ひとプロジェクト 第22回【後編】平成医療福祉グループ 介護福祉事業部 部長 前川 沙緒里さん
介護福祉事業部
部長
前川 沙緒里 さん
Maekawa Saori
施設の運営をサポートし、介護職の現場に光を当てる
障害者福祉にも熱い想いを持って取り組みます!
後編では、今までなかった介護福祉事業部としての立ち上げと、そこから受けた衝撃、さらに実際のお仕事や、介護職への熱い想いをお聞きしています。また、前川さんご自身が念願だったという障害者福祉への取り組みについてもお話ししてもらいました。新設されるケアホーム板橋の情報も! 介護に携わる方にぜひ読んでいただきたいインタビューです。
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介護福祉事業部の立ち上げで受けた衝撃!
介護福祉事業部の立ち上げについてはどのような想いでしたか。
衝撃でした。やはり病院からスタートしたグループですので、どうしても病院に軸足を置いて進んできたところはあったわけです。ただ私自身は介護保健施設に多く関わってきましたので、だからこそ介護も部門化して取り組めることになったのが本当に嬉しかったです。
確立されることでより本腰を入れられるようになりますからね。
これを主導した副代表が「医療には限界があるけど、福祉には限界がない」と言っていたんですね。福祉は医療のように傷を治せるわけではないけれど、気持ちの部分が作用することなので、限界がないんです。「もっと良くしたい」と思えば、やれることがたくさんある、と。それを聞いてなお衝撃を受けて!
長らく携わってきた身からすると、大きなことですよね。事業部としてのお仕事は実際どういったことになるのでしょうか。
大きくは高齢者介護施設や障害者支援施設の運営サポートです。新施設の開設時や、グループ加入時は立ち上げに関わりますし、運営にまつわる細かい相談や採用計画、また、各施設の収支を確認して、経営についても施設長に提案を行います。
数学が苦手とおっしゃっていましたが、経営分析で数字を見ることも今はされて。
数字は好きではないけど見ないといけなくなりました(笑)。いつも本当に経理の方にお世話になって取り組んでいます。
日常的に全国の施設を回られているのですか。
今はケアホーム板橋の立ち上げがあるので東京にいることが多いですが、基本的には徳島の博愛記念病院にいて、その都度、必要に応じて各施設を回っています。
立ち上げの時はやはり集中的にそこに行くことが多いのですね。
それでも以前よりは減りました。川口さん(※)のように、各エリアに任せられる人ができたので。それと、テレビ会議のシステムが進化したのが大きいです。遠隔での仕事が飛躍的にやりやすくなったので、少ない負担で仕事の幅を広げることができました。
介護福祉事業部としての目標を教えてください。
もっとみんなが楽しく利用者さんのことを考えながら働ける環境を作っていきたいと思っています。果てしないですけど、それを考えて仕事をするのがまた楽しいです。そのためには一緒に手伝ってくれる仲間がもっと必要ですね。
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介護職への想い
よりクローズアップされる仕事へ
介護職の教育や研修についてはどのように取り組んでいますか。
成長の段階に応じて受けるラダー別研修や、資格取得に向けた研修、さらに部内の職種ごとによる研修などを行って、スタッフを支援しています。e-ラーニングも全病院・施設に導入されて、より取り組みやすくなりました。
段々と教育体制が充実してきているのですね。
初めは抵抗があるスタッフさんもいたのですが、段々と慣れてくるうちに「こんな研修をやってみたい」という声が現場からも出てくるようになって、いい作用が生まれています。
より前向きに取り組めるようになるのですね。
介護はクローズアップされにくい職種ではあると思うのですが、少しでも良い環境で働いてもらえるように動いている人もいるんだ、ということがわかってもらえるといいですね。
介護業界全体の問題として、介護従事者が少ないということがあると思います。なり手を増やす、また離職者を減らすというのは大きな課題ですよね。
やっぱりすごく大切な仕事をしているわけですから、自信を持って自分たちの仕事をアピールするっていうことがあっていいかなと思います。誰よりも利用者さんと関わる時間が長く、寄り添える仕事ですので、そういう自信をもっと感じてもらえるようにするのが課題です。ただ、それには国に変わってもらわないといけない部分もあるので「私たちもがんばるから、国もがんばってよ!」と思っています。
(笑)。しっかりと研修やステップアップの機会があるのが大事なことですね。
キャリアアップについても、もっと目に見える形にしたいなと考えています。「こうなりたい」と目指せる場所を作れるのが理想ですね。
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ノウハウを徐々に掴んでいった
障害者福祉への取り組み介護福祉事業部は、高齢者介護とともに、障害者福祉についても取り組んでいますが、こちらはどういった経緯があったのでしょうか。
大阪にある淀川暖気の苑という施設がグループに加入してからですね。高齢者介護とともに障害者支援も行っている施設ですが、当時グループでは障害者の施設に携わるのが初めてだったので、もともと働いていた方たち以外には詳しいスタッフがいませんでした。
介護福祉事業部を立ち上げていくなかで、障害者支援事業にも力を入れていこうということになったのですか。
副代表が主導して始めていきましたね。暖気の苑のスタッフは当時「こっちに目を向けてくれたことが驚きだった」と言っていました。ただ、目が向いた分、変えないといけないことも多かったので大変だったとは思います。
今とはどういう点が違っていましたか。
「スタッフと利用者さんが一緒に」という傾向が強かったです。寄り添い方が少し違うというか、「障害があるからこれはできない」「みんなで同じことをするのが、良いことだ」というように、変に解釈していた部分もありました。
前川さんご自身は障害者福祉への取り組みについてはどのように考えていたのですか。
もともと大学では児童・障害専攻でしたので、いずれは障害や児童の分野に取り組んでみたいという気持ちがあったんです。だから副代表から話があった時、それがバーッとあふれ出て(笑)。
実際どういったことから手をつけましたか。
私も障害の分野から長く離れていましたので、まずは副代表と、しょうぶ学園(※1)に行ったり、べてるの家(※2)に行ったり、さまざまな障害者支援の取り組みを見学させてもらいました。
※1:鹿児島県鹿児島市にある、知的障害者支援施設。2016年には学園を題材にしたドキュメンタリー映画「幸福は日々の中に。」が公開。工芸・芸術活動や、創作・表現活動の支援のほか、レストランなどを地域に開放、活動に取り組んでいる。 ※2:1984年に設立された、北海道浦河町にある精神障害等をかかえた当事者の地域活動拠点。生活共同体、働く場としての共同体、ケアの共同体という3つの性格を持ち、100名以上のメンバーが地域で生活する。それぞれどんな取り組みをされているかを見て、吸収して。
環境も違いますし、同じことをしようとしても、簡単にできるわけではないので、考え方を感じに行くという意味合いでした。実際、障害者福祉への考えが大きく変わりましたね。
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その人らしく
楽しいこと、好きなことに取り組む
そこから現場をどのように変えていかれたのでしょうか。
現場スタッフにも、しょうぶ学園を見学してもらいましたが、やはり考え方の違いを感じられたと思います。それから、一つひとつの細かい業務を見直して、これが本当に利用者さんにとって良いことなのかを整理して。さらに建物自体も、より自由に安全に過ごしてもらえるように手を入れていきました。
淀川暖気の苑で取り組んでいる「くるむプロジェクト(※)」では利用者さんが描かれた絵などを素敵なグッズにされていますよね。これはどういった想いで取り組まれているのですか。
一般社会のものさしで考えると、仕事をしてお金をもらうことは当たり前ですが、そこに合わせるのが、障害者の方にとっては必ずしも幸せにつながることではないと思うんです。でも利用者さんも、好きなこと、楽しいことは続けられるわけです。だから、お金をもらうためにやるのではなく、あくまで自分たちがやりたいこと、楽しいと思うことに取り組んでもらう。そこにスタッフの力が加わることで、作品が商品となり、結果的にそれが収入になって、社会とつながれるんです。取り組みとしてはまだこれからではありますが。
くるむプロジェクト
素朴な疑問なのですが、利用者さんにとっての「好きなこと」は、どうやって見つけるのですか。
最初はわからないので、一通りやってもらいます。ネジを作るのが向いてる人もいますし、粘土をこねるのが好きな人もいる。そのなかから、これがいいんじゃないかっていうのを考えて、取り組んでもらいます。
選択肢がたくさんあるのが良いということでしょうか。
必ずしも選択肢に全ての人が当てはまるわけではないので、今ある選択肢に無ければ新しく作ることも考えます。その方の生活を見ながら「こんなことが楽しめそう」ということを話し合いながらですね。
現在グループでは、暖気の苑以外にも、こうした障害者支援に取り組んでいますが(※)、医療グループとして取り組む強みはどういったところにありますか。
医療法人だからこそできる支援がたくさんあるところだと思います。医療職種との関わりも作れますし、調子を崩した時のバックアップもしやすい。また、例えば暖気の苑では作業としてパンやうどんを作っているんですが、それをグループ内の病院や施設に食事として卸すことで、収入とすることができるんです。
各地に展開するグループならではですね。障害者福祉への取り組みについては今後どう進めていかれますか。
現在、大阪のほかに、兵庫県淡路市の「ココロネ」、東京都足立区の「OUCHI」、さらに東京都小平市の「緑成会整育園」と、内容はそれぞれ異なりますが、障害者福祉に取り組んでいます。今後は、施設をどんどん増やすのではなく、まずそれぞれの地域でしっかりと根を下ろして活動していきたいです。そこから少しずつ広げていけたらいいのかなと思っています。
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地域の介護需要に応える大規模施設
より安心して過ごせるようにスタートを切る今日の取材場所であるケアホーム板橋が、いよいよ6月にオープンですね! 現在はどのような状況ですか。
先日までは、先行して入職したスタッフが準備に当たっていましたが、4月の後半からは新入職のスタッフが130名ほど入っての研修が始まっています。
130名! 規模が大きい施設なだけはありますね。
200床の特別養護老人ホームのほか、ショートステイ、グループホーム、ケアハウス、地域包括ケアセンターがひとつの施設に入りますし、当グループとしても初となる規模ですね。
どんな特長がありますか。
多様な機能を持ちますので、高齢者の方の暮らしについて幅広く相談を受けられるのが強みです。規模も大きいので、広々とした設計がされているのもポイントですね。「特養の施設っぽくない」という言い方が正しいかわかりませんが、スタイリッシュな雰囲気になっています。
明るくて開放感がありますよね!
屋上には自由に行ける庭園がありますし、見晴らしもとてもいいです。近隣のみなさんも使える、広い地域交流スペースも設けていますので、ぜひ活用していただきたいと考えています。
利用者さんについてはどのような状況ですか。
ありがたいことに大変ご好評をいただいて、入居についてはほぼ決まっています。ただ、この大きさの施設を動かせるようになるには、ある程度時間が必要と考えています。そのために、オープンしてからは段階的に利用者さんを受け入れながら進めていく予定です。やはり事故やけがなどがあってはいけないので、慎重に進めていければと思います。
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仕事の後に飲み会
まるで夢のよう
お休みはどう過ごされていますか。
いちばんの楽しみは洗濯をすることですね。気分が一新されるようで、とても気持ちがいいです。以前は休日となると出かけないと損した気持ちになっていましたけど、最近はボーッとできる時間がないと、逆に損した気持ちになるようになりました。
何も考えずに過ごす時間も大事ですよね。ちなみに趣味はありますか。
趣味という趣味はないんですけど、最近折り畳み自転車を買ったんですよ。
いいですね!
でもまだ乗れていないんです(笑)。本当は、折り畳み自転車を車に積んで、行った先でサイクリングしたいんです。今は買ったまま家に置いてあるので。徳島に神山町っていう、のどかでいいところがあるんですね。そこに行って乗りたいと思っています。
ちなみにスタッフとお酒を飲みに行くことはありますか。
たまに行きますよ。でも徳島や関西だと年に1、2回くらいですね。車通勤のスタッフが多いので、仕事帰りにフラッとっていうのができなくて。逆に関東に出張に行く時には車ではないので、飲みに行けるのが楽しくて、夢のようです。仕事帰りっていちばんお酒を飲みたいじゃないですか(笑)。
(笑)。開放感がありますよね。
だから声をかけてもらえるとものすごく嬉しいです。施設長さんたちとも、最近は行けるようになりましたね。以前は「仕事で来ているのに」っていう意識があったんですが。最近では、そういう機会も、とても大切な時間だなと感じています。徳島・関西の施設長さんたちとも、もっと行ければなあと思っています。
以前よりも気持ちの余裕ができたんでしょうか。
そうやって話せる関係ができたのかなとは思います。でも立場的に怖がられているかも、とは思うんですよ(笑)。
施設長さんとお話しされている様子を見ると、そんなこともなさそうに思います(笑)。
自分から言わなくても、企画して誘っていただけるので、とても嬉しいですね。あんまり自分からは言わない人間なので(笑)。
前編を読む

平成医療福祉グループ 介護福祉事業部 部長 前川 沙緒里(まえかわ さおり)さん
【出身】徳島県徳島市
【職種】社会福祉士
【好きな食べ物】カレー(バーモントカレーみたいなおうちのカレー)
施設情報

東京都板橋区向原3丁目7-8
ケアホーム板橋
2019年6月に開設。特別養護老人ホーム(ユニット型、従来型)、ショートステイ、グループホーム、ケアハウス、地域包括支援センター等の介護保険サービスを提供する高齢者施設です。