ひとプロジェクト

ひとプロジェクト【第37回・後編】ココロネ淡路 施設長/平田 哲也さん

    • 作業ではないものを作る
      物語のある商品づくりへ

    • 兵庫県淡路市にある就労継続支援B型事業所「ココロネ淡路」の施設長、平田哲也さんのインタビュー後編です。施設で利用者さんたちによって作られるのは、クラフト素材やコーヒーバッグなどの商品。今回は、その商品の誕生秘話を中心に、込められた想いや工夫、完成までの奮闘を中心にお話しいただいています。ちょっと珍しいコーヒーバッグには、医療グループらしいこだわりが隠されていました。ぜひご覧ください!

  • 落ち葉の可能性に込めた想い

    クラフト素材とコーヒーに絞られたきっかけは何かあったのですか。

    このふたつに絞るまでに候補はたくさん出たのですが、コンセプトになっている「つながる」と結びつけるために潜在的な需要があるものを選ぶ必要があるということになりました。人が集まる場所のなかに入っていくものを商品にすることで「つながり」が生まれると考えていました。あとは、施設の場所を活かせるものを。淡路島が持つ自然の豊かさをPRできる商品である必要もありました。クラフト素材であれば「花」以外にも「松ぼっくり」「どんぐり」「落ち葉」などもあって、始めやすいと思っていました。身近で四季を感じられるし、集めたり観察したりできる良さも魅力的でした。

    確かにそうですね。

    小さい子どもは、落ち葉を見つけたら宝物を拾ったように喜んでますからね。同じ木から落ちても、大きさも形も色づきも違っていて同じものはなく、無限の広がりがあります。

    落ち葉も素敵な作品になりますよね。

    活用できる可能性はたくさんありますし、自然を相手にすることで、自分たちの手で仕事を生み出せる良さがあります。与えられた作業をするのではなく、利用者さんが生み出す仕事を提供していきたいです。

    優しい商品を目指して奮闘したコーヒーづくり

    クラフト素材のようにコーヒーにも何か意味が込められているのでしょうか。

    コーヒーは、クラフト素材よりももっと身近な存在になる商品という発想からでした。ココロネのコンセプト「つながる」には、人が集まる場所も指しています。そのつながりの場に寄り添えるものは、おいしい食べ物だったり、飲み物だったりすることが多いので、食べるものか、飲むもので商品化を目指していました。

    ここに注力したというポイントはありましたか。

    「病院でも手軽に飲めるコーヒー」という想定を設けました。なので、ココロネのコーヒーはドリップ式のコーヒーじゃなくてバッグ式を採用しています。

    この形は珍しいですよね。

    ドリップ式のほうが流通していますし、香りが広がりやすいんですけど、入院先でポットしかなかったらドリップ式だと作るのに苦労しそうじゃないですか。点滴中だったら片手がうまく使えないかもしれないし、どんなコップで飲めるかわからない。だったら、紅茶や緑茶みたいにバッグ式だとお湯を注ぐだけで手間が少ないだろうと考えました。

    細部にまでこだわって商品開発をされたんですね。

    ただ、バッグ式に決めたことで網目がとても細かいバッグを取り扱っている会社を探すことになって、一歩進んだのに二歩下がったような感覚でしたけどね(笑)。

    あ〜、それは何とも難しい…。

    何も考えずにコーヒーを淹れて飲んでいたのに、すごく商品を観察するようになりました(笑)。僕だけじゃなくて、ココロネのスタッフ全員がコーヒー豆に詳しくなりましたし、淹れたコーヒーの色や香りについて話すこともありました。

    開発の大変な部分ですね。

    でも、こうやって壁にぶつかって心が折れそうになると絶妙のタイミングで「それだったら、〇〇に詳しい人いるよ〜!」って教えてもらって、二歩下がった足が一歩ずつ進んで。進むとうれしいから、気合いが入って(笑)。

    頼もしい助っ人がいたのですね。

    そうなんです。あらためてグループの強みを知りましたね〜。職種の壁も関係なく、どんどん交流が深くなっていきました。

    新しく交流が増えた部署などはありますか。

    たくさんありますよ。例えば、介護福祉事業部(※)のなかに今年から新しく「企画課」という部門ができて、僕が苦戦していた「アイデア出し」は、この企画課が担ってくれるようになりました。こちらの意見を伝えたり、向こうから提案があったり。
    ※グループの介護福祉事業部について、くわしくはこちらをご覧ください。

    グループの強みですね。

    そうですね。職員数が多くても全員が同じ場所にいるわけじゃないので、ひとりずつに声をかけられないし、みんながココロネの存在を知っているわけじゃないですが、困っているときには別なんだなぁ〜って。仲間の存在は本当にありがたいです。僕たちの想いを聞いて「協力できることがあれば」「詳しい人を探してみるよ」というサポートに何度も助けられました。同期の存在も心強くて、うれしかったですし、感謝しています。

    ココロネ淡路の商品が旅をする?
    すでに広がりはじめた出来事とは

    ココロネ淡路の商品の近況を教えていただけますか。

    「クラフト素材」はかなり活動が活発になりました。グループの各施設が実施している園芸療法では、使う素材を現地でピックアップするケースもありますが、ココロネの素材を使ってもらうことも増えました。クリスマスリースの枠やお正月のしめ縄の稲とか。ここで梱包した素材が、園芸療法士さんに渡って、患者さんが使って…。なんだか旅みたいだなぁって思っています。

    クラフト素材が渡り歩いていく感じですね。

    面白いでしょ(笑)。ダンボールにカメラでも入れてたら物語になりそうだなぁって。利用者さんが稲の穂をきれいにしているところから、園芸療法でしめ縄になって、患者さんが退院して家に持って帰って…みたいな(笑)。いろんな方向に「つながる」可能性を想像するだけで、すごいな〜!って思います。

    クラフト素材はすでにいろんなところで活用されているんですね。

    そうですね。より良いものができればという気持ちが利用者さんにも芽生えていただけるようにサポートしていく予定です。あとは、地元の方との交流も増えて「ここの植物を使っていいよ」と声をかけてもらえるようになりました。地域との「つながり」も増やしていきたいです。

    ますます活発になりそうですね。来年以降も新しい取り組みを計画されているのでしょうか。

    そうですね。来年は商品化したコーヒーの販路拡大に取り組みたいです。現状のコーヒーづくりを利用者さんが安定して作れるようになってきたので、来年以降は生豆から仕入れて、ここで焙煎をした完全オリジナルのコーヒーを計画しています。コーヒー豆を焙煎すると香ばしい香りが広がるので、香りを届けつつ、近隣住民のみなさんにも販売して「ココロネ淡路」の取り組みをさらに押し出していきたいと思っています。

    仕事モードからお父さんモードへ
    家族と過ごすリラックスタイムとは

    仕事が終われば、徳島まで車で帰宅されているんですよね。

    そうですね〜。ひとりになれる貴重な時間です(笑)。

    それはどういう意味ですか(笑)。

    (笑)。そんな深い意味はないです。家に帰ると家族がいて、子どもの賑やかな声もあるじゃないですか。でも、車のなかは僕ひとりしかいないので、頭のなかを整理しながら仕事モードをオフに切り替えて帰っていきます。疲れたな〜って思ったら、ちょっとサービスエリアに寄りながらリフレッシュして。

    お子さんはおいくつなんですか。

    中学生の長男と小学生の長女がいます。長男はバスケットボールが楽しいみたいで、部活に熱中しています。その姿を見ると何だか成長を感じますね〜。楽しそうにバスケに燃える姿がいいですね。

    パパの顔ですね。休日のリフレッシュ法はありますか。

    家族でキャンプに出かけます。もともとキャンプが好きなんです。自然のなかで食事をする楽しさと、自然のなかで過ごす時間が最高です。子どもも大きくなったので、気軽にキャンプへ出かけられるようになったことも大きいですね。あとは、おいしいものを食べに行きます。

    お好きな食べ物があるんですか。

    麺類(笑)。麺類っていうか、主にラーメンですね。

    北海道の味が恋しくなって食べに行く感じですか。

    あ〜、いや実は、すっかり徳島県民に馴染んでしまって。北海道よりも徳島ラーメンの細麺のほうが好きなんですよ。

    そうなんですか! かなり見た目も味も違いそうですね。

    味覚が徳島県民になっちゃって…(笑)。でも、年に何度か家系ラーメンや北海道ラーメンが食べたいって思う日もあるんですよ。でも、けっこう遠方まで行かないと店舗自体がないので、すっかり徳島の味が染み付いてきたんでしょうね(笑)。
    ※家系ラーメン:豚骨醤油ベースで太いストレート麺を特徴とするラーメン。神奈川県横浜市が発祥とされる。

  • 前編を読む

    profile

    ココロネ淡路 施設長 平田 哲也(ひらた てつや)

    【出身】北海道網走市
    【趣味】家族とキャンプに出かける
    【好きな食べ物】麺類(ラーメンは徳島ラーメン派)

    施設情報

    ココロネ淡路

    兵庫県淡路市小倉153

    障害がある方のためにできた、就労のための練習と就労の場を提供する支援施設です。仕事や就労練習を通して、障害がある方が自立した日常生活や社会生活を営むことができるようにサポートします。