ひとプロジェクト 第49回【後編】平成医療福祉グループ 介護福祉事業部 サービス企画課/木村 太一さん・城野 葵さん
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施設入所後も利用者さんの日常を諦めないために
新しいつながりを模索する事業部の取り組み -
グループの介護福祉事業部、木村さん、城野さんの後編です。後編では、実際にどんな取り組みをされているのか、また今後どんなことを展開していきたいかなど、介護福祉事業部のお仕事について伺っています。チョコレートの出品や「お茶旅」など、現在進行形のプロジェクトについてさまざまなお話を聞けました。意外な楽しみ方をしているプライベートについても飛び出す後編、ぜひご覧ください!
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入所前の日常を
諦めることがないようにー介護福祉事業部に入られてから具体的にどんなことに取り組まれましたか。
木村 僕がまず取り組んだのはOUCHI(※)のチョコレートですね。施設はスタートしていたんですけど、チョコレート作りがまだうまく軌道に乗っていなくて。スタッフさんと一緒になって、型やパッケージから見直していきました。入職して、まさかチョコレートの型を探しにいくとは思いませんでしたね(笑)。
※OUCHI:大内病院近隣に立つ、精神障害を持つ人たちが地域に戻るためのサポートをする施設。カフェとしても営業中です。くわしくはOUCHIのサイトをご覧ください。
ー(笑)。城野さんはいかがですか。
城野 私が初めて取り組んだ仕事は「よりみち」ですね。今私たちがいるケアホーム板橋はとても大きい施設なので、利用者さんが生活するユニットから出て交流するという機会がなかったんです。その枠を超えて楽しめる何かを考えてほしい、という依頼があったので、ユニットを超えて書道や籐細工をクラブ活動的に楽しめる機会を設けて「よりみち」と名付けました。
ー施設内で普段会わない利用者さん同士が交流できそうですね。
城野 よりみち活動のひとつに「カフェの日」を作ったんです。ただただ、スタッフが用意してくれたおいしいお茶菓子やおいしいコーヒーを楽しんでもらう、というもので。会場のお部屋からの眺めがいいので、みなさん初めて会う方と席を共にしながら「こんな風にお喋りできるの、楽しいわねぇ」と言っていただけました。今は新型コロナウイルスの影響で実施できないのが残念なのですが。
ーみなさんはどういったテーマのもとに動くことが多いのですか。
城野 介護施設については、利用者のみなさんが施設に入所する前に、今まで送ってきたそれぞれの生活があるから、なるべくそれをできる限り実現させていこう、というのがテーマですね。日常を諦めないという。
木村 部屋にこもったままになってしまうこともあるかもしれないので、「よりみち」のような取り組みとか、「買い物ができる機会もあるといいね」ということで移動販売の導入も取り組みました。
城野 その一環として、今まで犬などの動物と暮らしていた方もいらっしゃると思うので、施設で犬を飼おうということも始めました。
ー犬がいる生活! いいですね。
木村 日常に犬がいることで、楽しみも増えると思うので。もちろん、導入にあたっては、苦手な方やアレルギーの方にも配慮はしながらですが。同時にドッグトレーナーも採用をして、今ではケアホーム板橋、ケアホーム葛飾、ケアホーム千鳥に、それぞれ犬とドッグトレーナーがいます。
新たな取り組み「お茶旅」
オンラインで広がる利用者さんの世界ー最近では「お茶旅」という取り組みに反響があったと聞きましたが、これはどんなものですか。
城野 施設でのおやつの時間に、地域のお茶やお菓子を利用者さんに提供しながら、オンラインで現地の生産者さんや観光協会などとつないで、お茶や地域のお話を直接していただく、という取り組みです。
ー各地の産品を楽しみながら、実際にその現地の人ともつながるということで「お茶旅」なのですね。
城野 先ほど話した利用者さんの「日常を諦めない」というテーマでいうと、旅行もみなさんの生活にあった大事な要素のひとつだと思うので、少しでも旅の雰囲気を体感してもらいたいなと考えました。それと、ケアホーム葛飾でいろいろと話を伺うと、現在は新型コロナウイルスの影響で、ユニットのなかでしか取り組みができない。だけど、それでも地域や外部とつながれる取り組みがあればいいな、という話が出てきたんです。
ーこの取り組みであれば、ユニットごとで完結できるから、大人数で集まる必要はないわけですね。
城野 初回は島根県津和野町のお茶を飲みながら、現地とオンラインでつないで、地域の景色をYouTubeで流したり、生産者さんが喋りながらスライドで観光スポットの写真も紹介してくれたりしたんですけど、実際に行ったことある利用者さんは「何十年前に行ったわ〜」とか「懐かしいわ〜」と言ってくださって、いい時間でしたね。
ー実際にいいリアクションをいただけたんですね。今後の展開はどうお考えですか。
城野 ケアホーム葛飾では月1回くらいのペースで継続していくことが決まっています。幸いオンラインでできる取り組みなので、グループの他施設とも、どこでもつなげるのは大きいですね。興味を持って「やってみたい」と言っていただけるところがほかにもあればいいなと思っています。
ーこれから広がるといいですよね。
城野 まだ始まったばかりですけど、この企画で良いなと思った部分が、ユニットで完結するものなので、介護士さんに協力してもらいやすいんですね。みなさんいつも忙しくされていますから、ユニットから出る企画では、どうしても人手がほかに必要になるので。
木村 この企画は、基本はいつものおやつの延長線上にあるものなので、施設でも協力いただきやすいんです。ちょっといつもと違うお茶やお菓子を出してもらって、その時に画面もみてもらってっていう、拡張型の企画なので。
ー特別なイベントを催すというより、普段の生活や業務と地続きというところがポイントなのですね。
城野 介護士さんに参加してもらえる企画っていうのは大事なところだったので、それができたのはすごく嬉しかったですね。
11月にオープンする『ココロネ板橋』
おにぎりとスープがメインのカフェ『ねねね』とはー木村さんは現在どんな取り組みをメインで動いていますか。
木村 11月にオープン予定の障害者支援施設『ココロネ板橋』ですね。僕は建物内の家具や外装について関わっているのと、あとは就労継続支援B型事業として行うカフェ『ねねね』について、介護福祉事業部のほかのスタッフと一緒にメニューやネーミング、ロゴ作りや内装と、いろいろ手がけています。
ーカフェの店名が『ねねね』なんですね! 気になる名前です。
木村 心の「根」、地域に「根」差す、というところを由来に付いた名前です。
ーどんなカフェになる予定ですか。
木村 「心を持って地域に根ざす」というココロネのコンセプトを元に、地域のみなさんに利用していただける場所を目指しています。また、野菜は板橋区にある「THE HASUNE FARM」の野菜を中心に使用するなどして、地域で活動する人やモノが集まる場所にもなったらいいなと思っています。
ー地域や人とのつながりを大事にしていくと。いろいろ交流が生まれるのも楽しみですね! どんなメニューが並ぶ予定ですか。
木村 コーヒーやジュース、チーズケーキなどのカフェメニューを提供するのはもちろん、おにぎりとスープがメインとなるのが特長です。素材をおいしく食べやすい形でご提供するとともに、スタッフとして働く発達障害を持つ利用者さんも、調理業務に関わりやすいということを目的としています。
ーおいしさと就労支援を両立させた結果なのですね。
木村 ココロネ板橋は11月にオープンするのですが、カフェについてはまず利用者さんと準備をしながら徐々に開けていく予定です。最初は営業時間も日中の短い時間ですので、ココロネ板橋利用者さんのご家族や、近隣の方が一息つく場所として、使っていただければと思います。
ーカフェのオープンも楽しみですね! 開設前で何かと慌ただしい時期ではないですか。
木村 ココロネ板橋に関してはまさに今がそうですね。『ねねね』のInstagramアカウントもできたので(※)、ぜひチェックと、フォローもしてほしいです。
※カフェ『ねねね』のInstagramアカウントはこちらからご覧ください。城野 私は木村くんがいっぱいいっぱいにならないように見守っています(笑)。
介護分野の教育を強化
福祉では、さらなる広がりを求めてー今後はどんなことに取り組みたいと思っていますか。
城野 今までの話とは少し違う取り組みにはなるんですけど、介護職の教育分野について取り組みたくて、個人的にはもともと入る前からやりたいなって思っていたことだったんです。
ー具体的にどういった内容ですか。
城野 そもそも介護の仕事自体が、看護師やリハビリテーションの療法士と違って、専門の学校や学科を卒業することや、資格を取得するっていうことが必要ではないので、いろんなバックグラウンドを持った人たちが入ってきて。人数はたくさんいるのに、評価の仕方とか研修とか、資格を取った後にどこに目標を持って仕事をするのかとか、キャリアの見通しみたいなものがまだ整っていないと思うんです。その体系を全体で作りたいと考えています。
ー組織全体に関わる大きな仕事ですね。以前この記事に出ていただいた飯野さんがお話しされていた、ケアホーム葛飾の研修もその一環ということですか(※)。
城野 そうです! 飯野さんに教育担当というポジションに立ってもらって研修を行って。初めての挑戦だったんです。立ち上げということでいろいろやらせてもらって、様子を見ながら取り組んでいます。
※ひとプロジェクト ケアホーム葛飾介護主任/飯野 岳志 さんー木村さんはいかがですか。
木村 就労継続支援B型事業で作ったアイテムを、もっと外に広めて行きたいなと思っています。
ーそれで言えば、OUCHIのチョコレートはいろいろな展開もしていますよね。
木村 今年(2020年)の2月に、「rooms」という展示会に出展させてもらったり、渋谷のTSUTAYAにも期間限定で商品を置かせてもらいました。この記事が公開されるころには渋谷のEQUALAND(※)にも商品が並びます。
※https://equaland.com/brand/ouchi/ーそういった展開も、この事業部ができたことでつながったと言えそうですね。
木村 グループがある程度規模が大きいので、内部で消費することももちろんできるんですけど、それだけじゃなく、いろいろなところに置いてもらえるといいですね。「あそこで売ってもらえる」っていうことが決まると作る側も嬉しいし、モチベーションにもなるじゃないですか。それで目に触れてもらって、取り組みに興味を持ってくれる方が増えたらいいなと思っています。
ーグループには、ほかにも障害者支援施設がありますし、さらなる展開も期待したいです。
木村 今お話ししたOUCHIやココロネ板橋のほかにも、大阪の『PALETTE』ではお菓子や陶芸作品、淡路島の『ココロネ淡路』ではクラフト素材やコーヒーなど(※)、障害を持った方が個性を生かしながら、ものづくりを通して、地域での自立した暮らしを目指しています。今後はオンラインショップなども活用する予定ですので、さらに取り組みや商品を広く知っていただきたいですし、もっと連携していきたいですね。
※PALETTE:大阪市淀川区に立つ就労継続支援B型事業所です。お菓子工房や陶芸工房、印刷工房、アトリエなど、各々の個性を生かせる「ものづくりの場」を提供します。http://palette-osaka.com/
※ココロネ淡路:兵庫県淡路市に立つ、障害がある方のためにできた、就労のための練習と就労の場を提供する就労継続支援B型事業所です。仕事や就労練習を通して、障害がある方が自立した日常生活や社会生活を営むことができるようにサポートします。https://hmw.gr.jp/action/cocorone/ーサービス企画課としては、みなさんがそれぞれお2人のように仕事に取り組まれているのですか。
木村 そうですね、今全員で8名メンバーがいて、ここまで話した取り組みも、僕たちだけではなくて、そのメンバーも関わって進めてきたものですね。
ーみなさんそれぞれ役割が分かれて取り組まれて。
城野 それぞれみんなが特性を生かしてるっていう感じですね。私たちの取り組みをお知らせするnoteを始めたので(※)、ご覧いただいて、ぜひ今後にも注目してほしいですね!
タイに隅田川にK-POP…
充実した時間の使い方ーではプライベートなことを伺います。お休みの日はどう過ごしていますか。
木村 休みの日に限らないんですけど、僕は隅田川に行きます。
ー行って何かをされるんですか。
木村 いえ、うろうろしてます(笑)。隅田川は川沿いがきれいに整備されてるので、そこを歩いて遡上するのが好きなんです。あとは自転車にも乗って。それも具体的にどこに行くでもないですけど(笑)。あとはタイにハマッていて。
ータイですか?
木村 そもそも旅行が好きで、学生時代にいろいろ行ったなかで、タイにハマりました。近いし実家に帰るより安く行けますし、現実逃避できていいんですよ。通い詰めてみようと思って、2カ月ごとに行っていたんですけど、新型コロナウイルスの影響でいけなくなってしまって…。
ー今は厳しい時期ですね。
木村 それでタイ語も習い始めて、週に1回マンツーマンのタイ語教室に行ってます(笑)。それとタイ料理も自分で作るしかないと思って、タイの食材を置いているお店で食材を買って、一時期はずっとタイ料理を作ってました。
ータイにどっぷりなんですね! 城野さんはいかがですか。
城野 私はこのコロナ禍で、まずランニングを始めて、それをきっかけに運動に目覚めたので筋トレも始めて。最近はやっぱりダンスしたいなと思って、スクールに通い始めました。
ー以前やっていたようなミュージカルですか。
城野 いえ、今はK-POPにハマッてます(笑)。
ー趣向が変わりましたね(笑)。「Nizi Project」が流行る以前からですか。
城野 いや、Nizi Projectを見てからですね(笑)。そこからTWICEとか本家のK-POPが好きになって踊っています。やっぱりダンスってやっていないと、振り付けを覚える能力がどんどん退化していくもんで、最初全然できなかったんですけど、やっていくうちに覚えられるようになってきました。
ー今後、個人的な目標は何かありますか。
木村 仕事が終わってからの時間を使って、何か自分で作りたいなって思ってます。たまに仲の良い友だちと一緒に家具を作って、それを友だちの家に置いたりしているんですけど、まだ遊び程度でやってる感じなので、家具ではないかもしれないですけど、何か作りたいなって思ってます。
ー城野さんはいかがですか。
城野 うーん、なんだろう。あ、ハワイ島に行きたいです。
木村 もともと行く予定だったんですよね。
ーわっ、それは残念…。
城野 新婚旅行で行く予定が、それが新型コロナウイルスのせいで飛んじゃったんですよね。ハワイ島、大大大自然ですごくいいんですよ〜。日本の観光客も少ないですし。だからリベンジしたいです!
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profile
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平成医療福祉グループ 介護福祉事業部 サービス企画課 木村 太一(きむら たいち)
【出身】兵庫県赤穂市
【趣味】自転車、料理、タイ
【好きな食べ物】ソムタム、ラープガイ(どちらもタイ料理) -
平成医療福祉グループ 介護福祉事業部 サービス企画課 城野 葵(じょうの あおい)
【出身】群馬県前橋市
【趣味】ダンス、ミュージカル
【好きな食べ物】焼き肉(おいしければ部位にはこだわらない)
施設情報
ココロネ板橋
東京都板橋区向原3-7-9
ココロネ板橋は、複合的な機能をもつ障がい者支援施設です。地域のみなさんのニーズを聞き取り、最も必要なことに応えられるようにみなさんとともに歩み、成長します。
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