ひとプロジェクト 第69回【後編】平成横浜病院 院長/程塚 明先生

平成横浜病院

院長

程塚 明 先生

Hodozuka Akira

「絶対に見捨てない。」の理念に共感し平成横浜病院へ
医療や福祉の網から漏れ出る人を1人でも減らしたい

平成横浜病院の院長、程塚明先生の後編です。先生が脳神経外科医から、在宅医療への転身を決意するまでを伺った前編。後編では、実際に関わった在宅医療のお話や、平成横浜病院へ着任するに至った流れを伺いました。また、この病院で目指すべきことや、先生が力を入れる在宅医療から、地域の医療・福祉連携への想いについてもお話を聞くことができました。ぜひご覧ください!

  • 在宅医療を通じて
    患者さん個人個人の人生に触れる

    長く携わってきた脳神経外科の道から、いざ新たに在宅医療に触れてみていかがでしたか。

    法人の本部がある東北で3週間くらい研修をさせてもらったんですが、当初は、けっこう大変そうだなと思いました。今まではずっと病院にいて、手術となったら夜中でもやりますし、当直の時は48時間くらい勤務はしますけど、割とオンオフがあったんですよ。

    今度は家にいたとしても、呼ばれることがあると。

    それから、研修を終えていざ仕事を始めようという時に、それまでいた看護師さんやソーシャルワーカーさんが、タイミング悪く辞めることになってしまって。僕を含めて在宅医療の未経験者ばかりが残って、スタートすることになりました(笑)。

    新しい門出としてはちょっと不安ですね。

    時々本部から応援部隊は来てくれるんですけど、当然普段は私たちだけでやらないといけませんから。3週間の研修で見たことを思い出しながらやって、わからないところは地域のケアマネジャーさんや訪問看護師さんに教わりながら。最初は怒られ怒られやってました(笑)。

    怒られることもあるんですね(笑)。

    そうやっているうちに、私たちなりのスタイルができていきましたね。近くに何年もやってる先輩方もいますし、研究会もありますので、そこでお話を伺って、どういう気持ちでやっているとかもお聞きしながら。

    どういった患者さんが多かったですか。

    大学病院や大きい病院が多い地域だったので、7割くらいはがん患者さん、特に末期の方、お看取りが多かったです。

    実際に取り組んでみてどのように感じましたか。

    大学病院や関連病院にいた時は、手術してから退院までが早いですから。その後どうなっているんだろう、っていうのはもともとずっと気になっていたんです。

    そういった病院では、多くの患者さんを手術して救うことが、まず大事な役割ですからね。

    在宅医療では、患者さんがご自宅に帰ってからもずっと密着して関われますし、お話もじっくり聞けますから。それまでの関わり方とは違って、患者さん個人個人の人生を間近でみることができていい経験になりましたし、医師として良かったなと思っています。

  • 「絶対に見捨てない。」医療に関わるため
    平成横浜病院へ

    この平成横浜病院にはどういう経緯で移られたのでしょうか。

    6年くらい在宅医療に携わってきたんですが、ひとつは、ある程度仕事が確立できてきたっていうことと、訪問の仕事にちょっと疲れたところもありました。そこに後任が入って来て、落ち着いて来たんですね。

    ご自身のなかで、ひと段落というタイミングがあったと。

    そこで、知り合いの方を通じて、このグループから「病院のマネジメントに関わりませんか」と声をかけてもらったわけです。

    平成医療福祉グループについてはご存知でしたか。

    グループの世田谷記念病院は、その診療所と患者さんの行き来もありましたし、退院前カンファレンスのために行ったこともありました。世田谷記念病院が在宅医療部を立ち上げる時に、私がいた診療所に見学に来られたこともあったんですよ。

    そこで縁もあったわけですね。病院の仕事にまた戻ることについて、どのような気持ちで決断されたのでしょう。

    最初はお受けするか迷ってたんですけど、グループの「絶対に見捨てない。」という理念を見て、気持ちがガラッと変わりましたね。

    どういった意識でしょうか。

    以前病院で仕事をしていた時も、見捨てるということは当然ないんですが、在院日数やベッドの都合で、別の病院に移ってもらわざるを得ない、ということはあったわけです。

    もう少し手をかけたいという気持ちがあっても、状況がそれを許さなかったと。

    だからこそ「絶対に見捨てない。」ということを掲げる医療ってどんなものなんだろうと、見てみたい気持ちになりました。あとは、私の今までのキャリアからすると、慢性期病院というのが経験がないところだったので、これをやると全部のピースが埋まる、というか(笑)。でも実際に関心があったんですね。それで、やってみようと思ってお受けしました。

  • グループ理念を具現化したい
    もっとリハビリテーションを病院の柱に

    平成横浜病院は、今まで程塚先生が働いてきた急性期の病院とは違うタイプの病院だと思うのですが、実際働かれて印象はいかがですか。

    面白いですね。それなりに歴史もあるところなので、その良し悪しもありますし、グループとしてのやり方もありますし。それをどう調整していくかっていうのが、興味深いです。

    リハビリの職種と関わることもそこまで多くなかったのではないでしょうか。

    ほとんどなかったですね。大きい病院だと、リハビリカンファレンスがあって、リハビリスタッフと話す機会はありましたけど、それでも月に1回くらいでしたから。ここみたいに密着して話すことはなかったですね。

    関わり方もだいぶ変わってきたと。

    個々の患者さんについて、個々の療法士と話す。カンファレンスにしても、一人ひとりの患者さんについてやっていくっていうのもあまりなかったですね。その点では今までと密着度が違いますよね。

    実際に院長として立たれたのは着任から半年ほど経って、今年(2021年)の4月からと伺いましたが、院長となって変わったことはありますか。

    そんなに大きくは変わってないかもしれないですね。でも、院長と名が付くのは今回が3回目なんですけど、やりがいは特に今まで以上に大きいかもしれません。実績がすごく見えてもきますので、それはプレッシャーでもあるけど、同時に励みにもなっています。

    現在はどのようなルーティンでお仕事をされていますか。

    総合内科の外来を週に2回、あとは発熱外来も2回担当しています。内科の方は、神経系の患者さんはよく担当しますよ。それに加えて、在宅医療も週に2回。そういった診療に関わりながら、院長として会議や委員会に出席したり、事務系の仕事をやったりしています。

    先生として、現在のやりがいはどんなところにありますか。

    グループの理念でもあるし、自分も関わりたいと思った「絶対に見捨てない。」医療を、どこまで具現化できるか、ということです。まだ全部はできてないと思いますけど、もっと具現化して、職員みんなで共有できたらいいですよね。全員が同じ方向を向くって大変だと思いますけど、そういう流れを作っていくのが、自分の仕事かなって思ってます。

    今後の展望はいかがですか。

    病院の機能として、リハビリをひとつの大きな柱に、もっとうまく連携していきたいですね。そのために私は環境を整備しないといけないですし、人材なり設備なり、考えないといけないなと思います。

  • 医療や福祉の網から漏れ出る人を
    1人でも減らしたい

    もともとマネジメントを依頼されて着任されましたが、2020年には程塚先生が中心となって、在宅医療部門をスタートさせたそうですね。

    病院の運営会議の時に、「外来に通っていたけど、来るのが難しくなって、そのままになっている患者さんがいる」という話が出たんですね。なかなかそのフォローができていなかったそうなんですが、病気によってはそのままにしておくと危険なものもありますから。

    そこで、経験のある程塚先生が担当するということに。

    「そういう患者さんは、訪問したらいいですよ」って僕が言ったら、「そういえば先生、在宅医療やってましたよね」って言われて、「あっしまった!」って思ったんですけど(笑)。経験があるのが僕だけだったので「じゃあやりましょう」と。もともとは、一般的な在宅医療とは違って、うちの外来に通っていたけど来れなくなってしまった患者さんをフォローします、っていうことで始まりました。

    基本となるのは、平成横浜病院の患者さんへのフォローアップということですね。今後は拡充もお考えですか。

    今は私ができる範囲でやっていますが、もちろん今後スタッフが増えればそれも考えています。専任できる人が増えれば、より回る頻度が増やせますから。時々、地域のクリニックからも患者さんを診てほしいとお願いされることがあるんですが、そういったこともより対応しやすくなります。

    地域の在宅医療の診療所との棲み分けについてはいかがですか。

    よく、こういう話になった時に「パイの取り合い」っていう言い方をされる時がありますけど、取り合うのではなくて「いかにパイを広げるか」ということを考えるのが大事だと思うんです。

    医療において「パイを広げる」とはどういう意味ですか。

    先ほども、病院に来れなくて困っている方がたくさんいるという話が出ましたけど、それは、平成横浜病院に限らないわけです。今は独居とか老老介護が増えてますから、人手の問題であったり金銭的な問題もあるかもしれない。福祉はそういった方にも働きかけてますけど、医療は病院で待っているだけでいいのかと。福祉と同じように、医療も手を差し伸べていかないといけないんじゃないかと思っています。

    実は見えにくいところに医療を求める声があると。

    そこに福祉のサービスは届いているけど、そのなかに実は医療を必要としているという方がたくさんいるんですよ。

    今は向こうから働きかけがないと、病院側からはそれが見えない。

    来れるのであれば、きっと病院に来てくれていますからね。そういった方については、地域のケアマネジャーさんや介護士さんが情報を持っていることが多いので、それがもっと把握できるようになれば、私たちがそういうところに訪問できると。ご自宅で療養している人のなかには、医療がちゃんと手を差し伸べて治療すれば、症状が良くなるとか、仕事に戻れるとか、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)を改善できるっていう人がいるんです。だからみんなでパイを奪い合うのではなくて、広げていかないといけません。

    行きたくても病院に行けない人や、実は医療が必要だけど届いていない、という人を、地域の医療機関でカバーしていくわけですね。

    今までは空き地があちこち多かったので、いかにその空き地を埋めていくか。そのために医療として何ができるかを考えていった方がいいんじゃないかなと思います。院内も充実しないといけないですけど、外とのつながりの充実も大事ですよね。網の目状に全ての人をカバーできるように、病院同士もみんなくっついていけば良いなと思います。

    地域のなかで、医療も福祉も連携していくことが大切ですね。

    医療や福祉から漏れ出る人を1人でも減らすっていうことが大事じゃないですかね。この病院で全てはできないにしても、そういう風を起こしたいっていうことは思いますね。その時に「絶対に見捨てない。」という理念は大事だと思うんです。

大好きなのは
横浜が地元の、あのバンド

ではプライベートの話をお聞きします。最近、お休みの日はどうお過ごしですか。

疲れて寝ていることが多いですね(笑)。でも運動不足になっちゃいけないんで、とは言えそこまでできないので、奥さんと散歩したり、あとはジムにも行ったり。営業時間が今は短くなっちゃっているので、週1回でも2回でも、行ける時は行っています。

コロナ禍になって、やはり過ごし方は変わりましたか。

以前よりは外に出なくなりましたね。前は奥さんの買い物に付き合うとか、たまに、コンサートとか映画とか、お芝居も見に行ってましたよ。

コンサートは、どういうものが特にお好きですか。

クラシックも聞きますし、あとはクレイジーケンバンドが好きですね〜。もともとクールスとか、矢沢永吉とかキャロルからくるんですけど。

やはり矢沢永吉やキャロルは当時大流行していましたか。

当時はああいうワルっぽいっていうのが良かったんだろうね、ちょっとアウトローというか。

コロナ禍以前はそういったコンサートもよく見に行かれていたと。

それが、北海道にいた時はクレイジーケンバンドのチケットも割と取りやすかったんだけど、神奈川に来たら全然取れなくて(笑)。北海道では1、2列目で見れてましたから。

横浜が地元ですし、競争率が高いのかもしれません。今後やりたいことはありますか。

高校の時の友達と、テニス部の仲間とテニスやろうとは言ってますね。あとは、年に一回、みんなで集まってのキャンプ。「今年こそ」って言ってて、先々週に予定はしてたんですけど、残念ながら。

あっ、今回キャンセルになってしまったんですね、残念…。

それに行きたいっていうのがひとつですね。あと、ちょっと無理かもしれないけど、山登り。やったことはないんですけど、今後は行ってみたいなって。

では最後、みなさんに、好きな食べ物をいつも聞いているんですけど。

食べ物、なんだろうな…。好きだけど全然食べれてないのがカレー。

どうして食べられないんですか。

なぜかいつも食べたい時に当たらないんです。病院の食堂でも、カレーが出る日はなぜかいつも忙しくて食べられない(笑)。

(笑)。求めているのに得られないと。

ただ、カレー食べると太っちゃうからね、食べすぎちゃって(笑)。

前編を読む

profile

平成横浜病院 院長 程塚 明(ほどづか あきら)

【出身】埼玉県さいたま市
【専門】脳神経外科
【趣味】音楽鑑賞、舞台鑑賞など
【好きな食べ物】カレー(食べたいのになかなか巡り会えない)

病院情報

神奈川県横浜市戸塚区戸塚町550番地

医療法人横浜 平成会
平成横浜病院

内科・神経内科・呼吸器内科・消化器内科・循環器内科・外科・泌尿器科・皮膚科・整形外科・リウマチ科・リハビリテーション科・歯科・歯科口腔外科・麻酔科・脳神経外科地域に根ざした病院として、一般病棟、地域包括病棟を備え、回復期リハビリテーション病棟を新設しました。さらに救急告示病院として24時間365日、患者さんの受け入れを行っています。2018年6月には、総合健診センターがリニューアル。地域の健康を支えていけるよう努めています。