事典 自由とカオスの生態系』(フィルムアート社)。

フォトグラファー

フォトグラファー

生津勝隆

なまづ・まさたか

東京都出身。2015年より徳島県神山町在住。ミズーリ州立大学コロンビア校にてジャーナリズムを修める。以後住んだ先々で、その場所の文化と伝統に興味を持ちながら制作を行っている。

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