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工夫次第で可能性はもっと広がる!
コロナ禍で実施されたデイサービスのレクリエーション(前編)

取り組み2022.01.19
取り組み

介護施設やデイサービス(※1)で提供されるレクリエーションは、主にゲームや体操などのさまざまな活動を集団で行うものですが、コロナ禍では従来通りの実施が難しくなっていました。
しかし、当グループでは、状況に対応した企画やオンラインの導入、既存の内容のブラッシュアップなどに努め、新しいレクリエーションを生み出し、実践しています。

当グループの介護福祉事業部では、2021年11月にデイサービス研修(※2)を実施し、優れた取り組みを各現場で生かせるようグループ内で共有されました。
今回の記事では、その研修で取り上げた事例と、実際のレクリエーションの現場の様子を、前・後編に分けてご紹介。当グループのデイサービスにおいて、レクリーションのさらなる可能性を模索する姿をお届けします。

※1:デイサービスとは、食事や入浴などのほか、レクリエーションや健康チェック、機能訓練などを提供する、高齢者向けの日帰りサービスです。

※2:2021年11月25日にオンラインにて実施。当グループの介護福祉事業部では、グループで実施しているレクリエーションについて、定期的に報告会を行っています。今回の研修は、ここから派生して実施されたものです。

アイデアと工夫が満載! 5施設のレクリエ―ション事例

研修時に、コロナ禍に対応した優れた企画として取り上げられた、5事例をご紹介します。

平成デイサービスセンター渭北「四国徳島バス巡り」

徳島県に所在するこちらのデイサービスでは、例年「阿波踊り」を楽しむイベントとして、阿波踊り会館へ遠足に訪れていました。人気を集めていたこの行事が開催できなくなったため、その代替案として「施設にいながら観光気分を味わえる、仮想のバス旅行」が企画されました。
「徳島の観光名所30選」を挙げ、各名所のYouTube動画を上映。利用者さんにどの名所が上映されているのかを当ててもらう内容を盛り込んだバスツアーです。よりリアルなツアーの雰囲気を演出するため、職員が添乗員やバスガイドのように話しかけながらアテンドしたり、名所に因んだ銘菓も堪能してもらったりと、旅行気分を高めさせる工夫が光ります。
利用者さんは仮想の旅を楽しみながら、過去に名所へ訪れた思い出話などにも花を咲かせ、好評を博したそうです。

名所30選を地図を使いながら紹介する様子
名所の見どころをポイントを押さえて紹介
観光名所のYouYube動画を上映し、利用者さんにどの名所かを当ててもらいます

<平成デイサービスセンター渭北>
〒770-0805
徳島県徳島市下助任町3丁目34-2
(渭北小規模多機能センター内)
TEL:088-602-1330
https://ihoku.grouph.jp/

平成デイサービスセンター神奈川「ダービー七夕記念(G1)」

コロナ禍でも、利用者さんが周りと一体になって楽しめるレクリエーションを目指して考案された本企画。内容は、スタッフ同士がお手玉入れやイス取りゲームなどで競い合い、利用者さんはその勝敗結果を予想しながら、観戦を楽しむというものです。
予想をさらに盛り上げるため、オリジナルの「ヴィラ通貨」を作るという趣向も凝らされ、全レースが終了した時点で通貨を一番多く持っている人が優勝する仕組みです。スタッフたちが真剣勝負を披露するなか、利用者さんたちも職員を懸命に応援し、熱い戦いが繰り広げられました。勝つと予想したスタッフを直接助けられるような仕組みも一部取り入れ、ゲームをさらに楽しむためのユニークな工夫もなされています。
刺激のあるレクリエーションとなったことはもちろん、利用者さん側がスタッフを応援するという普段とは違うスタイルを経験し、豊かな関係性を築く機会にもなったそうです。

職員が手作りしたヴィラ通貨。参加者一人あたり20,000ヴィラが配布されます
レース前、どのスタッフが勝つかを予想。勝敗に応じてヴィラ通貨がもらえます
職員が競うレース項目は「椅子取りゲーム」「お手玉入れ」「借り物競争」。職員が思わずムキになるような構成とし、その場を盛り上げていました

<平成デイサービスセンター神奈川>
〒221-0864
神奈川県横浜市神奈川区菅田町19
(ヴィラ神奈川内)
https://www.kanagawa.tokuyou.jp/

富洲原通所介護センター「手づくりおやつイベント」

コロナ禍以前のレクリエーションでは、利用者さんとスタッフが協力しておやつを手作りしていましたが、現在は感染対策を考慮して、新しい形にシフトしました。
おやつ作りは職員のみが行い、出来立てのものを利用者さんに提供。さらに“食”の楽しみを高められるように、その場の雰囲気作りに、より力を入れるようになりました。
メニューは季節感を感じられるものを選び、おやつを提供する場は“店”のようにセッティング。職員は、おやつのテーマに合った衣装をまとい、BGMも流すなど随所に工夫が施されています。
また、利用者さんには、イベントに「参加する楽しみ」を感じていただくことも重視しています。お店の看板作りに協力してもらうほか、事前におやつ名を伝える際も、利用者さんになじみのないおやつであってもあえて説明をせず、当日まで期待と想像を膨らませてもらいます。
日常と違う空間に触れ、五感を使って楽しめるレクリエーションとなり、利用者さんからは大好評とのこと。スタッフも「次は何を作ろう」と楽しみにしているそうです。

お店のような雰囲気作りに力を入れ、普段とは違った空間を楽しんでもらっています
食べ物は量や大きさが選べます。その場で焼かれる音や香ばしい匂いが広がり、自宅では感じられない雰囲気が味わえると好評でした

<富洲原通所介護センター>
〒510-8016
三重県四日市市富州原町2番80号
https://www.yokkaichi.tokuyou.jp/

平成デイサービスセンター足立「にっぽん全国お取り寄せマルシェ」

本企画は、当グループ介護福祉事業部 サービス企画課との連携によって生まれたものです。レクリエ―ションの目的は、利用者さんに食の「おとりよせ」気分とともに「選ぶ楽しみ」も味わっていただくことです。
東京都内のアンテナショップ(今回は日比谷しまね館)と施設をオンラインでつなぎ、ショップスタッフが利用者さんへスクリーン越しに商品の特長や魅力を伝えます。その説明を受けて利用者さんがお好みのものを一つ選ぶと、職員が施設へ商品を届け、その日のおやつの時間に楽しむことができます。さらに今回は、おやつを食べながら島根県の郷土芸能「石見神楽」の映像を鑑賞し、荘重かつリズム感あふれるおはやしと共に、旅行気分も味わってもらいました。
オンラインを介したレクリエーションは、利用者さんにとって、ご自身がスクリーンに映し出されていることに新鮮さを感じられたり、離れた場所とのコミュニケーションを楽しまれたりといった面からも、好評だったそうです。職員からも「また他の県のアンテナショップとつないで実施したい」と、意欲的な声が挙がっているとのことです。

施設とアンテナショップをオンラインでつなぐ様子
メニュー表を見ながら、アンテナショップにいるスタッフの説明を聞いて、商品を選びます
おやつの時間に提供する際、和風のトレイに乗せるなどセッティングにもこだわり、特別感を演出

<平成デイサービスセンター足立>
〒121-0836
東京都足立区入谷1-8-15
(ケアホーム足立内)
https://adachi.tokuyou.jp/

鷲敷デイサービスセンター「健康教室 with コロナ」

コロナ禍以前に、定期的に実施していた健康教室を、十分な感染症対策を講じ、かつニーズに合うテーマを設けて継続。利用者さんが健康について楽しみながら学びを深めることを目的としたレクリエーションです。

事例に挙げられたのは、2021年9月に実施された「コロナ禍対策」をテーマにした教室。今、必要な情報と感染症対策をわかりやすく伝えるために、職員自らが学びも笑いも盛り込んだ構成で、劇を交えた教室を開きました。劇中は利用者さんが飽きないよう、アドリブを利かせた動きも取り入れ、都度その場を盛り上げます。最後には、資料を渡して「おさらい」ができるようにするなど、コロナ禍に役立つアイデアが光りました。
何より、この健康教室で注目したいのは、スタッフそれぞれが役になりきって真剣に演技に取り組んだり、凝った衣装を自前で用意したりと、手間暇を惜しまぬ努力と工夫が見えること。こうした熱意があればこそ、利用者さんが夢中になるレクリエ―ションの実現につながると感じさせられました。

スタッフがそれぞれの役になりきり、劇を披露する様子
ワクチン接種の呼びかけや、基礎疾患がある方への一層の注意喚起などが劇に盛り込まれています
大事なポイントには「ココ大事マン」を登場させ、めりはりを利かせています

<鷲敷デイサービスセンター>
〒771-5203
徳島県那賀郡那賀町和食郷字八幡原5
https://wajiki.rouken.jp/

「これをやってみたい」という想いを持ち、
職員自身が楽しむことが大事

では、デイサービスにおけるレクリエーションでは、どのような姿勢を大切にしていくべきなのでしょうか。
2021年11月に行われたデイサービス研修では、当グループ介護福祉事業部 前川 沙緒里部長が、総評として、次のように話しました。

「今回紹介された施設に共通して言えるのは、何より『職員が率先して楽しんでいること』です。もちろん、みなさんは利用者さんに楽しんでいただくことを第一に考えていますが、職員自らが楽しんで準備し、当日に臨んでいなければ、利用者さんも熱中して取り組めないのではないかと思われました。

また、事例の中から『コロナ禍だからこそ生まれたつながり』も見受けられました。普段は施設内で完結する内容を考えると思いますが、レクリエーションは施設の中だけでやらなければいけないものではありません。3施設合同のオンライン運動会(後編で紹介)や平成デイサービスセンター足立の『日本全国お取り寄せマルシェ』は、オンラインを介して施設の外とのつながりが生まれた例です。
ぜひこちらを参考にして、オンラインの使用に関わらず外部の方や地域の方ともつながってレクリエーションを行う、という視点も持っていただけたらなと思います。
今後『こんなことをやりたい』という企画があれば、難しい点はこちらに相談していただき、どんどん提案してもらえればと思います。何より、実現させたいものがあるという、その想いが大事です。思い切ってスタートを切り、レクリエーションの可能性を広げていただけたらと思います」

本記事は後編へ続きます。
こちらからご覧ください。
【工夫次第で可能性はもっと広がる! コロナ禍で実施されたデイサービスのレクリエーション(後編)】