ひとプロジェクト 第45回【後編】印西総合病院 事務長/森元 厚志さん
印西総合病院
事務長
森元 厚志 さん
Morimoto Atsushi
挫折を超えて掴んだ協調型の問題解決スタイル
地域の医療のため、より良い病院作りを目指す!
印西総合病院の事務長、森元厚志さんのインタビュー後編です。今回は、事務長になって感じた挫折、さらにそこから自身の仕事スタイルを確立するまでを伺いました。さらに、地域ニーズに対応する印西総合病院の機能や、今後の展望、新型コロナウイルスによる影響を受けた現状と対策について、お話をお聞きしています。森元さんのプライベートも垣間見える後編、ぜひご覧ください!
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「嫌われてもいい」を胸にしまいながら
自分に合った みんなを巻き込むスタイル実際に事務長になってみていかがでしたか。
最初は人から嫌われることがすごく怖かったんですね。そこで一度気持ちが折れました(笑)。立場的に、下からも言われるし上からも言われるし、でも言わないといけないことは言う必要がありますし。
難しい立場の役職ですよね。どう対処されたのですか。
副代表が「ご飯食べに行こう」ってお寿司屋さんに連れて行ってくれて、悩みを聞いてくれたんですね。
前編に引き続き副代表が登場されるのですね。どんなアドバイスがありましたか。
「嫌われて何が悪いの?」って。「それよりも、1人大事な人がいて、その人に信頼されていればがんばれるんじゃないかな」っていう風に言われました。僕もチョロいので、それで「確かに」って思い(笑)。嫌われても仕方ないなって思いながらストレートな物言いをしていた時期はありましたね。だからこそ反発もあったと思いますし、実際に嫌われていた気もします。
またそこから仕事の仕方は変えていったんですか。
やっぱりこのスタイルは自分には合ってないなと思って、無意識かもしれないですけど、徐々に変わっていきました。
どういう風に変わっていったんですか。
正直、事務長として僕に何ができるかっていうと、先頭に立って「ついてこい!」っていうタイプではないと思うんです。どちらかと言えば、みんなを巻き込みたい。僕は事務上がりで、ほかの事務長さんより数字や医療的なところには強くはないですから。なので、みんなに聞きながら、ひとつずつ一緒にやっていく、っていうタイプだと思っています。
問題があっても、自分だけで解決するのではなく。
「一緒に考えよう」という姿勢ですね。なので、時間はかかると思うんですけど、信頼関係もできていきますから。
話し合って解決できれば、その分みんなの満足度は高いかもしれないですね。
片方の意見を聞きすぎるのも良くないので、まずはどちらの話も聞いて、引っかかった部分をすり合わせていきながら調整して、結論を導いていく。結果、患者さんのためになるのはもちろん、みんなが楽しく働けるようにっていうのが一番いいと思っています。
徐々にそういったスタイルに落ち着いていったのですね。
スタッフに「一時は話しかけにくい事務長だったけど、今は話をよく聞いてくれる」って言われて、やっぱり自分にはこっちの方が合っているんだろうなと思いました。
全員がそのやり方ができるわけではないかもしれないですね。
でも「嫌われてもいい」っていうことは、いい意味で自分のなかでは残っていると思います。どうしても言わなければいけないっていう時は、それを思い出して、言うようにしていますね。この言葉で救われたと言うか、こういうアドバイスがなかったら続いていなかったかもしれません。
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地域ニーズに対応できる病院へ
印西市の患者さんのために機能を充実
印西総合病院を開院から見られていると思うのですが、どのような変化を辿ってきましたか。
外来については、常勤医師が担当するようになっていくうちに、地域の患者さんに信頼していただけるようになって、段々と軌道に乗ってきたなと思います。新型コロナウイルスの問題が起きるまでは、外来患者さんの数は右肩上がりでした。印西市の人口増加にも伴って、というのもありました。
入院はいかがですか。
最初は入院患者さんに来ていただくのに苦労しましたけど、こちらも病棟の機能を変えて、充実化を図りました。回復期リハビリテーション病棟と医療療養病棟に加えて、今は地域包括ケア病棟もできました。それに伴って、地域連携室のスタッフが営業活動に取り組むうち、徐々に信頼をいただけるようになったと思います。急性期病院から入院患者さんをいかに早く受け入れて、いかに早くご自宅に復帰してもらうか、という一連の流れが、当院でできるようになってきたと思っています。
病床の機能変換というのも高齢化などの地域の実情に合わせてということですか。
実は印西市は高齢化の進みが少し遅いんです。駅前の開発が進む地区は特に若いファミリー層の移住が多くて、旧市街と呼ばれる、以前から多く人が住まれているところは、ある程度高齢化が進んでいるという状況です。
高齢化がが進むことを見越した機能の変更なのですね。
なおかつ、旧市街側は少しここから離れているので、病院に通うのが難しいこともありますから、そのために訪問リハビリを早い段階で始めたんです。さらに、介護部門を通じて印西総合病院を知ってもらいたい、という思いもあって、デイケアも同じように始めました。
一連の流れ、ということで言うと、訪問サービスがあることでご自宅に戻ってからの安心にもつながります。
今は訪問事業である「てとてと印西」もスタートして、訪問看護もご利用いただけるようになりました。在宅部門はより強化していきたいです。訪問診療の医師も増えましたので、タッグを組めばかなり強いですね。今後は24時間対応化して、さらなる充実を図りたいと思っています。
健診センターの機能も備わっていますね。
以前の法人から続いているものなんですが、受診される方も徐々に増えていますね。新型コロナウイルスの影響で検査数が落ち込んではいたんですが、感染予防対策の実施とともに、総務スタッフが営業に力を入れてくれたおかげで、徐々にまた増えてきています。
今後も地域のニーズに応じた医療の提供を続けていくと。
以前、当院の原崎院長もこのインタビューでお話ししていましたけど(※)、印西市内では今も総合病院が当院と日本医科大学千葉北総病院だけですから、機能の充実は命題だと思っています。
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新型コロナウイルス感染拡大による
病院への影響は大きかった新型コロナウイルスの影響のお話が先ほど出ましたが、実際のところいかがでしたか。
入院も外来も患者数が減少しましたね。外出を控えるために外来への来院が減ることで、外来受診からの入院という流れも、伴って減りました。そもそも病院に行きたくない、という方も増えましたし、訪問サービスについても「今は控えたい」と断られる方もいました。
今は感染予防を優先したい、というお気持ちですね。
例えば訪問リハビリなら継続して行った方がいいですし、身体のためには必要なことではあるんですけど、どうしても時期的には難しかったですね。
5月の終わりに緊急事態宣言の解除された後はいかがでしたか。
一時期は外来受診される方も以前の半分くらいまで落ち込んでいたんですが、外来スタッフのがんばりもあって少しずつ戻ってきていて、7月時点で7、8割程度までは戻ってきました。デイケアも同じような状況ですね。また感染者数が増えていくと、今後どうなるかはわからないのですが。
入院に関してはいかがですか。
以前は稼働率が100%を超えていたんですが、こちらもだいぶ落ち込みました。ただ、地域連携室のスタッフが今回すごく力を入れて、急性期病院を中心に紹介をお願いしてくれました。医療的に難しいケースであっても、院内と調整しながら受け入れを進めてくれて。病棟スタッフも相当がんばってもらった結果ですね。
大変ではあったけど、そういった奔走が功を奏したと。
そういった受け入れを重ねてできた信頼が、さらに紹介につながっていったのだと思います。あとは他の病院への声がけ自体も頻繁にしてくれていたので、それも良かったみたいです。7月時点で9割くらいまで戻ってきました。これについては、地域連携室にいる師長さんが事前に動いてくれました。
素晴らしい先読みですね。地域で名前を知ってもらうということの重要性も伝わります。
地道な作業の積み重ねが重要だということが、今回よくわかりました。外来、入院、訪問と、引き続き感染予防の対策を徹底しながら取り組んでいきたいと思っています。
また、新型コロナウイルスのPCR検査もやられているとお聞きしました。
また、新型コロナウイルスのPCR検査もやられているとお聞きしました。
検査を受ける方と一般の患者さんとの動線は分けられているのですね。しばらくは検査体制を続ける予定ですか。
検査を受ける方と一般の患者さんとの動線は分けられているのですね。しばらくは検査体制を続ける予定ですか。
これも地域で必要な役割、ということでしょうか。
保健所としても、地域で検査体制や外来の受け入れ体制が整っている医療機関があるのは良いことかなと思います。
対応されるスタッフさんも大変なことが多そうですね。
固定のスタッフ6人ほどに担当してもらっているのですが、本当に大変な苦労をかけていますし、各部署からもそのために人を出してもらっているので、各方面の協力で成立していることだと思っています。
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救急、訪問機能を強化して
地域密着多機能病院のモデルケースに
ここまで目まぐるしく病院も変化してきたと思うんですが、今後はどういった展望をお持ちですか。
今時点では新型コロナウイルスの影響からの回復を目指すことが大きいですね。さらに今後は、救急患者さんの受け入れに力を入れていきたいと考えています。やっぱり救急対応をお断りしては、地域に根ざした病院とは言えないですから。完全にはまだ体制が整ってはいないので、徐々に整備を進めて、受け入れ件数を増やすことを今年の目標にしています。
なかなか時間のかかる取り組みではあるのですね。
徐々に進めてはいますが、達成が難しいですね。印西市内で受け入れができないと、隣の白井市の病院に搬送されるんですが、印西市の患者さんであれば、やっぱりご自身が住んでいる市内で診られる方がいいと思いますので。目標を立てて3ヵ月ごとに見直しをして、受け入れを増やしていきたいですね。
救急以外に今後強化したいところはありますか。
今やり切れていない部分を、もっとしっかりやり切りたいというのが一番ですね。訪問サービスもそうですし、デイケアもまだまだできる部分がありますので、もっと力を入れていきたいです。できれば、よくグループで言われる「地域密着多機能病院(※)」のモデルケースのようになりたいですね。「『地域密着多機能病院』と言えば印西総合病院」と言われるようになれたらいいなと思っています。
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ドライブとテーマパークで仕事を忘れる
今後求めるのは「安定」
プライベートのことを伺います! お休みはしっかり取れていますか。
基本は土日にちゃんと休んでいますよ。
どんなことをされていますか。
以前は平日に録りためた番組をひたすら見ては寝るっていうことを繰り返していたんですけど「それは良くない」と周囲から言われまして(笑)。ちょっと前に車を新しくしてから、ドライブにいくようになりました。
アクティブになりましたね(笑)。どういうところに行くんですか。
全然知らないところに行きますね。漠然と「あっち方面に行ってみよう」みたいな感じで。運転すること自体が好きなので、遠出も苦にならないんです。
車に乗ること自体お好きなんですね。
仕事から離れられる環境だからかもしれないです。あと最近は行けてないですけど、テーマパークも好きで、ディズニーランド・シーもよく行きましたし、USJも以前はよく行きました。水族館も好きですね。ディズニーランドなんて、行くと仕事の辛さがなくなるじゃないですか、そういうところが良いんですよね。
まさに夢の国ですもんね。ちなみにお1人で行くわけでは…。
1人じゃ行きませんよ! 以前は一緒に行く人もいました…(笑)。
なるほど…(笑)。今後、個人的な目標はありますか。
ん〜「安定」が欲しいです。
え、それはどういった意味で。
家庭が欲しいですね(笑)。
その意味での安定ですね(笑)。
周りの先生から「結婚すると、より仕事ががんばれますよ」って言われて、思わず「なるほど」って思ったんですよね。
何かこうアピールするとすればなんでしょうか。
シャイなので、つい自分から心を開くのは時間がかかるんですけど…聞き役は好きなんですよ。
お仕事でもプライベートでも、人のお話を聞くのがとても大事にされているんですね!
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前編を読む

印西総合病院 事務長 森元 厚志(もりもと あつし)
【出身】広島県三原市
【趣味】ドライブ、旅行
【好きな食べ物】甘いもの全般(エクレア、スイートポテト、プリンなど)
病院情報

千葉県印西市牧の台1-1-1
医療法人 平成博愛会
印西総合病院
救急外来・整形外科・リハビリテーション科・内科・小児科・循環器内科・神経内科・外科・脳神経外科・皮膚科・眼科 ・耳鼻咽喉科・泌尿器科・乳腺外科・婦人科・形成外科安全で質の高い医療を継続して受けられる後方病院としての機能を充実させ、総合病院としての機能を果たすことを目標としています。さらに救急告示病院として24時間365日、患者さんの受け入れを行っています。