取り組み お知らせ

【いつもどおりをあきらめない】
利用者さんの主体的な活動を促し
「できること・やりたいこと」を進めるデイサービスへ(後編)

 

当グループでは「絶対に見捨てない。」の理念のもと、医療・福祉の現場において最善のサービスが提供できるようにさまざまな取り組みを行っています。

当サイトでは、グループ介護福祉施設における取り組みの事例を「いつもどおりをあきらめない」をキーワードに、シリーズで紹介してまいります。

今回は、「ヴィラ南本宿」に併設するデイサービス「平成デイサービスセンター南本宿」(神奈川県横浜市旭区)をピックアップ。利用者さんの意思を尊重し、主体的な活動を促すことで、QOL(※)の向上を図っています。

後編では利用者さんたちの「農業をやりたい」という声から始まった「南本宿ガーデン」の活動を中心にご紹介。活動の特徴や、利用者さんたちに見られる変化などについて、職員の話をもとにお伝えします。

※ QOL:Quality of Lifeの略称であり、「生活の質」「人生の質」を示す。その人の生活や人生がどれだけ豊かで自分らしくあるかを測る、指標となる概念。

前編はこちらからご覧ください。

 

農業経験者を中心に始まった「南本宿ガーデン」

前編でお伝えした通り、平成デイサービスセンター南本宿では、「利用者さんの主体的な活動を促す」ことを大事に考え、お一人おひとりがご自身でやりたいことを選択し、その方に合ったサービスを提供しています。

そのようなデイサービスの日常において、利用者さんたちから「農業をやりたい」という声が挙がり、始まったのが「南本宿ガーデン」と名づけられた農業活動です。

 

担当する職員は、全員が農業未経験者でした。この活動をどのように進めていくか、まずは利用者さんたちと話し合うことから始めたそうです。平成デイサービスセンター南本宿のデイサービス管理者である関水 亜紀子さんに「南本宿ガーデン」の初動から様子を教えてもらいました。

 

平成デイサービスセンター南本宿のデイサービス管理者 関水さん。

 

「初めての会議は2022年の4月末に実施しました。農業経験者を中心に、未経験だけれども、やってみたいという方なども参加しましたね」

 

利用者さん主体の会議ということで、開始前はどのように進むのか職員のなかで不安があったそうですが、初回から利用者さんたちの意見が活発に飛び交ったとのことです。

 

「私たち職員を含め、未経験者の方は、経験のある利用者さんたちに『何を植えれば夏に収穫できるのか』『どのように育てればいいのか』など、すべて教えてもらいながら話し合い、利用者さんたちがご自身で育てたいものを決めていきました」

 

第1回目の会議の様子。

 

職員は、『何を育てたいですか』とみなさんの会話を促すだけにとどめ、会議は農業経験のある利用者さんたちが自然にリーダー役を務めて進行し、スムーズに話し合いがなされたそうです。

 

「会議を通して、経験者の方の知識や経験に感心しました。それぞれに『この野菜を育てたい』という希望が出れば、『ここの土質ではこれが育ちにくい』『この場所なら、この野菜が育てやすい』という専門的な答えが出てるので、職員の私たちは、勉強になりました。

意思決定はすべて利用者さんに委ね、利用者さんたちで『南本宿ガーデン』の内容を作り上げてもらうように心がけましたね」

 

会議の結果、敷地内の一角に畑を設けるほか、プランターも用意して栽培することが決定。野菜は夏に向けてナスやピーマン、パプリカ、ミョウガなど数種類を育てることになりました。

 

南本宿ガーデンに並ぶプランター。

 

土を耕した畑のスペースもあります。

 

まずは種や苗を買いに行くために、希望する利用者さんたちに職員が連れ添い、一緒に出かけたとのことです。

 

「『買い物』は機能訓練の一環です。今回の農業でも、『買い物』だけを希望して参加される利用者さんもいました。普段の生活がデイサービスと病院の往復だけという方も多いので、どこかへ外出すること自体が刺激にもなるようです」

 

利用者さんたちが種や苗の買い物をする様子。

 

実際に苗を植えて育てる作業は、農業経験を持つ利用者さんが、みんなに指導しながら進めたとのこと。職員は必要に応じて利用者さんの動きをサポートし、利用者さんがご自身で手を動かします。

また、どの工程においても、希望者がやりたい時にだけ参加したそうです。

 

「毎回参加する方がいれば、『今日は寒いから外に出ない』という方がいたり、『農作業はしないけれど、畑の落ち葉拾いは手伝いたい』という方がいたりと、みなさん活動への関わり方はそれぞれでした。

もちろん、まったく参加しない方もいますが、『南本宿ガーデン』の畑は、室内から見えやすい場所にあるので、参加の有無に関わらず、野菜が育っていく様子を気にかける利用者さんが増えていきました。

日々の何気ない会話のなかにも『あのナス、大きくなったね』という農業に関する内容が増えて、気づけばみなさんの大きな関心ごとの一つになっていましたね。野菜をながめるうちに興味がわいて、途中から参加するようになった方もいらっしゃいましたよ」

 

農作業の様子。

 

 

収穫の時期を迎えると、利用者さん自らの手で収穫した野菜は、施設内で食したり、自宅に持ち帰られたりしたそうです。栽培から収穫までの記録は職員が写真に収め、施設内でみなさんの目につくところに掲示されています。

 

収穫の様子。

 

収穫した野菜を、畑の近くで食す様子。

 

廊下に貼られた「南本宿ガーデン」活動の記録。参加された方がご自身の写真を探したり、参加していない方も立ち止まってながめたりと、みなさん高い関心をお持ちです。

 

夏野菜の収穫を終えると、同様の工程で冬野菜の栽培・収穫も進行しているそうで、「南本宿ガーデン」は順調に継続されています。

 

 

「自分たちで決めたこと」だからこそ、意欲がわく

この農業活動を通して、利用者さんにどのような変化が見られたのでしょうか。関水さんに教えてもらいました。

 

「以前は施設内で、決まった活動を全員で同時に行っていたこともあったのですが、それと比較すると、今回の『南本宿ガーデン』ではみなさんの意欲に大きな違いが見られました。本当に楽しそうに取り組まれていましたし、みなさんが集まる場所には活気が感じられます。

やはり、『自分たちで関わると決め、自分たちで作り上げる』ということが、やる気につながるのだと思われます」

 

「南本宿ガーデン」におけるリーダー的な存在のお二人。デイサービスで農業が始まってから「ここに来るのがすごく楽しい!」と話されていました。

 

「この活動のように、『今日は農業をやる』という目的を持ってデイサービスに来ていただくのは大事なことですね。そして、その目的を実行に移せる環境を用意しておくことが、主体性を引き出すことにつながるのだと、担当の職員みんなで実感しています。

そのためにも、利用者さんお一人おひとりのことをよく知ることは何より大切だなと、改めて思いました。これからも一人ひとりの『やりたい』の声を引き出せるように努めたいと思います」

 

職員は利用者さんの契約時はもちろん、通所が始まってからも、利用者さんとの日々の会話から日常生活の様子や興味のあることなどに注意して耳を傾け、それぞれの特性を知ることを大事にしているそうです。

 

 

活動の選択肢を増やし、利用者さんが自発的に輝けるデイサービスへ

最後に、デイサービスにおいて「利用者さんの主体的な活動」を促進する介護福祉事業部 通所部門管理者 前田 浩太郎さんに、これから力を入れたい取り組みについて教えてもらいました。

 

介護福祉事業部 通所部門管理者 前田さん。

 

「今後はさらに、利用者さんがデイサービスに通うことで、より『日常の選択を取り戻す』ことができるようにしていきたいと考えています。

高齢者の方は、身体機能や家族背景などの理由から、日常生活のさまざまな活動において『できること・やりたいこと』の選択肢が狭まる傾向にあります。だからこそ、デイサービスの空間では過剰な制限を設けずに、活動の選択肢を増やせる環境を整えていきたいですね。

 

そしてもう一つ、『利用者さんが輝ける機会』を多くしたいと考えています。

デイサービスの場では利用者さんがサービスを受けて、職員へ『ありがとう』と言葉を発するケースが多く見受けられます。それは良いことなのですが、『サービスを施す側、受ける側』という関係性だけが成り立つ状況は、見直す必要があると思います。

利用者さんはどの方も、人生のなかでさまざまな『経験』をお持ちです。今回の農業活動における経験者の方のように、ご自身の知識や技術をデイサービスで発揮できれば、ほかの利用者さんや職員たちから『ありがとう』を言われる側になる機会が増えると思います。その時の利用者さんは、きっと輝いていますよね。

 

 

先述の超高齢化社会の話に通じますが、これからの介護の世界では職員が利用者さんへ一方的にケア・サービスを提供する形式だけでは成り立たなくなります。そうした観点も含めて、利用者さんと職員の間に双方向の関係性を生み出し、利用者さんが自発的に輝けるようなデイサービスを目指したいと思います」

 

平成デイサービスセンター南本宿は、今後も利用者さんの日々の生活がより良くなるよう、さらに充実したサービスの提供に努めていくそうです。

 

 

 

 

〈平成デイサービスセンター南本宿〉

平成デイサービスセンター南本宿は「その人らしさ」を支え、誰もが”ここに通いたくなる”デイサービスを目指しています。そのために、利用者さんの自己決定を尊重し、ご自身で選んでいただけるサービスの提供を心がけています。

理学療法士が個々に合ったプランを立案する機能訓練や入浴、食事、余暇活動などをご用意し、ご自分らしく楽しく過ごせるようにお手伝いします。

 

〈ヴィラ南本宿〉

ヴィラ南本宿は、特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービスの三つの介護保険サービスを提供しています。

「安心」「安全」「笑顔」をキーワードとして、家庭的な雰囲気のなかで、利用者さんの自立した生活を支援し、身体機能の維持、生きがいづくりのお手伝いをいたします。

 

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