職員一人ひとりが「じぶんを生きる」ために
ーチームデザイン部の実践ー

2025年5月に新設された、部員2名のチームデザイン部。
職員同士が「人と人」として関わり合い、誰もが「自分らしく」働ける職場・チームづくりを目指しています。その実現のため、職員の合宿やワークショップ、研修などの企画・運営を行っています。
グループ内でも少しユニークな存在とも言えるこの部署は、なぜ立ち上げられたのでしょうか。どのような仕事をし、何を大切にしているのか。部員の大沼 恭平(おおぬま・きょうへい)さん、黒澤 紗季(くろさわ・さき)さんに聞きました。
次の二人にインタビュー
大沼 恭平(チームデザイン部課長/合宿コーディネーター・ファシリテーター)

黒澤 紗季(合宿コーディネーター)

グループ理念刷新を機に、「職員の自分らしさ」を支えるアプローチを見つめ直した
チームデザイン部を立ち上げた背景には、どのような想いがありましたか。
大沼:大きく言うと「職員が自分らしく働ける環境をどうつくるか」を、「制度」と「関係性」の両面から考える必要がある、と感じたことがきっかけです。
これを意識するようになったのは、2023年にグループのミッションが刷新されたタイミングでした。
旧理念「絶対に見捨てない。」は患者さん・利用者さんに向けた想いが強いものでしたが、新しいグループミッション「じぶんを生きる を みんなのものに」は、職員へのメッセージが含まれていると受け取ったんです。
「職員の自分らしさ」を支えるために、何が必要なのか。その視点を持つようになりました。

その頃、大沼さんは人事部に所属していました。なぜ“新しい部署が必要”だと思ったのでしょうか。
大沼:人事部は採用や評価、配置、教育、福利厚生など、制度の側面から組織を整える役割を担っています。当時私もそこに所属していましたが、自分の役割としては、職員が職種や役職をいったん外し、職員同士が安心して話せる「場づくり」や「関係性づくり」にも取り組んでいたんです。
そのために実施する合宿の運営などを通して、少人数の対話から関係性が育ち、それが職場全体の雰囲気や文化、チームワークに広がっていくプロセスに手応えを感じていました。
その時、職員の「じぶんを生きる」を推進するために、「制度」から組織、そして個人へとアプローチする方法がある一方で、「少人数の関係性強化」から職場全体へ広げる方法も大いにあると実感しました。
その後者に専門性を置き、人事部の機能と補完し合いながら、職員の「人と人の関係性づくり」を推進する部署が必要だと考え、チームデザイン部を立ち上げました。
黒澤さんがチームデザイン部に所属しようと思った理由を教えてください。

黒澤:私はもともとグループ病院で理学療法士として働いていて、2023年には、当時人事部が運営していた「つなぎてプロジェクト」(※)に参加したんです。
翌年には人事部に異動し、今度は「つなぎてプロジェクト」の運営側を経験しました。参加する立場では見えなかった発見が多く、「場づくり」のおもしろさに触れました。同時に、現場にいた時とは違う視点も持てるようになりました。
その経験を通して、「こういう仕事に携わりたい」と思うようになり、人事部で大沼さんと同じチームへ。そこからチームデザイン部に所属することになりました。
※新人職員と職場・既存スタッフとの関係性をつなぐ役割を担う職員が「つなぎて」となり、新人が職場に早くなじみ、自分らしく働けるように支えるプログラムを企画・実施するプロジェクト。プロジェクトの一環として、つなぎては「つなぎて合宿」を経験します。
参考記事:「人と人」をつなぐ「つなぎて」の存在とは?ーつなぎてプロジェクト2025レポート①(合宿編)ー

医療福祉の現場だからこそ必要な「関係性づくり」とは
黒澤さんが「現場にいた時には持たなかった視点」とは、どういうものでしょうか。
黒澤:自分が医療の現場にいた頃には当たり前だと思っていたことが、「当たり前じゃないかも」と気づいた点ですね。わかりやすいのは、職種間のヒエラルキーの存在です。たとえば、医師の言葉が絶対だったり、経験のある看護師の意見が通りやすかったりということは現場で起こりがちです。そうした環境の中では、若手や別職種が意見しづらくなることもあり、当時の私の肌感としては、それが「当たり前」のように感じられていました。
でも本当は、患者さん・利用者さんのためになることであれば、職種やキャリアに関係なく、誰でも発言できる環境があるべきだったと、今は感じています。
大沼:だからこそ「職種や役割を超えて、本音で話せる場」が必要です。チームデザイン部はその“場”をひらくことで、職員同士がより「人」として関われるようになること、そしてチームの関係性がより良く変わっていくことを目指しています。そうした積み重ねが、やがて職場の文化として育まれていくと考えています。

「場づくり」「関係性づくり」のための日々の実践
チームデザイン部の仕事内容について、具体的に教えてください。
大沼:仕事内容は主に四つに分けられます。
一つ目は、職員の対話の場としてのワークショップや合宿の企画・運営。これがメインの仕事です。
二つ目は、グループ全体の職員教育・研修に関する取り組み。
三つ目は、新人研修の企画・運営。
四つ目は、職員が自分らしく働くためのプロジェクトの企画・運営です。「つなぎてプロジェクト」も、広くこの中に位置づけられます。


黒澤:他部署から見ると、合宿やワークショップの当日の運営が目立つと思いますが、実際はその準備に多くの時間を費やしています。
依頼をいただいた部署やチームと対話を重ねながら目的や方向性をすり合わせる一方で、資料作成や進行設計、参加者への調整・連絡、会場手配などに取り組む時間がほとんどです。こうした業務を丁寧に行うことが、当日の成果を大きく左右すると感じています。


「人と人として向き合う」仕事のやりがいとポリシー
二人はどのような時に仕事のやりがいを感じますか。
黒澤:私はもともと仕事を「楽しいもの」として捉えていなかったのですが、今は「楽しい」と感じています。その理由は、今の仕事の自由度の高さにあります。職員、ひいては患者さん・利用者さんの「じぶんを生きる」に通じることであれば、どんな企画を出してもいいし、本当に自分が「いい」と思えることに挑戦できるので、やりがいが感じられます。
また、合宿などを通して、最初は消極的だった参加者が前向きに変化していく姿が間近に見られることがあり、そこにも大きなやりがいを感じますね。

大沼:自分はちょっとファシリテーター的な視点の答えになります。
合宿やワークショップといった“場”をひらく以上、主催側には目的や意図、期待などがあります。でもいざ始めてみると、参加者がその場で得るものは一人ひとり違って、「こちらの想定とは違う受け取り方が生まれる」と感じています。
今は、そのズレや多様な受け取り自体がおもしろく、場合によっては私も元々の立ち位置から動き、参加者が何を持ち帰るかは可能な限り参加者に委ねる。そんな「参加者の自分らしさ」を感じる時間に仕事のやりがいを感じています。
仕事をするうえで大事にしていることは何ですか。
黒澤:枠にはまり過ぎないように考えることです。自分はけっこう型にはまりがちなタイプで「それはやっちゃだめだ」みたいなルールに則って思考する傾向があるので……。今は自由度の高い環境にいるからこそ、できることがあると感じているし、その可能性を生かせるように意識しています。
それから、合宿などにおける「主人公」は参加者なので、自分の立ち位置には気をつけています。必要に応じて空気のような存在になり、参加者が主体的に動きやすくなる環境づくりを心がけています。

大沼:どんな行動や発言においても、「主語を自分にする」ように心がけています。合宿や研修で、ファシリテーターとしてグループ代表や本部長などの言葉を参加者へ伝えることが多いのですが、「あの人が言ってるから」という伝え方にはしたくありません。
その言葉を自分自身が納得し、自分の言葉にできる状態になってから伝えるようにしています。「私はこう思う」「私はこうしたほうがいいと考えた」というふうに伝えるほうが、話を聴く側が否定も肯定もしやすくなり、対話が生まれると考えています。
コミュニケーションにおいて、相手も自分も大切にする関わり方を大事にすること、これを意識しています。
現場に根ざしたチームデザインの実践へ
今感じている課題と、これからやっていきたいことなどを教えてください。
黒澤:実質的に、時間と人手が足りていないのが現状であり、課題です。連絡や調整といった細かなタスク管理なども、もっと丁寧にやりたいのですが、ちょっと難しく感じているところです。
それから、場づくりでは自分の感覚に頼っている部分が大きくて、それだと限界があると感じています。今後場づくりのプロフェッショナルを参考にしたり、そういう場を見に行ったりするなど、学びを深める必要があると思っています。
もう一つ、「合宿や研修を実施して終了」ではなく、必要に応じて参加者にどのような変化があったかまでを追うこともやっていきたいと考えています。

大沼:私たちの業務は、一般的には外部のコンサルタントに委託するケースも多い領域です。外部の視点にも大きな価値がありますが、チームデザイン部はグループの内部にいる人間として場づくりを担っています。
内部で行う最大の強みは、組織の状況を深く知ることができる点にあると思っています。現場に足を運び、会議やカンファレンスなどの空気を感じて、実際の職場における関係性を自分の目で確かめられる立場にあることは、大きなメリットです。
一方で、その強みを十分に生かしきれていないことが、今の課題です。本来であれば、もっと現場に足を運び、組織の現状を知ったうえで場を設計すべきだと感じています。人から聞いた情報だけに頼るのではなく、自分自身が見て、感じて、考える。そこからできることを行動に移していきたいと思っています。
より積極的に現場に関わり、内部にいるからこそできる場づくりを実践することが、今後の目標です。