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ひとプロジェクト【第31回・前編】ヴィラ本郷・グループホーム本郷/鈴木信彦・ユリアンティ夫妻

    • インドネシアと日本を結ぶ出会い
      山口県で国際結婚した、介護スタッフ夫婦のこれまでに迫ります!

    • 今回は、初となる夫婦でのご登場。山口県岩国市のヴィラ本郷・グループホーム本郷で働く鈴木信彦・ユリアンティ夫妻です。インドネシアからのEPA候補者(※)として、ヴィラ本郷で研修をしていたユリアンティさんは、当時同施設で働いていた信彦さんと結婚されました。結婚5年目、グループ内でも珍しい、候補者と日本人スタッフのカップルは、どのように出会い、結婚に至ったのでしょう。恥ずかしがるお2人ですが、お互いのことやご家族、また利用者さんを思いやる素敵なお話が聞けました。当初は結婚に難色を示していた信彦さんのご両親の心を揺さぶった、ユリアンティさんからのお手紙とは…。ぜひご覧ください!

      ※EPA:特定の国との間で人材の移動や投資など幅広い分野で経済関係を強化していく取り組み。平成医療福祉グループのEPAの取り組みについては、こちらをご覧ください

  • 初めの夢はレストランオーナー
    希望を持ってインドネシアから日本へ

    インタビューよろしくお願いします! お2人とも職種は介護福祉士ですか。

    信彦

    私は介護福祉士なんですが、ユリは介護士です。何回か試験にチャレンジしてはいるんですが。

    ユリアンティ

    試験は5回受けました。いつもギリギリで…(笑)。

    なるほど、引き続き挑戦中ですね。

    信彦

    そうなんですよ〜。(目の前のお茶を飲もうとする)

    ユリアンティ

    あなた、こういう時はお客さんに「どうぞ」とおすすめしてから自分が飲むものですよ。

    信彦

    あっ…。

    いえいえ、お気になさらず(笑)。ではお茶をいただきます。それぞれ、この本郷で働き始めたのはいつからですか。

    信彦

    ユリが2010年の1月に入って、私がその半年くらい後に入職しました。彼女はインドネシアからのEPA候補者の2期生ですね。

    EPA候補者としては早い時期の来日だったんですね。

    信彦

    今はインドネシアからの候補者は本国での看護師経験が必要なんですが、当時はまだその縛りがありませんでしたし。

    ユリアンティさんはインドネシアではどんな仕事をされていたんですか。

    ユリアンティ

    病院で医療事務の仕事をしていました。

    信彦

    その病院内の掲示板に、日本でのEPA候補者募集の貼り紙があって、それを見て応募したそうですよ。

    ユリアンティ

    その貼り紙を見るまで、日本のことなんて全然考えたこともなかったんです。

    では急に思い立ったんですね。

    信彦

    しかもその応募締め切りが3日後っていう、かなりギリギリのタイミングで。

    ユリアンティ

    だからその日の夜に書類を全部書いて、次の日に出しました。

    信彦

    ほかの応募者は大学で日本の勉強をしてたりするんですけど、ユリは「あいうえお」も全然わからんまま。50音表を天井に貼って、それを見ながら寝たって言ってましたから。

    本当に勢いで応募をしたんですね。そう思い立ったのはどうしてですか。

    ユリアンティ

    私はもともと、インドネシアでオーナーとしてレストランを開きたいと思っていたんです。そのためにお金を貯めようと思って、それで日本で仕事をするということを考えました。

    まずは自分の夢のために、日本で仕事をするっていうことを考えたんですね。

    ユリアンティ

    でもその途中でこの人を見つけて、夢は少しずつ変わりました。最初は日本の男性と結婚するなんて、ちょっとでも考えられませんでしたよ(笑)。毎月の給料でお金を貯めて、本当にレストランを作りたかった。でも、もう落ち着きました、「それが人生だ」って。今は本当に、介護は素晴らしい仕事と思って取り組んでいますよ。

    公務員試験に合格も
    日本行きを選択

    ちなみにユリアンティさんが生まれ育ったのはインドネシアのどんなところですか。

    ユリアンティ

    ジョグジャカルタというところです。世界遺産のボロブドゥール遺跡があって歴史もありますし、有名な大学もあって、いろんなところから学生も集まる、日本で言うと京都みたいな場所ですね。

    なるほど、本当に京都みたいですね。信彦さんも何度か行かれたんですか。

    信彦

    それがまだで、今度初めて行くんですよ。今までに2回行く予定があったんですけど、その都度、子どもが生まれるタイミングに当たってしまって。

    ユリアンティ

    今回やっと落ち着いて行けます。

    EPA候補者として日本へ行くと言った時、ご家族の反応はいかがでしたか。

    ユリアンティ

    最初は父に止められました。でも私がマッチングしていろいろテストも受かったのを見て、「どうしても行きたいなら、気をつけて行ってきなさい」って、送り出してくれました。

    信彦

    ユリは気が強いんです(笑)。

    ユリアンティ

    でも実はインドネシアの公務員試験も受けていて、そちらも合格したんです。箱根で介護の研修を受けているところに、親から「公務員試験に受かったよ」という連絡が来て。

    そこで公務員を選ばなかったんですね。

    ユリアンティ

    「あなたの旦那さんは日本にいるよ」って、神様が示してくれたのかもしれません(笑)。

    信彦

    「日本に行くとええことがある」って教えてくれたんじゃろうねえ。

    日本へ行く意思も相当強かったと。

    ユリアンティ

    そうですね。とても悩んだのですが、それ以上に「日本でがんばろう!」っていう気持ちは強かったです。

    信彦

    でも、東京みたいなピカピカなところで働くと思っとったんよね。

    ユリアンティ

    当時はそうでした(笑)。でも今考えれば、こういうのどかな場所は日本のあちこちにあるし、素敵だなと思っていますよ。

    先輩後輩の関係であり
    お姉ちゃんと弟の関係

    信彦さんはご出身はこの辺ですか。

    信彦

    山口ではなく広島の出身なんですが、ここからもそう遠くはないです。

    今は隣接するグループホーム本郷の管理者とのことですが、最初はヴィラ本郷に入られて。

    信彦

    もともと広島で別の仕事をしていたんですが、そこを離れて新たに仕事を探すことになって。なかなか仕事が少ない時期だったんですけど、ちょうどヴィラ本郷の求人チラシを目にしたんです。

    ちょうどいいタイミングで見つかったんですね。

    信彦

    未経験者歓迎っていうところが大きかったです。ほかにも施設の求人はあったんですけど、どこも未経験者には敷居が高くて。とりあえず見に行ってみようっちゅう感じで面接に来たら、スムーズに内定をいただけて、すぐ働けることになりました。

    お互い第一印象は覚えていますか。

    信彦

    入職したての私にとっては一番の先輩でしたね。新人は夜勤に最初入れないので、毎日昼間のシフトに入ることになるんですが、同じく毎日昼間に働いているのがEPA候補者だったので、ユリと、同期入職の候補者のエティーさんからいろいろ教えてもらうっていう感じでした。

    ユリアンティ

    信彦さんは、利用者さんに対してとても優しくて、仕事もすごく真面目。個人個人を尊重していて、私と考え方が近かったんです。

    信彦

    そこなんですよね! 考え方が近いけえ、今でもたまに言いますけど、どっちかっていうとお姉ちゃんみたいな感じです。

    ユリアンティ

    そういう関係もあるし、友だちでもあるし、パートナーでもあるし。話しやすいし、相談しやすい。モチベーションを高め合えます。

    とてもいい関係ですね。割と最初から気が合う仲だったんですね。

    ユリアンティ

    でも「愛してる」の話とか全然ないです(笑)。

    信彦

    男に全然興味なしで来とるけえね。

    ユリアンティ

    仕事は仕事でしたね。

    結婚までは秘密のお付き合い

    EPA候補者としての研修期間、働きながら勉強するというのは大変でしたか。

    ユリアンティ

    両立するのは、やっぱり大変な時もありました。

    信彦

    その頃ヴィラ本郷はまだEPA候補者を受け入れ始めの頃だったので、施設としてもまだノウハウが確立していなくて、その意味でも大変だったと思います。

    ユリアンティ

    なので信彦さんには、スカイプ(※)をしながら勉強を教えてもらって。

    ※インターネットを通じて無料でビデオ通話やチャットができるサービス。

    信彦

    おっと、その話は恥ずかしいな(笑)。まあ、仕事の後、お互い家に帰ってから、そういうこともありましたね。私自身も介護経験はゼロだったので、一緒に本を読みながら勉強しながら。

    ちょっと下世話な聞き方をして恐れ入りますが、それでお互いへの気持ちが芽生えたということは…。

    信彦

    その辺はちょっとナシにしましょう(笑)。

    どうやって想いが深まったか、とか、結婚の決意みたいな話も聞きたかったんですが(笑)。

    信彦

    いやいや、もうそこはボンヤリとさせてください(笑)。

    ユリアンティ

    実は結婚するまでみんなに内緒だったんですよ、ずっと。

    そうだったんですね!

    ユリアンティ

    やっぱり私は研修中という身でしたし、仕事は仕事、という気持ちで、プロフェッショナルとして働きたかったので、自分たちからは言わないようにしていました。

    信彦

    人事的なことは、山口平成病院の山本看護部長(※)が管理者なので「結婚しようと思っているんです」っていう相談をして。まあそこで看護部長も背中を押してくれて、施設のみんなに発表しました。ビックリしとったねえ。

    ユリアンティ

    会議の時に報告したら、みんな「え〜〜っ!」って(笑)。

    よくバレずに続きましたね。

    ユリアンティ

    気付いていた人もいたかもしれないですけどね。同期のエティーさんだけは知っていて、3人で一緒にお出かけもしていました。

    出会ってからすぐ気が合って、結婚までの流れは順調だったんですか。

    ユリアンティ

    本当に、愛のことは全く話さなくても、仕事への考え方が似ているだけでなく、気も合っていましたので、自然と仲が深まってという感じでした。だから結婚までも順調だったと思います。

    信彦

    いや恥ずかしいな、本当にこの話は。最後に、この話はフィクションですって、書いておいてもらいたいです(笑)。

    それは記事の信憑性が下がるからダメです(笑)。

    泣きながら書いた…
    お義母さんへの手紙

    いざ結婚、と決めてからの流れはどうでしたか。

    ユリアンティ

    スムーズでした。私は、いいことならスムーズに行く、と信じているんです。

    信彦

    芯が強いけえ、あんまり壁を壁と感じないんですよ。だからやらなきゃいけないことがあっても、大変と思わずに乗り越えるというか。

    ユリアンティ

    これまた面白い話なんですが。

    お、なんでしょうか。

    ユリアンティ

    信彦さんのご家族とは面識があったんですが、あらためて結婚のご挨拶をしたとき、やっぱり初めは良い反応ではありませんでした。それは、宗教のこともあったから。

    信彦

    結婚するにあたって、私がイスラム教に改宗するっていうことが必要だったので、うちの親も最初は否定的で。でもユリはその話を聞いたら、すぐうちの母に手紙を書いたんです。

    ユリアンティ

    ご両親も大切な存在ですし、私は真剣に考えて書きました。お義父さん、お義母さん、これまでいろいろと連れて行ってくれてありがとうございます。もし結婚がダメという結論でも、親が自分の子どものことを真面目に考えるのは当然なので、私は理解します。私はお二人のことも大事にしたいし、もし結婚できなくても、信彦さんとも友だちになりたい…。だから、結婚できなくても、これからもどうぞよろしくお願いします。っていう内容を書いたんです。

    すごく想いのこもった手紙ですね…お話を聞いただけでも感動しました!

    ユリアンティ

    私は泣きながら手紙を書きました。私のせいで、家族をぐちゃぐちゃにしたくない、信彦さんには未来がある、私にも未来がありますから。

    信彦

    母もその手紙をもらって、1人で処理しきれなかったんでしょうね。叔母がたまたま遊びに来たので、母がその手紙を見せて相談したらしいんですよ。そしたら叔母が「こんなええ嫁さんおらんでよ! 否定しちゃいけん!」って言って、それで母も踏ん切りがついたみたいですね。まあうちの両親も古い人間ではあるので、そういうことはありました。

    ユリアンティ

    でも今すごい幸せですし、ご両親ともすごく仲が良いです。お義母さんは挨拶とか、お茶のこととか、とてもしっかりしています。そんなタイプの家族ですから、私もちゃんとしようと。そのおかげで、日本の文化や歴史も学びながら生活しています。

    お母さんからいろいろと教えてもらうことも多いんですね。

    信彦

    ユリは地域でもすっかり顔が知れていて、みんなに声をかけられているんですけど「昔の日本人を見るようだ」って言われていますよ。ただ、ユリからしたら「これがインドネシア人だよ」って(笑)。

    地域のみなさんとも交流があるのは良いですね。

    ユリアンティ

    本当、ここは第二の故郷で、大事なところです。もしいつか離れることになったら、泣くと思います。そんなこと考えるだけで寂しいですね。近所のみなさんはとても明るくて、毎朝「ユリちゃんおはよう」ってご挨拶してくれます。

    信彦

    私はむしろ認識されていなくて、「ユリの旦那さん」って言われていますよ(笑)。

    生まれながらの違いも尊重して
    お互いのペースで

    ユリアンティさんのご両親は、結婚に反対ということは特になく。

    ユリアンティ

    そうですね。祝福してくれました。

    信彦

    そう考えると私は何も努力してないんですね(笑)。ユリがまさかそんな手紙を出してるっていうことも知らなかったくらいで。

    実際、改宗されるというのは大きな決断ではあったと思うんですが。

    信彦

    基本、仏教もイスラムも、人に優しくあろうというところではそう変わらないんですよね。

    ユリアンティ

    イスラム教のイメージは、怖いっていう人もいると思うんですけど、そんなことはないんです。平和な宗教。いいことをすると、いつかいいことが返ってくるという。

    仏教にもある考えですね。

    信彦

    1日5回お祈りをするとか、そういう戒律はしっかりしていますが、根本的な考えは、馴染みがあるものではあります。

    実際どんな感じで生活されているのですか。

    ユリアンティ

    私は生まれた時からイスラム教と共に生活していましたけど、信彦さんはそうではないので、生活については、少しずつ少しずつですね。私としては、結婚したからこうしなきゃいけない、ということではなく、徐々にそういう気持ちになっていけばいいなと思っています。

    信彦

    なので、今のところは自分のペースでやらせてもらっています。

  • 次回:夫婦で語る、介護施設の仕事、さらにこれからの夢。介護職は素晴らしい仕事です!

    後編は2019/09/13公開予定

    profile

    ヴィラ本郷 鈴木 ユリアンティ(すずき ゆりあんてぃ)

    【出身】インドネシア ジョグジャカルタ市
    【職種】介護士
    【趣味】料理(インドネシア料理も和食も作る)
    【夫婦共通の趣味】旅行と子育て

    グループホーム本郷 鈴木 信彦(すずき のぶひこ)

    【出身】広島県
    【職種】介護福祉士
    【好きな食べ物】錦糸卵
    【夫婦共通の趣味】旅行と子育て

     

    施設情報

    社会福祉法人 平成記念会 ヴィラ本郷・グループホーム本郷

    山口県岩国市本郷町本郷2086番

    ヴィラ本郷は1999年開設した介護老人福祉施設です。入所およびショートステイのサービスを提供し、のどかな本郷の環境のなか、利用者さん一人ひとりに合わせたケアに取り組んでいます。隣接するグループホーム本郷は、少人数の認知症高齢者と介護スタッフが、食事の支援や掃除などを協力し合いながら共同生活を送り、症状の改善や心身機能の維持・向上を図ります。