ひとプロジェクト 第68回【後編】平成横浜病院 薬剤部 係長/瀧田大輔さん

平成横浜病院

薬剤部 係長

瀧田 大輔 さん

Takita Daisuke

もっと高めたい、薬剤師の発信力!
薬局から飛び出し、病院内でさらに頼られる存在に

平成横浜病院の薬剤部で係長を務める、瀧田大輔さんの後編です。以前は、人員が少なく苦労していた平成横浜病院でしたが、瀧田さんが体制強化のために異動し、その人員募集と業務改善に取り組みます。後編では、そこでの取り組みの詳細や、力を入れるポリファーマシー対策、また今後目指すべき薬剤部の形についても伺いました。ポジティブに仕事に取り組む瀧田さんの様子が垣間見える後編、ぜひご覧ください!

  • 採用活動、業務改善に力を入れながら
    スタッフみんなで薬剤部を立て直す

    もともとグループの緑成会病院で働かれていた瀧田さんですが、この平成横浜病院にはどんな経緯で移ってきたのですか。

    今でこそ10人以上薬剤師がいるんですが、一時期は本当に薬剤師が少なくて。なかなかスタッフが定着しない時期が続いていて、業務もうまく回っていなかったんです。

    ではグループ薬剤部の業務支援チームとして仕事をするなかで、平成横浜病院 薬剤部の立て直しに動いたと。

    業務を改善したいけど、人が少ないからなかなか手が付けられない、という状態でしたから、自分が入った方がいいなということで、移ることになりました。

    当初からいた緑成会病院を離れる寂しさみたいなことは。

    それはありましたよ! 家からも近かったですし、楽しさもありましたから。最初は1年くらいで立て直して戻ろうと思っていましたけど。

    ある程度軌道に載せたらまた戻ろうと。

    そうですそうです。それで今3年目に入りました(笑)。でもこちらの仕事はこちらの仕事で楽しんで取り組んでいます。

    実際移られて、どんなことから取り掛かったのですか。

    まずは新しいスタッフを入れながら、さらに業務を改善して、そのスタッフたちに定着してもらう、っていうことを1、2年でやろうと。

    新しく立ち上げるような感覚でしたか。

    そうですね。しかも、私がというよりは、みんなで一緒に立ち上げていこうという形で、変えていきました。

    そこで実際にスタッフさんを増やすことができたわけですか。

    非常勤も、常勤の方も入ってくれるようになりました。一昨年は新卒のスタッフが3人も入りました。

    新卒の方も入られたんですね。学生のみなさんに対しても積極的にリクルート活動を展開したんですか。

    はい、学校訪問をして、説明会をやらせてもらって。今まではスタッフが個々で動いていたんですが、ここ何年かで、リクルートチームがしっかり機能するようになったので、グループとしてリクルート活動ができるようになって、大学とのやりとりもかなりスムーズになりました。

    学生のみなさんにもアピールできる土壌ができたのですね。

状況が整ったことで
今後は中身を充実させていく

取り組みの結果、現在は平成横浜病院も人員が充足してきたと。

今はだいぶ人が揃ってきたので、次は中身の問題ですね。今度はさらに質を高めていこうと思っています。

外枠ができたところで、今度は中身を充足させていくわけですね。

患者さんへの服薬指導や、ポリファーマシー(※)対策をもっと積極的に、ということや、今は薬剤部から他部署への発信というのがまだ少ないので、今後1年かけて増やしていけたらなと。

※薬物の相互作用を減らすため、6種類以上の服薬を「多剤内服」として減らす取り組み。くわしくは下記ページおよびインタビューををご覧ください。
平成医療福祉グループ 薬剤部の取り組み
ひとプロジェクト 平成医療福祉グループ 薬剤部 部長/秋田 美樹さん

どういった発信ですか。

「こんな薬を飲んでいる時はこういうことに注意してください」とか「この症状がなければこの薬は止めても大丈夫ですよ」とか、薬剤師が持っている情報を、他職種が見てもすぐわかるように、カンファレンスなどで伝えていきたいと思っています。

発信については、瀧田さんが薬剤師さんの背中を押しているというような感じですか。

そうです。今もやってくれているので、さらにそのレベルを一定に揃えていけたら良いなと。

瀧田さんは、人に物事を教えることや、人事的な管理の仕事については、どういう意識で携わっていますか。

親が教師だったこともあって、教師になりたいという気持ちも実はあったんですよ。それもあって、教えること自体は嫌いじゃないですね。教えられる側がどう思っているのかはわからないですけど(笑)。ただ、指導や人の管理と言っても、キャリアとしては私より上の方もいますし、こちらが教えてもらうとか、一緒にやっていくということを意識しながらやっています。実際、私が知らないことも多いですから。

立場上は管理者ですけど、管理者然としてドンと立つというよりは。

もうフラットな目線でやっているイメージです。その分、みんなからは言われたい放題ですけど(笑)。

(笑)。もちろんそれは責められているという意味ではなく、和気藹々ということですよね。

そうですそうです。小さい問題は日々あったとしても、それも解決しながら進めていると思います。

  • 新人スタッフとも一緒に進める
    ポリファーマシー対策

    グループ薬剤部の特長として、ポリファーマシー対策があると思うのですが、新卒の薬剤師さんにはどのように指導を進めているんですか。

    最初から「この薬を減らしてください」と、医師に意見を伝えるのはなかなか難しいので「まずは病棟に溶け込んでいって、そこからこういう話をしてみよう」と伝えることが多いですね。だんだんと「こういう症状があるので、この薬は必要ないかもしれません」と、提案できるようになっていきます。

    やはり慣れていくまでは提案するのは難しいものですか。

    特に1年目では、まだ知識も少ないですので、「こういう時にはこう減らせるよ」と、先輩たちが教えてあげたり、逆に「こんなに薬を飲んでるんですけど」って相談に来てくれたり。経験しながら徐々にやっていってもらってますね。

    新卒の方もみなさん興味を持って取り組まれているのですか。

    興味はみんなあります。ただ、自信がないんです。

    経験を積んだ医師に対して、新人の立場で発信するのは、最初は勇気が要りそうですね。

    6年間みっちり薬について学んできているのは薬剤師だけなんで、私たちの方がくわしいはずではあるんです。なので、必要があれば積極的にお伝えしていかないといけないと思っています。もちろん、減らすことだけが目的ではなく、足りないものは足していくこともありますし、あくまで適正化っていうことで進めていってますね。適切な処方につなげることを目的にしています。

    ただ減らすだけを目的化するのではなく、あくまで適切な処方を目指していくと。

    そこがメインですね。そのなかで、あわよくば処方する薬が6剤以内になればいいよね、ということで取り組んでいます。

    瀧田さん自身は、たとえばポリファーマシーのことは、グループに入る前から知っていたのですか。

    いえ、急性期病院にいる時は、薬を減らすという概念を持っていませんでしたね。緑成会病院に入ったら、6剤以上は処方しないように、っていうルールがあって、「そうなんだ」って(笑)。だから最初は減らすことに違和感がありました。

    ポリファーマシー対策についてもだんだんと浸透してきて。

    ここ5年くらいで、薬を減らすことに対して、診療報酬の加算がつくようになったんですね。そこからさらにいろいろな病院で取り組みが広がったようですし、大学の講義でも、ポリファーマシーという言葉が出ることが増えたみたいです。

    加算も後押しとなって、より広がってきているのですね。

    ただ、実際に取り組むとすると、急性期病院ではなかなか時間がないので慢性期で取り組むことが多いと思うんですが、しっかり取り組めている病院は今でもまだ少ないと思います。

    徹底した取り組みはこれからになっていくと。グループ内ではいかがですか。

    やはり病院ごとで実施状況に多少の差はありますね。そのなかで、グループ内では博愛記念病院は取り組みが早かったので、かなり浸透しています。もう20年くらいはやっているんじゃないですかね。博愛記念病院の薬剤師さんから教えてもらうことも多いですね。横のつながりで薬剤師どうしで相談することもよくあります。

  • 仕事への姿勢はいつも前向き
    「嫌なことも良いこと」に

    病院の薬剤部としてはどんな目標がありますか。

    薬剤師が、病院のなかで「薬のことは、薬剤師にまず相談」という存在になってほしいです。いろんな職種から話や情報を収集して、それをまた返すという役割ですね。薬局にいるだけではなくて、薬で困ったら薬剤師に聞くことができるっていう体制を、病院のなかで作っていきたいですね。

    そのためには、先ほどお話しされたような発信も大切になってくるわけですね。

    そうなんです。病棟に行くと、看護師さんが薬のことを調べる時に、処方薬についてのハンドブックを読んでいるのを見かけることがあるんですね。もちろんご自身で調べることも大事なんですけど、そう言う時に気軽に聞いてくれたら嬉しいなって。

    せっかくならもっと気軽に薬剤師に聞ける環境にしていきたいと。ほかにやりたいことはありますか。

    グループの介護施設との連携ですね。現在、3つのグループ介護施設について、平成横浜病院が往診を担当しているんですけど、そこに薬剤師は特に関わっていなかったので、今後は医師のラウンドに着いていってもいいんじゃないかな、とも思っています。

    利用者さんとしても安心ではありますね。

    医師と一緒に行って、薬の見直しをするのも良いのかなと思います。施設に関わりたいというスタッフもいるので、ぜひ橋渡し役になってもらって。せっかく同じグループですし、それでこそ本当の意味で、長く見守ることや、地域密着ということにもつながりますから。まずはやってみて、効果が出てきたらいいのかなと。まだ妄想の段階ですけどね(笑)。

    平成横浜病院から、そういった施設へ移られる方もいるでしょうし、新しい取り組みとして良いかもしれないですね。グループ薬剤部の仕事については、今後の展望はいかがですか。

    コミュニケーションについての研修を進められたらいいなと思っています。薬剤師は、薬剤部内はもちろん、薬剤部の外ととのやりとりも多いですから、そこを円滑に進めていくための取り組みを増やしていけたらと思っています。

    業務をよりスムーズに進めるための取り組みですね。

    薬剤師が患者さんのために1人だけでできる仕事ってほとんどないんですよ。患者さんに触ることはできませんし、医師からの処方がなければ薬を出すこともできない。作った薬は看護師さんがいなければ飲ませることもできない。何にするにも、薬剤部以外の人が関わりますから、そこをさらにスムーズに進められる薬剤師を、どんどん増やしていきたいです。

    仕事を回すためには大事な取り組みですね。瀧田さんが、仕事で大切にしていることはありますか。

    よく「自分が作った薬を飲んでいる患者さんを、必ず見に行こう」ということはスタッフに伝えています。いくらカルテをいじっても、どんな人が薬を飲んでいるかはわからないですし。例えば、全然口が開かなくて、処方された錠剤が飲めない、とか。逆に、飲みやすく粉状にしたけど、口内に張り付いちゃって飲みづらい、とか。そういうことは、現場に行かないとわからないことなんです。「とにかくどんどん現場に出て見に行こう」ということは大事にしています。

    そういった考えはいつから持つようになりましたか。

    実は、最初に勤めた急性期病院で病棟に出させてもらった時、初めは何をやっていいのかわからなかったんですよ。でも、患者さんのところに行って話を聞くと、薬以外のこともお話ししてくれて、薬を作るだけでは知ることができないこともたくさんあったんです。もちろん、そうやってお話できるようになるまでは、失敗を何度も重ねましたけど。

    最初の急性期病院での体験が、今につながっているのですね。

    私の薬剤師としての土台はそこで作られましたし、今も経験が生きていますね。

    ここまでお話を聞いて、瀧田さんはずっと楽しんで仕事に取り組んでいる印象があります。キャリアを通して、辛かった時期はなかったのですか。

    この病院に移ってきた当初は、人がいないなかで業務と採用を同時に進めていったので、体力的には大変でしたね。でも、ほかにはそこまで辛いことはなかったかもしれないです。

    前向きに取り組めているんですね。

    問題が起きた時は、嫌だなと思いますけど、結果として良い方向に転がっていけばそれでいいので「嫌なことも良いこと」だな、と思いながらやっています。

    素晴らしい思考ですね!

本当はアクティブに出かけたい
そしてあふれ出るタケノコへの愛情

冒頭で野球経験の話を伺いましたが、最近は野球をやることはありますか。

それができてないんですよ〜。緑成会整育園が参加している施設交流の大会が毎年あって、そこにいつも誘ってもらっていたんですけど、それも実施できていないので。

故障した膝はもう問題ないんですか。

毎日野球をやらなければ大丈夫です(笑)。

(笑)。お休みの日はどう過ごしていますか。

本当はドライブとかバーベキューをしたいんですけど、今は全然できてなくて。車もそれ用に大きめの四駆があるんですが、全然乗れていないです。

維持費だけがかかっていくと…(笑)。本当はいろいろやりたいこともあるわけですね。

本当は飲み会も大好きなんですよ。あんまり知らない人たちの飲み会にも参加するんです。

えっ、どういうことですか。

他部署の飲み会がある、と聞いたら「行って良いですか?」って言って、シュッと参加してました。

すごいスキルですね(笑)。

平成横浜病院にきてからは割とすぐコロナ禍になってしまったので、あまり行けていないんですが、緑成会病院は飲み会も多かったんですよ。

今まで出ていただいた緑成会病院関連の方も、みなさん飲み会の話はしていましたね(笑)。

それが楽しかったですね。僕は趣味が全然ないんですけど、あえて言うなら、人と話すことかもしれないですね。

今後やりたいことはありますか。

バーベキューとか、キャンプをやりたいです。あとはスノーボードにも行きたいです。行ったことはないけど、ずっと前から行きたいって行っているので、周りからは趣味は「スノボ(予定)」って書けって言われてます。

外堀を埋められていますね。

ボード以外は準備できてるんです。早く行きたいなあ。

では最後に、好きな食べ物は。

タケノコです。特に青椒肉絲が好きです。SNSのアイコンも青椒肉絲の写真にしてるくらいですから。

ものすごいタケノコ愛ですね(笑)。

ひとプロジェクト今回からしばらくお休み。
10月よりリニューアルして再開の予定です。
次回の公開をお楽しみに!

前編を読む

profile

平成横浜病院 薬剤部 係長 瀧田 大輔(たきた だいすけ)

【出身】東京都清瀬市
【資格】薬剤師
【趣味】人と話すこと、スノーボード(予定)
【好きな食べ物】タケノコ、鶏肉(パサパサした方が好き)

病院情報

神奈川県横浜市戸塚区戸塚町550番地

医療法人横浜 平成会
平成横浜病院

内科・神経内科・呼吸器内科・消化器内科・循環器内科・外科・泌尿器科・皮膚科・整形外科・リウマチ科・リハビリテーション科・歯科・歯科口腔外科・麻酔科・脳神経外科地域に根ざした病院として、一般病棟、地域包括病棟を備え、回復期リハビリテーション病棟を新設しました。さらに救急告示病院として24時間365日、患者さんの受け入れを行っています。2018年6月には、総合健診センターがリニューアル。地域の健康を支えていけるよう努めています。