ひとプロジェクト 第65回【後編】 平成横浜病院/天辰 優太先生
平成横浜病院
天辰 優太 先生
Amatatsu Yuta
厚労省での経験を最大限に生かしながら
課題解決に全力で取り組む
平成横浜病院で医師を務める天辰優太先生の後編です。医系技官(※)として働いた厚生労働省を離れ、当グループに移った天辰先生。後編ではその経緯と、現在取り組む平成横浜病院でのお仕事に関して伺いました。医師として病院運営にどのように携わっているか、また、そのモチベーションについてもお話ししています。臨床だけではない、医師の働き方の魅力に触れられるインタビュー後編、ぜひご覧ください!
※医系技官:医師として保健医療に関する制度作りに携わる技術系の行政官。
-
グループの取り組みに強い興味
厚労省を離れることを決断
厚労省から、平成医療福祉グループに入職することになった経緯を教えてください。
厚労省でいくつかのポストを経験させてもらって、もちろんそれで全部わかったというわけではないですが、行政の仕組みを多少なりとも見ることができたので、新しい分野に移って仕事をしてみたいという気持ちが漫然と出てきたんです。
ある程度の経験を積めたので、今度はそれを別の場所で生かそうと。
そこで厚労省を離れたんですが、次に何かチャレンジできることはないかなと思った時に、もともと知り合いだった厚労省OBの坂上先生(※)や佐方先生(世田谷記念病院 在宅医療部 部長)が、このグループで活躍されていて、話を聞いてみると、面白そうな仕事をしているなと思ったんですね。
同じく元医系技官のお2人から話を聞いて興味を持たれたと。ほかの企業や医療機関からのお誘いもありそうですね。
病院を経営されている方や、医療系のベンチャー企業を経営されている方、ほかにもいろいろとお声がけはしてもらったんですが、ここがグループとしての規模もあるうえに、挑戦的な取り組みをしているなと思ったので、そこに魅力を感じて、移ってみようと決めたんです。
もともとグループのことはご存知でしたか。
グループの武久代表は、日本慢性期医療協会の会長ですし、診療報酬や介護報酬の改定のときに委員をされていたので。直接話したことはなかったですが、講演などを聞く機会もあって、その時から面白そうなグループだなと思っていました。
主にどんなところに興味を持ったのですか。
自分が診療報酬改定を担当している時に、栄養やリハビリの大事さを知ったんですが、グループとしてそこに対して積極的な取り組みをしているという話を聞いて、興味を持ちました。それと、このグループには地域密着多機能型病院(※)を目指す、というメッセージもあると思うんですけど、病院があって介護施設があって、地域で患者さんをサポートしていく、ということの重要性も、診療報酬の仕事を通じて理解していたんですね。単体の病院だとそれを実践するのはなかなか難しいんですが、大きなグループだからこそ、そういうことに関われるというところが、面白そうだなと感じました。
※地域密着多機能型病院:地域住民の生活を守るために必要な役割を果たせるよう、地域に必要な医療・福祉の機能を持ちながら、地域医療のハブとなり、さまざまな事業者と連携して患者さんをサポートする病院。興味を持った取り組みに、包括的に関わることが、このグループならできるんじゃないかと。
それが決め手としては大きかったですね。そこで、坂上先生に連絡をして、話を聞かせてもらいました。
-
まずは臨床の勘を取り戻す
経験を生かしながら病院運営に
そこで、平成横浜病院に着任することになったわけですね。
坂上先生もインタビューで同様の話をしていたと思うんですが、医系技官として働いている間は臨床からずっと離れていましたから、まずは半年間、臨床を鍛え直してほしいということで、この病院であらためて臨床に携わりました。病棟を担当して、そこで森岡先生(※)に研修医のようにつかせてもらいました。
久しぶりの病院の現場はいかがでしたか。
最初はやっぱり難しかったですね。ブランクがあるので薬の名前がすぐ出てこなかったり、どういう選択をしたらいいのかっていうことで悩みましたけど、その都度、森岡先生や看護師さんに相談をして。毎回丁寧に教えていただいたので、乗り切ることができました。
訪問診療も担当されたそうですが、それまで経験はありましたか。
初めての経験でしたけど、興味深かったです。グループ介護施設への訪問にもついて行かせてもらって、医学的な面はもちろん大事にしながらも、生活の場でもありますから。どういう治療を望まれているのかを伺って、スタッフさんともどんな形がいいのかを話し合って進めていきました。介護の仕組みを前職で学んできたので、経験も生きたのかなと思いますし、やりがいを感じましたね。
半年経った現在はどんなお仕事をされていますか。
今も訪問診療と外来診療は担当させてもらいながら、事務長の日高さん(※)と一緒になって、病院の運営に携わっています。
運営には具体的にどのように関わっているのでしょう。
院内でうまく運用ができていないケースとか、ルールが明確になっていないケースについて、各部署のスタッフさんと話し合いながら、決めていっています。それと、前職での経験を生かして、例えば感染症対策で、国のこのルールを利用して補助金を活用して、この戦略で進めていこうとか、そういうことも話し合って進めていますね。
そこは厚労省出身であることが生きていますね。話し合う機会も多くありそうです。
そうですね、勝手に決めるわけにはいきませんから、日高さん含め、各部署の方と話して、うまく解決策や折り合えるポイントを見出していっています。
厚労省時代に、いろいろな職種の人と話し合ってきたことも生かせていそうですね。
そういう意味では、運営の仕事はある程度自分の経験を生かしてやれているかなと思いますね。
-
平成横浜病院は風通しの良い環境
実際に平成横浜病院に入ってみて、現状と今後についてはどうお考えですか。
もともとここは企業経営の病院としての歴史がありますけど、時代の変化とともに求められるニーズや患者さんの層も変わってきますので、病院としても変わっていく必要がありますよね。ただ、それは簡単ではないというか、単純にこれをやればいい、ということではないので。日々の診療からそれを感じ取っていって、積み重ねて改善していけたらと思っています。
今後変わっていくには、変化を肌で感じながら積み重ねていくと。そういうなかでも、この病院でどういったところが良いと思われますか。
もともと急性期の病院機能を有しているところにに回復期リハビリテーション病棟もあって、グループの介護施設とも連携ができて、さらに訪問診療も始まっている、まさに多機能を提供できる状態にあるので、そこは大きな強みだと思います。あとは、そこをどういうバランスでやるとより良くなるか、というところです。
まだまだ企業経営時代のイメージを持たれている方も多そうです。
外来の患者さんは、その頃からずっと来てくださっている方も多くて「この病院が好きなんです」と言ってくださることもありますね。ただこれからは、そこからさらに今のグループの強みであるリハビリとか栄養のことや、多機能のことについても認知が高まって、それを実際に求められる病院になるといいなと思いますね。
地域からしっかり求められる病院になっていくと。
そのなかで、平成横浜病院で特にいいと思ったのは、風通しがすごくいいところです。僕が入る前から、問題があっても、すぐバッと集まって話し合って決めよう、っていう風潮があったので、そういう意味ではやりやすいなって思います。柔軟に変化に対応できる環境が整っているので、うまくいくんじゃないかなと思っています。
より良くするために進めていきやすい環境が整っているわけですね。
ただ、医療の経営で難しいのが、好事例はたくさんあって、そういうケースが載った本もいっぱいあるんですけど、それを真似するだけではうまくいかないわけです。
やはりシチュエーションが違うと、こう事例を参考にしてもなかなかうまくいかない。
その通りで、患者さんや地域の状況も違いますし、自分たちの病院の持っているノウハウも違うので、やっぱり正解がないんですよね。だから、自分たちのなかでは「これがいいんじゃないか」っていうのを、常に話し合っているんです。
-
-
自分は便利屋でもいい
病院運営の困りごと解決に見出す喜び今後はどういう動き方になっていくのでしょうか。
あまり先のことは僕自身わかりませんが(笑)、運営では、先ほどお話ししたように経験を生かせますし、なにより自分自身もすごく好きな仕事なんで、それで病院を良くしていけるようなお手伝いができたらいいですね。
医療現場のことも把握しながら、運営・経営にも携われる人材というのは、まだまだ少ない。
最近は多少増えているかもしれないですね。ただ、やっぱり臨床をやるということが医師のキャリアパスとしてはもともとあって、その年次が上がっていくと、管理職や経営に携わることになる、というケースが多かったと思います。とは言え、経営について学ぶ機会というのは多くないですから、みなさん独自に苦労しながら、模索してやってこられたんだと思います。
まさにグループでは病院運営や経営に携われる方を求めています。
いわゆる経営に携わりたいと希望する医師はなかなかいないんですが、医療もこれだけ制度が複雑になって、考えないといけないことが多いですから。今後はある程度そのスキルも求められてくるのかなと思っていますし、自分もその道でキャリアを積んでいければと思っています。
周りにもそういう志向の方は増えてきましたか。
最近の医学部の若い学生さんと話してても、経営に興味があるんですっていう話も聞きますし、起業されて医療系のベンチャーをやっている方からも、そういった話を聞きますね。ただ、医療の世界は理想だけでは動かなくて、実際の臨床と、医療政策、さらに経営や技術革新がうまく合致しないといけないので。そのバランスをうまく取れるとか、バランス良くそういった経験をしている、ということは大事になってくると思います。
どれかひとつに偏ることなくと。
そういう意味では、ここに入職した時に、いきなり運営ということではなくて「まず最初は臨床をやってほしい」と言われたことは、自分としてはとてもありがたかったです。
今はどんなモチベーションでお仕事をしていますか。
課題はいろいろあったとしても、これをやったら病院が良くなるんじゃないかっていうアイデアもありますから、それで病院がよくなると本当にいいなって思うと、やっていて面白いですね。さっき医師のキャリアパスの話もしましたけど、なかなか僕ぐらいの年齢でこういう経験をさせてもらえることも少ないですから。それをやらせてもらえる環境はありがたいですし、本当に楽しいですね。
ご自身としては今後グループでどういうことをしていきたいですか。
病院の運営には携わっていきたい、ということはあるんですが、結局は求められるものをやっていきたいです。厚労省時代も僕はそうだったんですけど、課題があってそれを解決するっていうのはどちらかというと得意だし、喜びを感じるので、ある意味便利屋でもいいかなと思っています。運営面でお手伝いできることがあって、それでグループが良くなっていけばいいですね。
-
-
一年休んでも読んでいたいくらい
とにかく本当に本が好き
ではプライベートのお話を伺います。お休みの日はどのように過ごしていますか。
僕は読書がめっちゃ好きなので、ずっと本を読んでいます。
仕事に関する本が多いですか。
そこはもうあまり境目がないですね。半分趣味じゃないですけど、例えば経済学とか経営に関してはもともと興味がありましたから。
そういうジャンルの本が多いのですか。
あとは哲学とか歴史も多いですし、今は知識を業務にも生かせる立場になっているので、読んでいても、楽しくてしょうがないですね。本当は一年くらいずっと休みをもらって読んでいたいです(笑)。
(笑)。本当に読書がお好きなんですね。
新しいものとか知らないものに対して、すごく興味を持つので、例えば理系の本を読んでいても、歴史のことが触れられていると、今度はそこを勉強してみよう、となりますし、飽きが来ないですね。
ちなみに本は紙派と電子書籍派、どちらですか。
最近は、電子書籍がけっこう多いですね。あとは、車に乗る時もオーディオブックを流して、読書しながら移動していますよ。
筋金入りですね…! ほかに趣味は何かありますか。
最近は行けてないんですけど、キャンプが好きですね。少し前に子どもが生まれたので、もうちょっと大きくなったら、一緒にファミリーキャンプがしたいです。
いいですね〜! 初めてのお子さんですか。
1人目です。もうめちゃくちゃかわいいですね。ここで働き始めてからは、まだ子どもが起きてる時間に家に帰れるので、毎日それが楽しみで仕方ないです。
ご家庭の時間も増えたんですね。
そうですね、子どもができるくらいのタイミングでちょうど前職から離れたこともあって、やっぱり家族とそういう触れ合える時間が圧倒的に増えたのは、本当に良かったと思います。
-
前編を読む

平成横浜病院 天辰 優太先生(あまたつ ゆうた)
【出身】大分県大分市
【専門】内科
【趣味】読書、キャンプ
【好きな食べ物】ラーメン(岐阜の麺屋白神がおいしい)
病院情報

神奈川県横浜市戸塚区戸塚町550番地
医療法人横浜 平成会
平成横浜病院
内科・神経内科・呼吸器内科・消化器内科・循環器内科・外科・泌尿器科・皮膚科・整形外科・リウマチ科・リハビリテーション科・歯科・歯科口腔外科・麻酔科・脳神経外科地域に根ざした病院として、一般病棟、地域包括病棟を備え、回復期リハビリテーション病棟を新設しました。さらに救急告示病院として24時間365日、患者さんの受け入れを行っています。2018年6月には、総合健診センターがリニューアル。地域の健康を支えていけるよう努めています。