今週はOUCHIスタッフの後編を公開!精神障害を抱える方を支援するため、HOME、CAFE、KITCHEN、SPACEという4つの機能を備えるOUCHI。その詳細に迫ります。ワンコインランチ、ビーントゥバーなど、気になるワードが飛び出します! 意外な話も聞ける3人のプライベートも…。最後までご覧ください!
地域で暮らす起点になる「HOME」
交流の場になる「SPACE」
―OUCHIは4つの機能を備えていると伺いました。それぞれの特長やポイントを教えてください。
石坂まず「HOME」は、自宅で自立した生活が送れるように練習を行うグループホームです。日々の生活に必要なことを学びながら、新しい住まいを見つけるまでの仮の住まいとして利用できます。アパートやマンション、グループホームを紹介して、新たな暮らしへの一歩を踏み出せるようにお手伝いを行うものですね。
―利用した場合、普段の生活はどんな感じになるんですか。
石坂基本的には、ある程度自活能力があって病気の症状が比較的落ち着いている、でも何か不安で、一人で住むにはトレーニングが必要という方が利用します。本来なら退院したらご自宅から作業所に通ったり、デイケアに通ったりされるのですが、それをHOMEから通うと。それと、あとでお話しするんですが、OUCHIのCAFEやKITCHENでの就労も可能です。ほかのデイケアとも併用しながら、いろいろな評価という材料がたくさんできていきますので、それを積み重ねて、地域に戻ることを目指していきます。
―SPACEはどのように使うんですか。
石坂ここを使って、定期的に当事者研究会や、ピアサポートミーティングをやることを想定しています。
齋藤当事者研究会について補足すると、各自の症状を発表して語り合い、問題に向き合う会合のことです。同じような体験をしてる方がいれば、「私の時はこうだった」と情報交換ができますし、違う症状であっても相互理解が進められます。
―話しながら対処を探るんですね。ではピアサポートミーティングとは。
石坂元患者さんがいらして「困った時、自分はこういう風に対応したよ」という体験談を話してもらう会のことです。
溝呂木OB会と言いますか(笑)。
―とてもわかりやすいです(笑)。社会に出られた方が話をしてくれるわけですね。
齋藤「一人暮らしは大変だけど、こういう楽しいこともあるよ」というような感じで、何でも話してもらえたらいいなと。
―イベントなどが無い日はどう使われるんですか。
齋藤特に何もなくても、フラッと来て、誰かと話したりのんびりしたり、ただ時間を過ごしてもらえたらなと思っています。集まれる場所になればいいですね。
日替わりのランチも提供
人と働く楽しさを感じる「CAFE」
―では次はCAFEについてお伺いします。
石坂CAFEは就労施設(※)で、20歳以上の精神障害を持った方で、比較的症状が安定している方が働くことができます。
※就労継続支援B型事業所。
齋藤調理については、調理師さんなど専門スタッフが入ってサポートしながらですね。
石坂仕事を通しての成長や、人と関わる楽しさを感じてもらえるような職場になったらと思っています。
―喜びを感じられるような場所ですね。具体的にはどんなお店になるんですか。
石坂就労を支援するための働く場所ですが、OUCHIメンバーはもちろん、地域住民のみなさんや、ほかのグループホームにお住まいの方、誰でもいらして利用できるお店です。
―どなたも利用できるんですね。ちなみにメニューはどのようなものをお考えですか。
齋藤目玉として、ワンコインランチの提供を予定しています。
石坂ランチは日替わりのメニューを2種類くらいと、それと定番メニューとして何かご飯ものや麺類を提供するかと思います。
―しっかりと食事があるのは嬉しいですね!
石坂それとドリンクや、午後はケーキも出せたらと考えています。
―ランチだけでなく利用ができるのですね。
石坂営業時間が11時〜18時30分を予定していますので、午後のティータイムや、夕飯にも使ってもらえたらいいですね。地域のみなさんが集まれる場所にしていきたいです。

チョコレートや焼き菓子、パン
スタッフと一緒に作る「KITCHEN」
―KITCHENはどんな場所になるでしょうか。
石坂こちらも就労施設で、パンや焼き菓子、チョコレートの製造を行います。やりたいことや挑戦したいことを大切にしながら、安心して働ける環境を作れたらと思っています。
―いろいろ挑戦できそうですね。どんなパンを作られるんですか。
齋藤食パンとコッペパンを作る予定です。
―これもCAFEと同様、調理師さんが一緒に入りつつでしょうか。
溝呂木そうですね、スタッフと利用者さんで一緒に作っていきます。パン職人の方が実際に指導にあたるんです。
石坂パンについては今のところ一般販売の予定はないんですが、当グループの関連施設で提供されます。
―焼き菓子はどんなものですか。
石坂予定しているのは、米粉のクッキーとおからのクッキー、それと米粉のクッキーにチョコを挟んだものです。健康を意識した、グルテンフリーの商品になっています。
―小麦粉を使っていないものがメインなんですね。チョコレートはいかがですか。
石坂どんなものを作るか話し合っているときに、出たアイデアでしたね。そもそも僕は甘いものが苦手だったんですが、これをきっかけにチョコレートの素晴らしさを知りまして…。
一同(笑)。
石坂作ろうとしているのは、ビーントゥバー(Bean To Bar)スタイル(※)なので、添加物や香料を加えずに、カカオ本来のおいしさや香りをストレートに楽しめるんです。
※カカオ豆の選別からチョコレートになるまでのすべての加工工程を一貫して手がけて作られたチョコレートのこと。
―ここ何年かで、専門店などもできているチョコレートの製造方法ですよね。
石坂ガーナ、グアテマラ、ハイチなど、6カ国の豆を使ったチョコレートを販売予定なのですが、それぞれの味の違いがわかってとても面白いです。それとチョコレートを豆から自分たちで作るっていう工程が、精神障害を持っている方にとってもいい作業だと思うんです。
―どういった点でいいと思ったのか教えてください。
石坂豆という自然な材料が、どんどん形を変えてできあがっていく過程が目で見てわかりやすい。それに香りもすごくあって、リラックスすると言われるじゃないですか。味覚も含めて、いろんな感覚的に刺激を得やすいというのが、いいのではないかなと思っているんです。こういった作業において、可能性がある取り組みかもしれないと考えています。
―チョコレートの製造というのはまだあまり無い取り組みなのでしょうか。
齋藤こういう施設での作業としては新しいかもしれないですね。
―今後が楽しみです! ちなみにどこで購入できるのでしょうか。
齋藤焼き菓子とチョコレートは、CAFEの店頭と大内病院の売店で販売予定です。
石坂あと、チョコレートって、食べるとみんな笑顔になるんですよ、それもすごいと思っていて…。
齋藤・溝呂木(苦笑)。
石坂(気にせず話し続ける)チョコレートってみんなが好きじゃないですか、素晴らしいですよね!
―わかりました、素晴らしさは十分伝わりましたので、次の話に移りましょう(笑)!
別れは少し寂しい、でも背中を強く押す
送り出す側の気持ち
―溝呂木さんはどういう形でOUCHIの運営と関わることになるのですか。
溝呂木今まで話していた4つの機能の仕事に、具体的に直接関わるっていうのはほとんどないんです。それよりは、利用者さんの申し込みから利用が始まるまでを、社会福祉士さんと一緒にサポートしていきます。
―入ってからのことではなく、主に入るまでのところ。
溝呂木それと出られる時にも関わります。卒業というか、次のステップに行く時ですね。
―次のステップに行くっていうのは、どういったタイミングなんですか。
溝呂木まずは本人の気持ちですね。そのうえで、評価が基準に達していることが必要になります。
―基本的にご本人から「施設を出たい」とか「一人暮らしをしたい」っていう気持ちが出てきたら。
齋藤そういう次への気持ちが出てきたら、その気持ちを尊重して、相談して進めていきます。
―実際、施設から出られる時っていうのは、見送る側としてどういう感情になるんですか。
溝呂木OUCHIについてはまだ始まってないのでわからないんですが、デイケアの時は応援する気持ちもありつつ、離れてしまうので寂しい気持ちもありましたね。
齋藤そう、半分半分ですね。デイケアを卒業して「就労支援施設で働きます」とか「アルバイトします」っていう利用者さんをたくさん見てきましたけど、「やった次に進めたぞ!」っていう喜びと、「ああ行っちゃうな」っていう寂しさが混ざって複雑な気持ちになりますね。でも「がんばれよ!」って背中を押してきましたので、OUCHIでもそうやって送り出せたらいいですね。
長く続く地域との関わり
OUCHIの目指していく場所
―OUCHIのメンバーとして利用される方は大内病院からの方が多いのでしょうか。
齋藤連携もありますので、最初は大内病院からの患者さんが多いと思います。ただ、もちろん病院外からも受け入れていく予定です。病院も目の前にあるので、何かあった時はすぐに対応してもらえる強みがあります。
―安心につながりますね。地域での立ち位置としてはいかがでしょうか。
齋藤今までもグループホーム開設時や、OUCHIの工事が始まる時にご近所にあいさつに伺うと「大内さんがバックにあるから安心だね」って言ってもらえることもありました。大内病院自体がここで建ってもう50年くらいは経つので、地域の方からも一定の理解は得られているのかなと思います。
―これだけ長く続いている精神科の病院ということが大きいんですね。
溝呂木大内病院のすぐ横にあるグループホームでも、ご近所の方がよくあいさつしてくれます。
齋藤そういう場所だからこそ、地域でみていくということにもつなげていけるのかなと思っています。
―今後OUCHIをどんな施設にできたらいいなと思いますか。
齋藤みんな一緒くたになって、ワイワイやっていける施設になればいいなと思っています。近所のおばちゃんが来ていたり、患者さんが来ていたり、そこでみんなが一緒に喋っていたらいいですね。メンバーさんが、楽しいことも辛いことも含めて生き生きとして、最終的には笑っていられるような場所を作っていきたいですね。それはスタッフも含めて。この地域がそういう楽しいところになるといいなと思います。
―地域自体にプラスの影響があるとさらにいいですよね。
石坂僕は、利用者さんの「これをやりたい」っていう気持ちを大事にして、やりがいを見つけられるような場所であってほしいなと思っています。
―その人ごとの気持ちに添える場所ですね。最後に溝呂木さんはどうでしょう。
溝呂木雑談ができるところにしたいですね。一対一で相談するだけじゃなくて、何人かで机を囲んで「こういうことで困ってるんだ」っていうことが話せるようなアットホームな空気というか、生活感が出せるようになればいいなと思います。

ラーメン、鉄オタ、洗濯機
バラエティに富んだプライベート
―みなさん休日はどのように過ごされていますか。
溝呂木携帯ゲームをずっとしてます。
一同(笑)。
溝呂木それと水泳のスクールに週1回通っています。
―すごい! 水泳はもともとやっていたんですか。
溝呂木中学・高校と水泳部で、背泳ぎをしてました。
―それで今もまた習っているって、本当にお好きなんですね。
溝呂木すごい楽しみですね。それがないと一週間が物足りなくて(笑)。
―齋藤さんはいかがですか。
齋藤僕も中学・高校の部活が関係しているんですが。
溝呂木ラジコン部?
齋藤違います(笑)。中学・高校と鉄道研究部でした。
―お〜っ! 中学から鉄道研究部があるのは珍しい気もしますね。
齋藤中高一貫校だったからかもしれないです。今も鉄道は好きなんですが、むしろ息子がハマっていて。
―撮り鉄とか乗り鉄とかいろいろ種類があると思いますが、何鉄になるんですか。
齋藤もう全部ですね。
一同(笑)。
―特に好きな路線はありますか。今これが熱いっていうのは。
齋藤息子が特に京成本線にハマっています。こないだ初めてスカイライナーに乗って上野から成田空港まで行きました。
―飛行機に乗るでもなくですか?
齋藤空港まで行って、ご飯食べて帰りました(笑)。
一同(笑)。
―石坂さんは?
石坂僕はもう家族サービスです。
―いいですね! どういうところに行かれるんですか。
石坂動物園や遊園地や牧場、ほかにもたくさん行きますよ!
―最後に、みなさんお仕事以外で目標はありますか。
石坂ラーメン屋巡りが好きなんですけど、いずれはラーメンを作りたいですね。
齋藤ずっと言ってますねそれ。
溝呂木ラーメン屋になりたいって。
―ただ作るんじゃなくて営むんですね(笑)。
石坂重たくて激しい味のラーメンのおいしさもわかるし、さっぱりした方もわかるので、それをどう味として出していくか。お客さんの声を聞きながらそこは。
―これは別にOUCHIで提供するっていうことではないですよね?
石坂そうです、今の仕事とは関係のない老後の夢です(笑)。
―齋藤さんは何かありますか。
齋藤ラーメン屋の後は言いづらいですね(笑)。毎年夏休みは、子どもに行きたいところを選んでもらって、旅行に行っているんで、今年もそれができたらいいなと。既に乗りたいローカル線をいくつかもう選んでます。
溝呂木いい親子関係ですね〜。
―とても浄化されました。溝呂木さんはいかがですか。
溝呂木そうですね、乾燥機付きの洗濯機を買いたいです。
一同(笑)。
―この質問、ほぼ毎回伺っているんですが、物欲系の答えが返ってきたのは初めてかもしれないです(笑)。
溝呂木(笑)。乾燥機が欲しいんです。
