インドア派からアウトドア派に変身?!チャレンジして得たさまざまなこと。/博愛記念病院/栄養科 辻 好恵さん
インドア派からアウトドア派に変身?!
チャレンジして得たさまざまなこと。
博愛記念病院の栄養科で係長を務める辻さんは新卒から管理栄養士として勤務。管理栄養士になろうと思ったきっかけや栄養科の仕事内容、新人時代のエピソードまでを教えていただきました。
アルバイトやサークルでチャレンジ精神に火がついた?!
ご出身はどちらですか。
徳島県の三好市で、学生時代は市内で育ちました。大学も県内だったので、ずっと徳島で過ごしています。
どんな子ども時代でしたか。
小さい頃はインドア派でしたが、アルバイトをしたり、サークルに入ったことで、アクティブになっていきました。
どんなアルバイトをされてましたか。
オムライス専門店やジェラート店、派遣型の短期アルバイトもやっていました。いろいろできることが、すごく楽しかったですね。
その頃から食や栄養に興味をお持ちだったんですか。
いえ(笑)。こだわってアルバイト先を探したことはなくて、高校生や大学生が選ぶ、一般的なアルバイトを選んでいました。ただ、今思えば、時間内にオーダーされたものを作り上げたり、丁寧に提供するように教わっていたことは、すごく良い経験になったと思っています。
管理栄養士になろうと決めたのは高校生の頃ですよね。
そうです。でも、大きな夢を持って進学を決めたわけじゃないんです。県内で進学できる学校を進路指導の先生に相談したなかで、管理栄養士を選んだっていう。
何か興味を持つ理由があったんですか。
一時期、家庭で「中食」が多い時期があって、「何で作らないんだろう?」って疑問を持っていたんです。自分で作れないのに、不満で。そういうことに詳しくなりたかったんだと思います。
そういうとき、ありますよね。
今は、自分が親になったので食事の苦労とか、いろいろ事情があったんだろうなって思えるようになりましたけどね、さすがに(苦笑)。
(笑)。大学時代はどんな学生でしたか。
バイト三昧だったのと、タッチラグビーのマネージャーをしていました。一般的なラグビーとは違って、けがをしないんですよ。
そんなラグビーがあるんですね!
あるんですよ〜。タックルがなくて、プレーヤーはいつでも交代自由なんです。6回タッチすると攻守が変わる面白いスポーツですよ。本当はプレイヤーで参加していたって言いきりたいんですが、そんなこと言ったらサークルのみんなに怒られそう(笑)。あの時期は、本当に青春でしたね。
直営と委託
働く場を選ぶときに重きを置いたこととは
就活のときは、いかがでしたか。病院で働こうって決めた理由もお聞きしたいです。
私が就活をしていた当時は、一般企業では管理栄養士も総合職採用みたいな枠が多かったです。管理栄養士だけど、まずは営業職に就いて仕事を覚えるって感じでした。企業への就職も選択肢にはありましたが、営業っぽい仕事内容が自分の性格からすると、難しいだろうなぁと思っていました。
どうしてそう思われたんですか。
先入観だけかもしれませんが、使ってない商品を勧めたり、携わっていないのに商品を熱く語るような仕事はできないって思っていました。性格ですよね(笑)。
真面目な一面が出ていますね。
根っこの性格って変わらないですよね(笑)。一般企業以外の就職先だど、病院や老健施設、保育所や学校などが一般的で、いろいろと調べているうちに、病院で就職したいと思っていました。
何かそう思える、きっかけがあったんですか。
親戚に医療従事者がいたので、病院で働くことが身近だったのかもしれません。職種は違いますけど、話を聞いているうちに「私もこうやって働くのかなぁ」って想像できて。あとは、直営の施設で働きたいと決めていたので、病院に魅力を感じていました。
直営の施設って何ですか。
病院の管理栄養士は「調理現場」と「臨床現場」で働くことになるんです。その部分の「調理の現場」が委託運営なのか、直営なのか。大きくふたつに分類されるんです。
どのような違いがあるんでしょうか。
調理現場での仕事に、献立の作成から食材の受発注や管理と厨房全体の管理を管理栄養士が担うケースが多いです。委託だと、調理現場での業務は委託会社の管理になるので、臨床の現場だけに集中することになります。
辻さんが、直営に魅力を感じる点はどこだったのでしょうか。
私は、ひとつの業務に集中できる現場も魅力的でしたが、「たくさん業務を経験できる職場から始めたい」っていう気持ちがありました。直営の病院で勤務すれば、患者さんに提供する食事のオーダーを細かく直前まで変更できたり、患者さんの食事を確認する作業もできるんです。手間を惜しまずに、覚えたいと思っていました。
博愛記念病院はそういう点に優れていたんですね。
規模が大きいので、優れ過ぎてるぐらいです。でも、基礎をきちんと固めておきたい私の性格にはとても合っていたと思います。
念願の東京進出!
1年目で巡ってきた貴重な経験
新卒の頃に一番印象に残っていることはありますか。
応援業務で東京に行ったことです!私が新人だったときは、まだグループの栄養部の仕組みができる少し前だったので、エリアに関係なく新施設の立ち上げに携わることができたんです。
新卒なのにすごいですね! どこに応援に行かれたのですか。
東京の多摩川病院のリニューアルがあったので、その応援を手伝わせてもらいました。
瀬戸内海を越えて行ったんですね。
そうなんです。ちょうど、ひとり暮らしをしていたので、自由で(笑)。すごく楽しかったです。私が勤務する病院よりも病床数が少なかったので、業務の仕方も少し違っていたので、ふたつの現場を見ているようで。
特に印象的だったことはありますか。
まだ1年目だったので、他部署との連携業務が新鮮でした。応援業務は、区切りが来れば戻るんですけど「もうちょっとここで働きたいな」って思ったくらいでした。
ほかの施設に出向くことは、よくあるんですか。
今は、グループの栄養部での体制もかなり充実しています。各エリアのなかで応援体制が整ってきているので、エリアを跨いで行くことは減っています。
では、貴重な体験だったんですね。
そうですね。1年目でこれだけの経験ができたことは大きかったです。目標を見つけたような感覚がありました。
1年目のときは、一般的にどんな仕事が多いんですか。
当院だと、厨房内の業務の流れを把握する期間として、1年目は厨房に常駐します。
1年どっぷり厨房に入るんですね。
逆に言うと、1年後には同じような時間は取れないので、新人だけの特権だと思いますよ。2年目からは病棟業務との調整をつけながら厨房の応援に入るので、厨房のスピードに慣れておかないと、サポートができなくなっちゃうので。最初のうちに、体で覚えておけるほうがいいですよ。
ちなみに厨房で作る食事の量は、どれくらいですか。
昼食が一番多くなるんですが、患者さんと職員を合わせると700食ぐらいを一気に調理することになります。
すごい量っ!
本当に大量調理ですよね。「今日の主菜は唐揚げ」っていう日だと、700食分の唐揚げを作ることになります。すごいんですよ、調理師さんたちって。
想像しただけで暑くなってきました。
それだけの量を一気に作るので、残食には気をつけています。自分たちの施設でも試行錯誤はしますが、ほかの施設のスタッフに食材の活用法を聞いたり、下処理をする前にもう一度予測を立ててみたり。地道なことですけど、定期的に話し合うことも忘れないようにしています。ほかの施設で好評だったことは積極的に取り入れることも方法のひとつだな、って感じています。汗かいて作った料理が残らないように、これからもサポートしていきたいですね。
みんな悩む?
管理栄養士定番の壁とは
管理栄養士さんは厨房のスタッフさんをサポートする業務もありますよね。
あります。長年調理に携わるパートスタッフさんだと、新人とは親子以上の年齢差になることもあるので、緊張しますよね。
新人のうちから年上の方に指示や指導をするのは大変ですよね。
「最初にぶつかる壁」ですかね(笑)。
(笑)。伝える方法って難しいですよね。
どうやって伝えようかなって悩んでいるうちにタイミングを逃したり、ストレートに伝えると意図が伝わってなかったり。よく聞きますね(笑)。
あ〜、光景が目に浮かびます。
最初は特に。一緒に仕事をしているので、最終目的は同じなのに経過途中で意見がわかれることもあったり。そこでまた、悩んで。
管理栄養士と厨房スタッフで視点が少し違うんでんすね。
そうなんですよ。厨房スタッフなりの視点や意見を受けて、気付くことも多いです。
技術面はどうやって指導されていますか。
今は、栄養部のなかに「調理業務支援課」という部門があるので、そこが中心となって技術と教育面の業務改善に取り組んでいます。
辻さんだったら、こういう壁はどうやって越えますか。
私は、立場や年齢よりも、一緒に問題を解決できるように協力してほしいと伝えています。限られた時間で大量調理を毎日仕上げるスタッフさんには本当に感謝しています。そのうえで、グループや病院として必要な業務をどう取り組んでいくか一緒に考えていくようにしています。
チームで仕事をしているわけですもんね。
そうですね。博愛記念病院みたいに大きい病院だと、管理栄養士の人数がいるので、先輩と後輩の助け合いができるんですが、小さい病院だと、部署に管理栄養士が1人しかいないということもあるので、そんなときは、グループの強みを使ってほかの施設にいる同期や調理業務支援課と栄養業務支援課を頼ってほしいですね。
辻さん自身は、新人の時に苦労されたことはありましたか。
もちろん、同じように悩んだこともありました。私は、調理師や栄養士も含めて同期が9人いたので、同期からいろんな意見を聞くことができて、恵まれていましたね。
病院の仕事だけじゃない!
活躍できるフィールドがいっぱい。
今、担当されている業務も教えていただけますか。
管理職になってからは、厨房のサポート業務を少し減らしてもらって、栄養科が参加する院内の会議や病棟の担当、栄養部での活動が主になってきました。
病棟ではどんな仕事をされているのですか。
入院患者さんの栄養管理がメイン業務になります。栄養がきちんと足りているのかを把握することからはじまります。あとは、言語聴覚士さんや病棟の看護師さんと一緒に、食の形態や調理工夫を検討したり、患者さんの情報を共有するためのカンファレンスにも参加しています。
多方面で活動されているんですね。
もっと活躍されている方はたくさんいますよ。グループの学会発表や研究など研鑽されているスタッフは多いですよ。そういうチャレンジができる環境って魅力だなと思っています。でも実は私、辞めようって思ったことがあったんです。
えー!!
こっそりよそへ面接に行ったこともあったんですよ。でも、辞めてないですけど(笑)。
辞めるタイミングを考えていたら、
辞める時期が今じゃなかった?!
そんな時期があったんですね。
ありましたね。同じ職業の友だちに会うと、企業で商品開発をする話を聞いて羨ましく思えたり、病院勤務を続けるにしても、規模が違うと仕事の幅も全然違って見えたりして。いいなぁ〜って(笑)。
あ〜(笑)。
ガラッと気持ちを変えてみたいときがあるじゃないですか(笑)。でも、辞めたい理由が定まらなかったから、辞めることを止めました。
辞めたい理由が定まらないって発想もすごいですね。
何かに嫌になって辞めちゃうと新しいところでも、同じように嫌なことがあるたびに辞めそうな気がして。
だから、退職はしなかったと。
辞めるなら、ここで絶対できないことを理由にしたほうがいいな、と思えて。なんとなく嫌なことは、改善できる可能性もあるじゃないですか。いろいろと新しいこともさせていただけるチャンスもあるので、「ここじゃできない」っていう理由もなかったんですね。ここのグループの方が魅力があると思いました。
新しい取り組みをされているんですか。
私は、「栄養業務支援課」に所属しているので、各部門で問題になっているものを支援しつつ、サバイバルフーズに関する取り組みに注力しています。地震を想定した災害だけじゃなく、停電になって調理ができないときにも使える手順書などもグループで共有できる仕組みを作成中です。
災害への備え、必要ですよね。
そうですね。ちょうど去年、関西方面は西日本豪雨の被害があって。どんなときでも患者さんへ食事を提供できるように、力を注いでいきたいですね。あとは、こういった情報を共有するためにも、グループ内の研修制度も増やしていきたいと思っています。あ、でも私の勝手で増やせるものじゃないんですけど(笑)。
(笑)。後輩さんたちを育てたい気持ち、すてきですよ。
機会がないと吸収できないこともあるので、積極的にさまざまな研修に参加できたらと思っています。また、得たことは活用してほしいですし、自分たちが発信することも行ってもらいたいと思っています。グループ内の学会で発表することも、自分の好きな分野とか興味があることをアピールするチャンスですからね。
子育てをはじめて趣味が激変
影響を受けているとある番組とは
プライベートなこともお聞きしたいのですが。まずは、お休みの過ごし方を教えてください!
ちょっと前までは、登山に出かけたり、マラソンをしていた時期もあったんですが、飽きちゃって。今は、子育ての合間に録り溜めたテレビ番組を一気に見るぐらいです。
(笑)。お好きな番組があるんですか。
「ガイアの夜明け」とか「カンブリア宮殿」みたいな経済ドキュメンタリー番組が好きです。商品を作った人が熱く語る姿を見ていると、その商品を買いたくなるんです(笑)。
感化されてますね(笑)。
「こんなに苦労して作った商品だったなんて…よし、買おう!」って(笑)。戦略に思いっきりハマってますね。でも、現場で奮闘する人たちの様子に感動しちゃうんですよね〜(笑)。
購買意欲が高まっちゃうんですね(笑)。
影響を受けやすいみたいです。私が子育てに必死なので、同じように何かを懸命にがんばっている人に共感しやすい時期なんですかね〜。子育てしてからハマりました。
お子さんは、おいくつですか。
2歳です。まだまだ手がかかる時期で、目が離せないです。院内に先輩ママがたくさんいて、「大変な時期やね〜」って声をかけてもらえるだけでうれしくて、がんばれます。
心強い味方がたくさんいるんですね。
そうなんです。結構、小さい子どもを持つスタッフさんも多いですし、子育て経験があるスタッフさん率が高いですよ。逆に「平等」について考えさせられることもあって。
ライフステージが変わらなくても
「平等に」風通しを良くしたい
その「平等」は、どういったことですか。
支えた側の人にも平等に支えられる機会が巡ってくる、風通しのいい職場だったらいいなって。例えば、保育園を使いはじめると、急な勤務変更って想像以上に多く出てしまうんですけど、突然抜けたところでも誰かが支えてくれていて。その人には、別のところで誰かに支えてもらう機会をつくりたいんですよね。お願いばかりするのも、されるのも嫌じゃないですか。
そうですね、立場が違えばそう思うかもしれません。
昔と比べると、女性が長く勤務できる環境になりましたよね。結婚や妊娠だけを理由に辞める人も減ったと思うんです。妊娠しても「戻っておいで」って言ってもらえる職場は、すごくありがたいです。でも、同じように、出産や子育てをしていない人にも働きやすいといいなと思っています。こういう言い方は変かもしれないですけど、子育てしている人だけが優遇されていいのかな、って気持ちも芽生えて。いろんな人がいる部署だからこそ、居心地を良くしてずっと一緒に働いていきたいです。
多様な取り組みを検討されているんですね。
今からですけどね。管理栄養士は若いスタッフも多いですし、私自身も、育休明けに戻ってきたときに、本当に助けられました。今度は、私が「みんな平等に感じる環境」をつくっていけたらと思っています。
お任せで味わいたい!
カウンター越しの海の幸
では、最後に好きな食べ物をみなさんにお聞きしています。辻さんのお好きな食べ物は何ですか。
あまり好き嫌いがなくて、何でも美味しく食べるほうなんですが…今、行けるなら、お寿司か和食ですね。
にぎり寿司派ですか。
そうですね。瀬戸内海は魚が美味しいのでおすすめですよ。今の季節だと、鱧とか。出汁を取ると最高です!
プロフィール
博愛記念病院/栄養科 係長
辻 好恵
つじ よしえ
【出身】徳島県
【職種】管理栄養士
【好きな食べ物】お寿司(ネタはおまかせ派)
【好きな栄養素】アルギニン(一時期ハマりました)
病院情報
医療法人平成博愛会
博愛記念病院
内科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、リハビリテーション科、放射線科
開設当初から“患者本位”のサービスを目指して、療養環境向上に向けたあらゆる取り組みを展開しています。急性期から慢性期まで幅広く対応しながら、最先端のロボット機器を導入したリハビリテーションに力を入れる病院です。