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【いつもどおりをあきらめない】
園芸療法で心身にアプローチし、生き生きとした日々を目指す(後編)

取り組み2022.07.15
取り組み

当グループでは「絶対に見捨てない。」の理念のもと、医療・福祉の現場において「いつまでも自分らしく、いつもどおりの暮らしを送る」ことを重要なテーマとして、充実したサービスの提供に努めています。

当サイトでは、そうした取り組みについて「いつもどおりをあきらめない」をキーワードにし、グループ介護施設・病院における事例をご紹介してまいります。

 

今回は、グループが実施するサービスの一つ「園芸療法」について特集します。

グループ全体には13名※の園芸療法士が在籍し、各病院や介護施設などでさまざまな園芸療法を行っています。その一例として、「豊中平成病院」(大阪府豊中市)に所属する園芸療法士の松本 愛さん、畑岡 晴美さんに話を伺い、実際にどのような園芸療法が行われているのか、また、患者さん・利用者さんの日常生活にどのような影響がもたらされるのか、くわしくお伝えします。

 

後編は園芸作品づくり「クラフト」や園芸療法を通して見られる患者さん・利用者さんの変化などを中心にお届けします。

前編はこちらからご覧ください。

 

※常勤、非常勤を含む(2022年7月時点)

育てる楽しみを、作る喜びにつなげる「クラフト」

「豊中平成病院」と「ケアホーム豊中」で園芸療法として実施している、植物を使った作品づくり「クラフト」の特長は、患者さん・利用者さんが自分たちで育てた植物を活用することです。

患者さんや利用者さんがご自身で作った押し花が、クラフトの材料となります。
利用者さんが園芸療法士とともに進める、豊中平成病院のデイケア※でのクラフトの様子。新型コロナウイルス感染症対策を施し、パーテーションを設けています。

「育てて、花が咲いて実をつけて『きれいだね』で終わるのではなく、そこから広がりが持てることを大事に考えています」(畑岡さん)

 

「自分で育てたものが作品となり、『残せる』という点に満足感や達成感も得られているようです」(松本さん)

 

材料から自分たちで育てた作品だからこそ、患者さんたちの「誰かに見せたくなる気持ち」も大きくなるそうで、作品を同じ病室の患者さんや、ご家族などに見せることは、他者との交流を深めるきっかけづくりにもなるとのことです。

 

また、園芸療法士の2人は作業工程においても、患者さん・利用者さんそれぞれの身体の状態や得意なことにも留意し、その方に合った役割を柔軟に割り当てることもあるそうです。

素材を切る作業が得意だったり、花紙を広げる作業を好まれたり、みなさんの特性はそれぞれちがいます。みんなが同時に同じ作業を進めることが重要ではないので、一人ひとりのやる気を掻き立て、楽しみが増える時間となることを大事にして進めているとのことです。

 

※デイケア

利用者さんが可能な限りご自宅で自立した日常生活が送れるように、食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のためのリハビリテーションを日帰りで提供します。

デイケアの利用者さんが作られた、押し花を使ったクラフト例:名札作り。
ケアホーム豊中のクラフト例。入所されている利用者さんは、個別作品ではなく、合作の作品づくりがメイン。それぞれに得意な分野をお任せして制作を進め、約1カ月をかけて完成します。

リハビリテーション要素も大事にした「クラフト」を目指す

クラフトについては、グループに在籍する園芸療法士全体で作業の質向上を目指し、オンライン会議を2カ月に1回実施しているそうです。

最近の会議では、作品作りのテーマを一つ決めてオンライン会議上で園芸療法士の一人がクラフトの作業を実演し、それをみんなで確認して作業分析を行っているとのことです。

 

作業分析は、対象者が「健常者」と「麻痺などにより作業に問題のある方」の場合の2通りを想定し、一つの作業につき2回に分けて実施されます。

例えばドライフラワーを使ったスワッグ(ドライフラワーを束ねて、壁に飾れる形状にしたもの)の場合、工程にリボンを結ぶ作業がありますが、健常者であれば多くの方が問題なくできるこの作業も、片麻痺(身体の片側、左右どちらかに麻痺が見られる状態)の方ではご自身での作業が難しくなります。

会議では、その際に園芸療法士があらかじめリボンを作っておくことや、片方の手だけでも作業しやすくなるように針金でねじれる状態にしておくなど、どの作業も「こんな補助が必要になるのではないか」という視点を持って分析・検討していきます。リハビリテーションの要素を含めながら、質の高いクラフトの実現を追求しているそうです。

豊中平成病院でのクラフト作品例。

松本さんと畑岡さんは、普段のクラフトでもそうした意識を持って実施していると話します。

 

「片麻痺の方の場合では、片側だけに注意が向きがちなので、あえて麻痺している側に材料を置いて、『反対側に置いてますよ』とお声がけし、意識を向かせるよう促すこともあります」(畑岡さん)

 

患者さんたちに作品づくりを楽しんでいただくことだけではなく、身体の動きに働きかけることまで考えながら、それぞれの現場の園芸療法士たちが、日々取り組んでいることを伝えてくれました。

園芸療法だからかなう、五感へのアプローチ

ここまで具体的な取り組みを紹介してきましたが、豊中平成病院においては、園芸療法を導入してから、患者さんや利用者さんにはどのような影響があったのでしょうか。

 

「私たちは、主に園芸に携わる患者さんの姿しか目にしないため、日常での変化についてはリハビリスタッフから教えてもらうのですが、園芸療法が導入されてから、普段のリハビリテーションではできなかった動作や表情が見られるようになった、という話を聞きました。

例えば、コロナ禍前の話ですが、ベッドサイドまでお花を持っていくと、ある失語症の方が香りをかいで花の名前を突然発したり、普段のリハビリテーションでは前かがみになる動作が難しい方が、園芸に携わる時だけ前かがみになれたり、それまでまったく笑わなかった方が、植物を見てほほ笑まれたり、といったケースを耳にしています」(松本さん)

 

こうした影響が生まれた理由としては、「園芸が五感にアプローチできる」ことが大きいのではないかと2人は話します。

 

「園芸療法には、五感に働きかける要素がそろっています。土に触れたり、花を愛でたり香りを楽しんだり、草が風になびく音を聞いたり、自分で育てた農作物を食べることもあります。すべての感覚に広く働きかけることで、そのどれかが患者さんたちの心身に響きやすいのだと思います」(松本さん)

豊中平成病院のエントランス付近にて、利用者さんが散策中に植物に触れる様子。

また、園芸療法が持つどの特性が、患者さんの五感に作用するかわからないからこそ、園芸療法士は、その「仕掛け」を多く作っておく必要があると畑岡さんは考えています。

 

例えば植物を育てる作業一つをとっても、雑草を抜くことに意欲を掻き立てられる方もいらっしゃるので、私たちが完全に雑草を抜いてしまえば、その機会を失ってしまうことになります。そのため、そういった状況をあえて用意しておくことも必要です。

さまざまな可能性を想定したうえで、いろいろな機会を提供していければ、と思っています」(畑岡さん)

 

2人とも、園芸だからこそかなう多角的なアプローチを大事にして、日々の園芸療法に携わっているそうです。

青空農園のトマト。コロナ禍前は、農園の農作物を患者さんや利用者さんが食する機会がありました。ご自身で育てたものを食べることで、過去の記憶を思い起こしたり、食べる意欲が高まったりする場合があるそうです。
青空農園やケアホーム豊中のエントランスには、メダカや金魚などの生き物もいます。ある患者さんがメダカを見て、普段忘れていた記憶を呼び起こし、「メダカの学校」を歌われたこともあったそうです。

病院の園芸療法を介し、緑の力を地域にもつなげて

松本さんと畑岡さんは、病院や近隣施設の患者さん・利用者さんを対象に園芸療法を行っていますが、「本来、園芸療法の対象者は子どもから高齢者まで制限がなく、どんな状態の方にも働きかけるものだ」ということも教えてくれました。

 

「病院、施設の園芸療法は、もちろん患者さん・利用者さんのために行っていますが、この病院を介して、地域の方にも植物と触れ合うきっかけを提供し、多くの方の生活に潤いがもたらされれば、ということも考えています」(畑岡さん)

 

「この病院でも、都会育ちで緑に触れる機会が少なかったという高齢者の方も多く、園芸に触れて新鮮な喜びを感じる方もいらっしゃいます。同じように地域の方にも、その機会を用意できたらいいなと思いますね」(松本さん)

 

もともと豊中平成病院は、地域に根ざす病院として地域の方とのつながりを大事にし、コロナ禍以前は「地域健康教室」を開催していました。その一環として、押し花を使ったファイル作りやヒヤシンスの水耕栽培など、園芸療法士が担当するプログラムを地域のみなさんに体験していただいていたそうです。

いずれまた植物を介して地域の方とつながる機会を設け、植物に触れる喜びがより広がっていけば、という思いを抱いていると、2人は話していました。

 

植物の力と、園芸療法の可能性は、まだまだ広がりをみせそうです。

 

今後もグループでは、患者さんや利用者さん、そして地域の方の生活がより健康的なものとなるように、園芸療法をはじめとして、さまざまなサービスを進めていきます。

 

 

〈豊中平成病院〉

急性期病院での治療終了後、ご自宅や施設で生活する高齢者のみなさんの「在宅生活を支える」という目的のために設立されました。

PAC(Post Acute Care)急性期治療を終えた患者さんの受け入れ、SAC(Sub Acute Care)在宅患者さんの緊急受け入れ、長期療養機能病状の悪化により在宅生活の継続がどうしても難しくなった患者さんの受け入れ、これらの三つを中心に在宅支援へ積極的に取り組み、地域の在宅生活を支えます。

 

〒561-0807

大阪府豊中市原田中1丁目16番18号

06-6841-3262

豊中平成病院 サイト

 

 

〈ケアホーム豊中〉

介護老人保健施設ケアホーム豊中では、身体機能の低下のため家庭での生活に不安がある方々の自立性を尊重し、住み慣れた地域社会の中での安心した家庭生活を送っていただけるよう支援していきます。日常生活動作回復のためのリハビリテーションや、食事、入浴、レクリエーションなど、他の入居者の方とともに有意義な時間を過ごしながら、明るく楽しく家庭復帰を目指していただけます。

 

〒561-0807

大阪府豊中市原田中1丁目16番29号

06-6841-3668

ケアホーム豊中 サイト