ひとプロジェクト 第63回【前編】平成医療福祉グループ 薬剤部 部長/秋田 美樹さん

平成医療福祉グループ 薬剤部

部長

秋田 美樹 さん

Akita Miki

薬大好きな文学少女が
病院薬剤師として活躍するまで

今回は、グループの薬剤部で部長を務める秋田美樹さんです。小学生の頃は「良くも悪くも目立っていた」と語る秋田さん。子どもの頃から多趣味で、文学や芸術、合唱などさまざまな分野に興味を持つなかで、当時からすでに「薬が好き」だったと話します。前編では、そんな秋田さんの小学生時代のエピソードや、子どもながらに薬を好きになった理由、「もともと良くないイメージを持っていた」という病院薬剤師になるまでの経緯について、伺いました。
ぜひご覧ください!

周囲との違いを感じた小学生時代

今日はよろしくお願いします!

ここ最近のひとプロジェクトって、出ている方の空気感が近く感じませんか? 良い意味でAB型系というか、オタク気質というか、職人気質の人が多かったような気がして。

言われてみたら職人タイプの方も多かったかもしれないですね。ご自身についてはどう思われるんですか。

私もそのタイプというか、自分ではわかんないですけど、よく「変わっている」って言われるので、「そうなのかなあ」って。まあ褒め言葉だと思ってますけど(笑)。

(笑)。では早速、ご出身から伺っていきます。

東京都の東村山市です。残念ながら亡くなってしまいましたけど、志村けんさんで有名なところです。

「東村山出身の有名人と言えば」という感じですよね。東村山市はどんなところですか。

本当に「志村けんの街」です。お祭りも必ず『東村山音頭』ですしね。意外と踊れないけど。あとは何があるかっていうと、トトロの森ですかね。

『となりのトトロ』の舞台のひとつになったとされているところがあると。

緑が多くて空気が良くて。昔は結核の療養地みたいなところだったんですよ。今は転用されてますけど、もともと療養のための病院が多くて、トトロでも、主人公のお母さんが入院していた病院のモデルになったところが、東村山にありますから。

環境の良さが伺えますね。小さい頃はどんなお子さんでしたか。

う〜ん…昔から、良くも悪くも目立つんですよ。良く言えば、面白いとか個性的とか、元気とか、人からは言われるんですけど。小学校高学年になって思春期を迎えた時に、「ヤベッ」て思いましたね(笑)。

どういうことですか(笑)。

小学生って高学年にもなると、周りに合わせる同調圧力みたいなのが出てくるじゃないですか。そこから飛び出る感じはあったんじゃないですかね。それで、目立っちゃうなって思って、ちょっとセーブして。

「飛び出ない方がいいな」という意識を持ったんですね。

それで悩んだこともあったんですけど、周りの勧めもあって、中学校は地域の学校ではないところに入ったんです。そうしたら今度は周りに、良い意味で個性的な、天才タイプの人が多くて、むしろ私が地味なくらいでした。

  • ドラッグストアで
    薬を眺めるのが好きだった

    では中学時代にはだいぶ環境が変わって過ごしやすくなって。その頃はどんなことに興味がありましたか。

    多趣味というか、いろんなことに興味がありまして。まず小中学校の頃は特に本が好きで、真面目な本を読んでたんです。宗田理とか、群ようことか読んでいましたね。

    小学生で群ようこは珍しいかもしれないですね。

    それが高校生くらいになると、小野不由美とか須賀しのぶとか、時雨沢恵一とか、だんだんコバルト文庫とか電撃文庫に寄っていくんですよね(笑)。

    趣向が純文学からライトノベルの方に移っていったと。文学好きだったのですね。

    でも、それと同時に薬も好きだったんですよ。

    えっと「薬も好き」というのはどういう意味で…(笑)。

    家族とか親戚で薬を飲んでる人がいて、薬自体が身近だったのと、「なんでこれが効くんだろう」っていうことに小さい頃から興味があったんです。中学生になって電車通学になったので、地元にはない大きなドラッグストアにも行ける機会ができて「すごい! 楽しい!」って思って。

    薬が並んでるのを見るだけで楽しかった。

    だから学校帰りに、1時間とか2時間とかドラッグストアで薬をずーっと見てました。今から思えば、すげー変な子なんですけど(笑)。

    中学生だと同じ趣味の人は少ないかもしれないですね(笑)。

    友だちと一緒に行くこともあったんですけど、みんなは「早くプリクラ行こうぜ」って感じで。

    文学も好きで、薬に興味もありつつと、文系理系にとらわれないタイプだったのですね。

    どちらも面白いなと思っていましたし、美術系のことにも興味がありましたし、いろいろ興味がありましたね。

    ちなみに部活動などはされていたのですか。

    中学・高校と合唱部でした。歌うのも好きでしたね。ハモると気持ちいいんですよ〜。

  • 薬剤師と臨床心理士との
    2択で迷う

    それだけいろいろと興味を持つなかで、薬学を選ばれたのですね。

    実は、臨床心理士と薬剤師の2つで悩んだんです。進路を選ぶ時は本当に迷いました。

    臨床心理士にも興味があったのですか。

    高校の倫理の授業がすごく面白くて、そこで臨床心理士という仕事があると知ったんです。薬剤師も臨床心理士も、どっちも医療系という点では同じベクトルなんですけど、アプローチの仕方が全然違うので。

    その2択から薬剤師を選んだのはどんな理由ですか。

    高校2年生の時の担任が化学の先生だったんですけど、私が迷ってるのを知ってか知らずか、すごくいろいろ教えてもらったり良くしてもらったりして。「化学って楽しいな」とあらためて思うことで迷いも吹っ切れたんです。それで薬学部を目指すことにしました。

    薬学の基本となる化学の楽しさに気付かされて、背中を押されたのですね。

    あと、当時はまだ薬学部が4年制だったんですけど、ゆくゆく6年制になるっていう話も出てたんですね。臨床心理士の方は、こないだの「ひとプロジェクト(※)」でも話題にありましたけど、資格を取るには大学に4年行って、さらに大学院で2年学ぶ必要があると。でも薬剤師は「今なら4年で取れるな」と思ったというのもありました。

    4年で学べるうちに学んでおこうと。やはり4年制と6年制ではだいぶ様子が違うのでしょうか。

    授業がギュッとしてましたね。大学ってバイトをするとか、余裕のあるイメージだったんですけど、みっちりで。さらに研究室に配属されてからは、夜10時とか11時までは研究していましたし。

    いわゆる「キャンパスライフ」という感じではなかったんですね。以前にインタビュー出ていただいた薬剤部課長の入間川さん(※)は、学生時代のバイトやパチンコの話もされていました(笑)。

    きっと上手いことやってたんじゃないかな(笑)。

    (笑)。どんな講義が興味深かったですか。

    「薬理学」ですね。薬がどの受容体にどのように作用して、どう効くかっていうことを学ぶんですね。ちなみに最近、グループの聖和看護学校で薬理学の授業を担当させてもらっているんですよ。教える側は難しいですけど、化学の楽しさを少しでも感じてもらいたいなと思っています。

    ご自身が最初に薬に興味を持った時のように、興味を持ってもらえるといいですよね。どの職種でも、学校で学んだうえで「いざ現場に出たら全然違った」ということはよくあると思うんですが、いかがでしたか。

    それはもう全然違いますね。基礎知識を詰めておくことは大事なんですけど、ほとんどは現場に出てからの勉強ですから。基本的な授業の内容は、電子がどう移動してここの結合が切れて、この反応がどうこう、とか、もちろんそれはそれで大事なんですけど、実際にほかの職種のスタッフとか患者さんにはその情報を噛み砕いて話さないといけないですから。

    知識をどう使うかは、実践が大きいと。忙しく過ごしていたのでは、サークルなども特に入らず。

    でも、生薬研究会に入ってましたね。薬用酒を作ったり、軟膏を作ったり、生薬を入手して漬けたり加工したりとか。東大和に東京都の薬用植物園があるんでみんなで行きましたよ。檻の中で麻薬も栽培しているんですよ(笑)。

    (笑)。なるほど、なかなか専門的な植物園があるんですね。

  • 生意気だった新人時代
    気がついた「聞く技術」の重要性

    就職はどのように考えられたんですか。

    あんまり考えてなかったです(笑)。ただ、当時は病院で働くというのは考えのなかにありませんでした。

    どういった意図でそう思ったのでしょう。

    実習で行った急性期の病院で、上下関係が厳しいなか、仕事もずっと同じことをやり続ける、っていう経験をして、すっかりそのイメージがついてしまったんですね。

    なるほど。もちろんそれは一例だったとしても、秋田さんのなかでは病院にそういったイメージがついてしまっていたと。

    1日中地下室にこもる作業を半年以上毎日やり続ける様子を見て、これは私には向いてないなと。で、学校に就職説明会とかでいろんな企業が来るんで、そのなかから決めちゃったという感じですね。

    どんなところに入ったのですか。

    調剤薬局併設のドラッグストアを運営している会社でしたね。ただ、今思うとその時は本当に世間知らずだったので、すごく嫌な新卒だったなと思って、穴掘りたいですね…。

    思い返しても、穴があったら入りたいくらいの生意気さだったのですね。

    本当に何もわかってなかったので、生意気なことをたくさん言って迷惑かけたなって、今は反省しています。「なんでこうじゃないんですか」とか、いろいろ言って協調性がなかったですね。上の人の苦労も理解せず、自分の主張ばっかり言ってた気がしますし…ああどうしよう!

    過去の話なのできっともう大丈夫です(笑)。

    でも、そんな生意気な新卒にも、薬局主催の健康相談会とかイベントを任せてくれたんですよ。血圧とか糖尿とかをテーマに企画して、実際来てくれた人の血圧を測ってアドバイスをしていましたね。あとは薬の説明書きを一生懸命作ったり、そういうことも早期に割と目覚めていました。

    そうやって患者さんと接するとか、わかりやすく伝えるとか、まさに授業だけでは学べない部分ですね。

    特にドラッグストアや調剤薬局に来られる患者さんって、どちらかと言うと、話を聞いてほしい方も多いんですね。これは「聞く技術」がいるなと思いました。後々、地元の調剤薬局に転職したんですけど、そこでも聞く技術の大切さを学びましたね。

    どんな調剤薬局だったんですか。

    60歳を超すベテランの薬局長さんが切り盛りしている地域密着の調剤薬局でした。その方がもうカリスマ的で、聞く技術が本当にすごかったんです。みんな「カリスマと話したい」って、処方せんを持って来ていましたね。

    じゃあ、その薬局長さんと話したくて、わざわざ来る人がいて。

    ほとんどがそうだったんじゃないですかね。薬の説明がわかりやすいのはもちろんなんですけど「息子さんは最近どうですか?」「お嬢さん大学合格されたんですね」とか、患者さんのことをちゃんと覚えて話をしていて、みなさん気分良く帰って行かれるんですよ。

    まさに地域のみなさんに愛される薬局になっていたんですね。

    そこまでなるには何十年とかかりそうですけど、本当にすごい話術だなと思いましたよ。

一度は病院で働こうと決意
緑成会病院リニューアルのタイミングで入職

このグループで働くようになったのはどんな経緯がありましたか。

ちょうどその調剤薬局で働いていた頃が、近所の緑成会病院の運営が平成医療福祉グループに変わってリニューアルオープンになるタイミングで、たまたま求人募集のチラシが入っていたんです。

求人チラシを見たところで、いざ移ろうと思ったのはどうしてですか。

先ほどもお話ししたように、学生時代から病院で働くこと自体に抵抗がありましたし、仕事も職人的にカッチリしていて厳しいというイメージを持っていたんですね。

そもそもは進んで病院を職場にしようとは思っていなかったと。

しかも病院に入ること自体、とても難しいというイメージがあったんですね。でも、そのうち6年制の薬学部を卒業する学生も出てくるというタイミングで、病院で勤務したことのない私が、もし病院の仕事を経験するとしたら、挑戦するのはもう今しかないんじゃないかと思ったんです。

なるほど、つまり一度は病院の仕事も経験してみようと思って、それにはこのタイミングしかないと判断したのですね。

調剤薬局のみんなには「ちょっと修行に行ってきます」って言って転職しました。みんなも「行ってらっしゃい」って送り出してくれたし、だから本当は今も修行の身なんですよ(笑)。ただ、その薬局も途中で経営が変わってしまいましたし、いざ緑成会病院に入ったらそれどころじゃなくなってしまい…。

今や部長ですからね。実際に緑成会病院に入職してみて、どんな印象でしたか。

実習の時から、病院は怖いとか硬いっていう印象だったんですけど、いざ入ってみたら、ヘルプで来てくれていたグループ病院の人たちが、淡路弁や阿波弁でホワーッと話していて。

言葉が柔らかい印象がありますからね。淡路島や徳島のグループ病院からヘルプで薬剤師さんが来てくれていたわけですか。

そうです。それが、私が思っていた病院のイメージと全然違って。しかも、けっこう臨機応変にいろいろものごとも決められていて、そこもギャップがあったところですね。

もともとグループ病院の仕事の仕方がそうだったと。

グループ病院の特長でもあると思いますし、慢性期医療だからこそというところもあるかもしれないですね。

  • これを私が決めるの?!
    病院の仕事で感じたカルチャーショック

    病院でのお仕事はどのように掴んでいったのですか。

    当初は、さっきお話ししたヘルプの薬剤師がいて、その方がまたすごくいい人で、ほとんどすべてを教えてくれて、そのやり方を吸収しましたね。

    実際に病院の仕事自体は、調剤薬局でのお仕事と比べて、どう違いを感じましたか。

    全然違いましたね。調剤薬局って、処方せんをもらって、処方された薬の量とかはもちろんチェックするんですけど、患者さんがどうしてこの薬を飲んでいるかとか、どうして処方量が増えたとか減ったとかっていうことは、患者さんに聞くしかないんですよね。逆に病院では、むしろ処方理由を医師から聞かれるんです。「これはもういらないんじゃない?」とか、「これどう思う?」とか。それがカルチャーショックで。「えっ、私決めるの!?」って(笑)。

    その判断に入り込むのは大変そうですね。

    処方せんを出す前に相談をもらうんですけど、最初は聞かれても答えられなくて「ごめんなさい!」って感じでした。なのでめちゃくちゃ勉強しましたし、勉強するうちに聞かれたことにも答えられるようになっていきました。「この量でいけますよ」とか「減らしてもいいと思いますよ」とか、そう言えるようになるまでに何年もかかりましたね。

    先ほど、急性期と慢性期の違いというような話もされていましたが、どういった違いがあるのですか。

    まず慢性期病院では急性期病院と比べて、入院期間が2カ月、3カ月と長いので、検査値を追っていきやすいということがあります。それと、1人の医師に対して患者さんの受け持ちが多いので、薬については薬剤師が任せられる部分も大きいです。さっき言ったような判断とか、副作用の疑いとか、血液中の薬の濃度を確認したりとかは、薬剤師の役割にもなってくるんですよね。

    任せられる範囲も大きいと、それは相当鍛えられそうですね。

    鍛えられましたね〜。いい意味でなんでも任せてもらえましたし、すごく感謝してます。任せられると無責任なことも言えないので勉強もたくさんしました。

    院内での立場も変わっていかれたのですか。

    主任になりましたね。と言ってもその時は人が足りてなくて、薬剤師は私しかいなかったんですけど(笑)。

次回:薬剤師が病棟で活躍できる環境を整えるために! 患者さんとスタッフが幸せになれることを目指します。

後編は2021/06/04公開予定

profile

平成医療福祉グループ 薬剤部 部長 秋田 美樹(あきた みき)

【出身】東京都東村山市
【資格】薬剤師
【趣味】読書、音楽鑑賞、ベタ鑑賞、御朱印集め
【好きな食べ物】今時じゃないタピオカ(フニャッとしたやつ)