ひとプロジェクト 第59回【後編】平成横浜病院 診療統括部長/森岡 研介先生

平成横浜病院

診療統括部長

森岡 研介 先生

Morioka Kensuke

家族の誕生を機に移った平成横浜病院
地域での認知度を高めて、さらに頼られる病院へ

平成横浜病院の診療統括部長、森岡研介先生の後編です。長年勤めた大学病院を離れ、平成横浜病院に入職した森岡先生。そのきっかけとなったのは、家族への想いだったそうです。また後編では、先生の現在のお仕事や、診療統括部長の役割やモチベーション、平成横浜病院の展望についてもお聞きしました。個人として映像作品の医療監修やドローン空撮を行うなど、気になるプライベートも伺った後編、ぜひご覧ください!

子どもと過ごせる環境を求めて
平成横浜病院に入職

この平成横浜病院に入職されるまではどんな経緯でしたか。

当時は東京都内に住んでいたんですけど、結婚して子どもができて、子どもと一緒に過ごす環境を整えようと思ったんですね。大学病院では、ある程度やれることはやり切ったというのもありましたし。それで地元に帰ることにして、働けるところを探していたところで、縁あってこの病院に入職しました。

神奈川県内で移る先を探して、出会ったのがここだったと。移ってからの仕事の内容はどんな感じでしたか。

いわゆる外科医でしたよ。当時は今と違って、大学からの外科ローテーションの派遣施設になっていたので、外科医が4、5人いましたし、初期研修みたいな医師も回ってきていましたから、外科チームとして仕事をしていました。広く消化器外科をやっている、という感じですね。胃、大腸、肝臓、あとは体表手術、ヘルニアとかそういうことも含めて、ここにきた時は何でもやってました。

働き方としてはだいぶ変わりましたか。

大学で働いていた頃は病院に朝8時からいて、夜は22時くらいまで毎日いるのが当たり前の生活習慣でしたけど、こちらに移ってからは、夕食の時には家に帰れましたから。子どもと過ごす時間を増やしたいっていう目的は達成できました。

移った当時は、まだこのグループの運営ではない頃でしたか。

まだ前身の病院でしたね。働き始めて1年半くらいしたころに、運営企業が医療部門を手放すっていう話になって、「えっ」って思っている間に、このグループに変わっていきました。

以前この記事で、平成横浜病院の日高事務長や古谷看護部長(※)に、移行前後の話を伺ったんですが、森岡先生の視点からは、当時どう見えていましたか。

最初は、正直どうなるか全くわからなかったですね。この近辺では働き続けるつもりでしたけど、完全に外科医を辞めるようなことになったら、どうしようかなと思っていました。ただ、このグループに運営が変わると決まって、代表が説明に来た時に、急性期の病院機能はある程度維持しながらやっていくので、いきなり療養病院になるようなことはない、と話がありました。それを聞いて、それならなんとかなるなと。

外科医としての仕事も維持しながら働いていけるということを思われて。

実際に、仕事としては維持できることになったし、残ろうと。それに、以前は患者さんの受け入れにそこまで積極的ではなくて、空床がある日もザラでしたけど「それは普通じゃないんだ」ということも話をされて。僕としても「普通じゃなかった」という感覚がありましたから(笑)。

なるほど(笑)。考えとしては合うところがあったのですね。

  • 外科医の見識を生かしながら
    総合診療医として活躍

    実際、平成横浜病院としてスタートして、先生の役割は変わったんですか。

    外科医と言いつつ、何でもやるようになりましたね。そもそも外科医は、何でもできないと務まらないところではあるので。

    それは、全身の状態を見る必要があるからということですか。

    そう、全身管理ができないと、外科医はそもそもできないんですよ。外科のところに行くまでに、内科的なところを管理できないといけませんから。結果、外科医としてのウェイトは減って、総合内科のことをやる割合が増えました。今はそちらがメインになっていますね。それはもちろん、外科医的な知識があるからこそできる部分ではあるんですが。

    今は外科医としての経験を生かしながら、総合内科の仕事を中心にされていると。

    今はちょうど外科医が減ってしまったので、外科については、例えば内視鏡手術であるとか、1人でできる全身麻酔の手術とか、安全を担保しながらできる範囲でやっています。今後外科医が増えれば、やれることも増えるかなというところです。それと、日本感染症学会が制定した、インフェクションコントロールドクター(ICD)という認定を持っているので、今は新型コロナウイルス感染症関連の仕事も割合が増えていますね。

    診療統括部長という肩書きをお持ちですが、どういった役割を担っているのですか。

    一般診療に関わることでの調整ですね。診療に関する体制づくりというところで、診療の質に関する部分の管理をすると。とは言いながらも、いろんな部署で困りごとがあった時に、電話がかかってくる人、という方がイメージしやすいかもしれないです(笑)。

    (笑)。いろんな相談を受けられているのですね。ではお話を聞いて、改善案を提案されて。

    それもありますし、実際に自分でも対応します。何でも屋さんの窓口みたいなものですね。スタッフが誰に相談していいかわからない時に、相談をもらっています。

地域の患者さんを支えるため
リハビリテーションに強み

運営がこのグループに変わった今、平成横浜病院はどういった病院だという認識ですか。

とにかく地域に根ざして、地域の人が困っている時に、手助けしてあげられる病院ですね。本当の高度救命救急的なことをやるような体制ではもともとないし、そういう病院は実際ほかにありますから。そのうえで、もし高度救命的なことが必要な患者さんがいたら、適切につないであげるとか、近隣のクリニックの患者さんが入院しなきゃいけない、って困っている時に、そのお手伝いができる病院。ある意味、何でも屋として動くことが必要ですね。

困っている方を、幅広く受け入れると。グループとしては、リハビリテーションに力を入れていることも特長ですよね。

患者さんを地域で見る、っていうことがよく言われていますけど、そのためには、入院された患者さんが地域に戻って生活する必要があるわけですから、リハビリが何よりも重要です。幸いグループはリハビリに力を入れていますから、この規模の病院で、100人以上リハビリスタッフがいるところはそう多くないと思いますし、よくほかの病院の人にも驚かれるんですけど(笑)。中堅の地域病院で、これだけの人員がいて、リハビリが受けられるのは珍しいと思います。

地域の患者さんにとっては、それがプラスになるわけですね。

それが病院としての強みですね。患者さんの機能回復という意味では、高度救命救急を除いては、初期の治療時からリハビリが同時スタートするのがいいわけです。まずは治療だけ、ということでも手遅れではないんですが、スタートとしては遅くなりますから。

そのためには、それだけの人数が必要になると。

治療と同時スタートになると、それなりのマンパワーが必要になるから、これだけの人数が必要になるんです。グループとしても「365日毎日リハビリ」って、非常にいいスローガンですし、実際に実践していますからね。

  • 院内の仕事をいかにスムーズに回していくか
    楽しみながら取り組む運用の仕事

    先ほど、ICDとして新型コロナウイルス感染症対応もされているとお話しされていましたが、具体的にどんなことをされているのですか。

    発熱外来の設立に携わりました。いろいろと各所と調整・相談をして体制を作って。外来の運営スタイルやマニュアル作りにも中心的に関わらせてもらいました。実際に発熱外来の現場にも立っています。

    それは今まで培った知識を活かして。

    あとは、先ほどお話ししたように、診療統括部長として各所からいろいろな相談も受けていますから、うちでやるにはどうしたら回るのか、ということについては考えやすいわけです。この発熱外来に限らず、運用方法を決めて提示して、OKをもらったら展開するっていう形で、いつも進めていますし、いかに円滑に回るか、そのためのルールづくりを心がけています。

    もともと、大学病院で働いてた時からそういうことを考えてこられたんですか。

    なるべく効率良く仕事を進めたい、という根源的な考えは変わっていませんね。プログラムを作って、スタートボタンを押したら、エラーを起こさずに完遂できるようなマニュアルを作りたい、というのがずっと考え方としてあります。もしひとつエラーが起きても「if」っていう分岐をそこに追加して、こういうエラーが起きたらここに分岐して、ということは、昔から日常的に考えてきたことですから。

    子どもの頃からプログラミングに触れてきた先生ならではの考えかもしれないですね。

    役割として、診療統括部長というものになりましたけど、そういうフローチャートを考える作業自体は嫌いじゃないんです。発熱外来に限らず、普段の診療部の運用、例えば内視鏡の運用をどうするか、手術室の運用をどうするか。病院経営に関わることは僕はノータッチですけど、内部をいかにきれいに回していくか、ということについては、僕の仕事の範疇だと思って取り組んでいます。

    先生としては、お仕事のモチベーションはどんなところにありますか。

    常に今言ったこと自体がモチベーションになっていますね。仕事で、こういった組み合わせをいろいろ考えていることは、1日1日のゲームをクリアしていこう、という感じで楽しんでいると言えますね。ゲームというと語弊があるかもしれないですけど、普段の仕事そのものがある意味楽しみのひとつなんですね。だから、手術の話と同様、運用についても好きでやっているんです。

    当然こういった仕組み作りは、スタッフみなさんも働きやすくなるためのものなわけですよね。

    そう思って取り組んでいます。うまくいけばトラブルが少なく回っていきますから、つまりそれは患者さんにとっても良い状態なので。

    全方位的にメリットがあるということですね。何か今後の展望はありますか。

    もっと病院の認知度を上げたいですね。このグループが運営するようになって、スタンスが変わったわけですから、その認知度を地域でもっと上げて、困ったらあの病院に行けばちゃんと見てもらえる、ということを、地域のみなさんが当たり前に思ってくれるようにしたいなと。

    大学病院のような、高い専門性のある病院が目標ではないと思うのですが、そうなると、ひとつひとつの充実度が大切になるんでしょうか。

    そうですね、当たり前のことが滞りなくできるということが大事です。けっして特殊なことを目指していく病院ではないですから、ひとつひとつを確実にやっていきたいですね。

  • 映画・ドラマの医療監修や出演
    さらには空撮まで…!

    では、お仕事以外の趣味などのことを伺いたいんですが、ここまでお話聞いただけでも、いろいろとありそうですね。

    プライベートの話をするとキリがないですね(笑)。

    ではその一部を伺いますね(笑)。お休みの日は何をやられていることが多いですか。

    ドローンを飛ばしての空撮ですね。週末にちょこちょこ撮っています。

    依頼の有無に関わらず撮影されていると。

    そうですね、隙があれば日々撮っています。撮った動画は公開しているので、それを見て「テレビのワンシーンで使わせて欲しい」っていう依頼や、「こういう上空のシーンが欲しいので、撮ってくれませんか」っていう依頼も来ます。以前、病院スタッフのみんなで『パプリカ』(※)を踊ったんですけど、これもドローンなどを駆使して撮影しましたね。

    ※平成横浜病院スタッフが踊った動画はこちらからご覧いただけます。

    ちなみにお子さんは森岡先生のこういった趣味には興味を持たれるんですか。

    小学生の男の子が2人いるんですけど、興味は持ってくれてます。積極的にというほどでもないですけど、例えばドローンのシミュレーターも触らせると、普通にできるんですよね。

    映画などで医療監修もやられていると伺ったんですが、どういったきっかけがあったのですか。

    大学病院に勤めていた時に、僕がいたチームが『孤高のメス』っていう、日本初の生体肝移植をテーマにした映画の監修依頼を受けたので、僕もその手伝いに行ったのが初めてでした。

    実際にどういうことをされたんですか。

    移植に関する映画ですから、ヒューマンドラマ以外のシーンほとんどの監修ですね。あとは手術シーンで使う、臓器のフェイク模型の3Dモデルを提供して、美術とか特殊造形の専門家の人と打ち合わせして、作っていきました。こういうやつですね(写真を見せてくれる)。

    おお、リアルですね。監修自体は、大学のチームのみなさんで取り組まれて。

    そうですね、手技の実地指導はみんなで担当して、なかでもこういう造形とか細かいことは僕が担当しました。実際、ラストシーンに麻酔科医として出演もしましたからね(笑)。

    出演もされているんですね(笑)。監修については、これがきっかけでほかの作品にも携わるようになられて。

    この時に、スタッフさんも役者さんも知り合いができたので、その後も何かと声をかけてもらって、今までたくさんやらせてもらいました。

    現場にどっぷりと入るようなものもあれば、もっと簡易的なものもあるのですか。

    そういうのもありますね。「こういう医療シーンがあるんですけど、おかしくないですか」って相談を受けて、監督や脚本家とメールでやりとりして、セリフを含めて台本を修正するとか。最近は役者としても出演しましたよ(笑)。

    監修じゃなく、役者での依頼もあるんですか(笑)。

    吉永小百合さんが訪問診療医役を演じられている『いのちの停車場』(※)という映画なんですけど。訪問診療医になる前のキャリアとして、救急の現場で働いているシーンがあって、その部下役として、リアルにやってもらいたいということで依頼をいただいて。多分冒頭の方に出てくると思います(笑)。

    ※2021年5月21日公開予定の映画。くわしくはこちらこちらをご覧ください。

    ぜひチェックしてみたいと思います!

    ちょっと前に『浅田家!』という映画でも監修をやらせてもらったんですけど、たまたまグループの介護施設のスタッフで映画を見た人が僕の名前をエンドロールに見つけて、「先生出てたんですか!」って話しかけられました(笑)。

前編を読む

profile

平成横浜病院 診療統括部長 森岡 研介(もりおか けんすけ)

【出身】神奈川県鎌倉市
【専門】外科・消化器科・総合診療科
【趣味】テニス、音楽、ドローン、車いじり
【好きな食べ物】牛丼(大盛り・ツユだく・みそ汁・卵・おしんこ)

病院情報

神奈川県横浜市戸塚区戸塚町550番地

医療法人横浜 平成会
平成横浜病院

内科・神経内科・呼吸器内科・消化器内科・循環器内科・外科・泌尿器科・皮膚科・整形外科・リウマチ科・リハビリテーション科・歯科・歯科口腔外科・麻酔科・脳神経外科地域に根ざした病院として、一般病棟、地域包括病棟を備え、回復期リハビリテーション病棟を新設しました。さらに救急告示病院として24時間365日、患者さんの受け入れを行っています。2018年6月には、総合健診センターがリニューアル。地域の健康を支えていけるよう努めています。